037...初攻撃スキル
ハードウルフ
灰色の毛。
青い目。
大きい。
オオカミより、さらに。
ブラックウルフよりは小さいのか、、?
それでも。
「……デカくね?」
思わず漏れる。
ハードウルフ。
間違いない。
だが。
今までの奴と違う。
傷だらけだ。
耳も裂けている。
片目も濁ってる。
それでも。
デカい。
火の向こう側で、 低く唸っていた。
グルル……
ミナが震える。
ジンが低く言う。
「下がれ」
石槍を構える。
俺も握る。
……でも。
分かる。
真正面じゃ勝てない。
石槍なんて折れる。
石は弱い。
火だけが頼りだ。
ハードウルフは火を睨んでいた。
でも。
腹が減ってる。
かなり。
肉の匂いを嗅いでる。
燻製肉。
俺たちの保存食。
【《縄文》適応率 22%】
【“蓄えを守りたい”】
その瞬間。
胸の奥が熱くなる。
盗られる。
食料。
火。
群れ。
ここ。
全部。
その感覚と同時に、頭の中へ別の文字が浮かんだ。
【技系能力使用条件を確認】
【技系能力には“感情”または“痛み”を対価として使用します】
「……は?」
次の瞬間。
頭の奥へ感覚が流れ込んだ。
投げる。
狙う。
群れで追い込む。
石を“当てる”技術。
【《旧石器》技術】
【“狩猟投擲”】
【対価: 恐怖】
その瞬間。
背筋がゾワッと震えた。
「っ……!」
怖い。
急に。
さっきまでより、 何倍も怖い。
心臓が痛いくらい鳴る。
逃げたい。
震える。
でも。
頭の中だけは妙に冷えていた。
風。
距離。
狼の動き。
全部見える。
「レクト!?」
ミナの声。
ハードウルフが動く。
火の横。
一瞬の隙。
「投げろ!!」
ジンが叫ぶ。
俺は反射で石を投げた。
ビュッ!!
ゴッ!!
鼻先へ当たる。
威力がかなり上がってる。
「グルァッ!?」
ハードウルフが怯む。
だが。
効いてはいる。
痛がってる。
でも。
その一瞬で。
ジンの槍が肩へ刺さった。
「ガァァッ!!」
狼が暴れる。
火が散る。
ミナが枝を投げ込む。
炎が大きくなる。
ハードウルフが後退した。
唸る。
睨む。
だが。
来ない。
火。
群れ。
槍。
石。
全部が面倒なんだ。
数秒後。
ハードウルフは森へ消えた。
「はぁ……っ」
全員崩れる。
その時。
俺は気づいた。
身体が震えてる。
止まらない。
恐怖。
さっきの対価だ。
【対価支払い完了】
【“狩猟投擲”終了】
頭の中の冷静さが消える。
一気に怖さだけ残った。
「なんだよ……これ」
ジンが荒く息を吐く。
「今の石……」
「知らん……!」
でも。
理解した。
知識系は“物”。
そして。
技術系は。
“人間の中身”を食う。




