028...スキル「大焚き火」はすごい
夜。
雨は弱くなっていた。
だが。
森は冷たい。
湿った空気が身体へまとわりつく。
三人は火を囲んで座っていた。
最近、自然とこの形になる。
円。
火。
顔が見える距離。
……群れ。
その時。
男が突然言った。
「火、消すなよ」
「分かってる」
「違う。寝る時もだ」
俺は少し黙った。
確かに。
今まで運良く消えてないだけだ。
もし夜中に消えたら。
寒さ。
獣。
暗闇。
全部一気に来る。
その時。
【《旧石器》適応率 93%】
【“火の番をしたくなる”を獲得】
「もう完全に原始集落なんよ……」
でも。
すごく自然だった。
誰かが起きて火を見る。
火を守る。
それが必要な気がする。
「順番で起きるか」
俺が言うと、男が頷く。
「俺、次ミナ、最後レクト」
「なんで俺最後」
「火への執着が一番強そうだから」
「否定できねぇ……」
ミナが少し笑った。
小さい笑い声。
でも。
最初よりずっと人間っぽかった。
夜更け。
俺の番。
二人は寝ている。
火だけが揺れていた。
パチッ。
パチパチ。
その音を聞いてると落ち着く。
不思議なくらい。
外は暗い。
怖い。
でも。
火の内側だけは違う。
【“火の前だと少し眠気が減る”を獲得】
「便利なのか不便なのか分かんねぇ……」
だが。
火を見てると本当に眠くなりにくかった。
その時。
ふと。
村を思い出した。
アイリス。
パン。
小屋。
笑い声。
……今頃、王都か。
暖かい場所で寝てるんだろうな。
その時だった。
ガサッ。
森が揺れる。
「っ!」
石を握る。
火の外。
暗闇。
何かいる。
でも。
近づいてこない。
赤い目が一瞬見えた。
オオカミ。
まだいる。
だが。
火の外から睨むだけ。
俺は石を握ったまま、火へ枝を足した。
パチッ。
「スキル 大焚き火」
自然と火の理解をし、枝を入れると
すぐに炎が大きくなる。
その光を見た瞬間。
狼の目が少し下がった。
逃げたわけじゃない。
でも。
近づけない。
時間が経つと、どこかへ消えた。
その時。
俺は少しだけ理解した。
人類は。
こうやって夜を奪い返したんだ。
ただの焚き火だけど。




