039...境界
次の日。
ジンは、森の周囲を見回っていた。
「足跡が増えてる」
戻ってくるなり、低く言う。
「ハードウルフ?」
「それもあるが。。人の足跡もだ」
嫌な空気になる。
奴隷商。
追放者。
盗人。
森には“生き残れなかった側”が集まる。
そして。
食料を持ってる奴は狙われる。
俺は燻製肉を見る。
土器。
石壁。
火。
全部。
少しずつ積み上げた物だ。
失いたくない。
【《縄文》適応率 28%】
【“縄張り意識 微上昇”】
「急に獣っぽい進化するなぁ……」
でも。
本当にそんな感覚だった。
ここは俺たちの場所。
取られたくない。
その時。
ミナが地面へ線を引いた。
「?」
「ここから中、あったかい」
火の近く。
石壁の内側。
屋根の下。
……確かに。
ここだけ空気が違う。
外は冷たい。
危ない。
でも。
内側は落ち着く。
その瞬間。
頭の中へ感覚が流れ込んだ。
杭。
石。
縄。
囲う。
境界。
【《縄文》知識】
【“囲い”を理解】
【対価: 木材 or 保存食】
その瞬間。
積んでいた薪が、一部ボロッと崩れた。
「うわっ!?」
数本が使い物にならなくなる。
【対価支払い完了】
「また勝手に食われた……」
でも。
頭の中には残っていた。
獣避け。
境界線。
“ここから内側は群れ”って示す感覚。
俺は周囲を見る。
「囲うか」
「囲う?」
ジンが眉をひそめる。
「石だけじゃ足りない」
枝。
尖らせた木。
並べる。
簡単な柵。
真正面から止めるためじゃない。
“入りにくくする”。
それだけ。
三人で木を運ぶ。
削る。
刺す。
並べる。
地味。
ひたすら地味。
でも。
少しずつ形になる。
夕方。
簡単な囲いが完成した。
隙間だらけ。
弱そう。
だが。
“ここ”ができた。
その時。
ミナが小さく言った。
「村みたい」
俺は少し黙る。
村。
その言葉を聞いた瞬間。
胸の奥が妙に熱くなった。
俺は。
追い出された側だった。
でも今。
自分で“居場所”を作り始めてる。




