041...4人目
少年は囲いの外で震えていた。
逃げる準備をしてる顔。
でも。
腹が減ってる。
火から目を離せてない。
「名前」
俺が聞くと、少年は少し黙った。
「……カイ」
小さい声。
「歳は?」
「わかんない」
この世界だと珍しくない。
孤児。
奴隷。
捨て子。
年なんて数えない。
ジンが囲いを見ながら言う。
「木登り、本当にできるか?」
カイは無言で近くの木へ走った。
そして。
スルスル登る。
「……うお」
速い。
しかも音が小さい。
枝から枝へ移る。
猿みたいだった。
数秒後。
上から木の実を投げてきた。
「取れた」
ミナが目を丸くする。
「すご」
カイは少し誇らしそうだった。
その時。
【《縄文》適応率 35%】
【“役割分担”を理解】
頭の中へ感覚が流れる。
狩る者。
守る者。
保存する者。
登る者。
火を見る者。
役割。
それで群れは大きくなる。
俺は少し黙った。
……四人。
増える。
食料。
場所。
危険。
でも。
できる事も増える。
その時。
視界の端へ文字。
【“群れ拡張”】
【対価: 安心感】
「……は?」
次の瞬間。
胸の奥がザワついた。
落ち着かない。
囲いの隙間が気になる。
森の音がうるさい。
誰か来る気がする。
火が小さく見える。
「っ……」
息が浅くなる。
ミナが気づいた。
「レクト?」
「……なんか、怖い」
ジンがすぐ理解する。
「対価か」
俺は頷く。
知識系は物。
技系は感情や痛み。
そして今。
“群れを広げる”ために。
安心感を食われた。
つまり。
群れを大きくするほど、 不安になる。
「終わってるだろこのスキル……」
でも。
分かる気もした。
人が増えれば、 守るものも増える。
裏切り。
食料不足。
侵入者。
全部増える。
文明って。
安心を作るくせに。
同時に、 安心を奪っていく。




