022...スキル「石を積む」
奴隷商が去ったあと。
三人とも、しばらく動けなかった。
怖かった。
ブラックウルフとは違う。
人間だった。
火を怖がらない。
武器を持ってる。
追ってくる。
そして。
“奪う側”だ。
「……ここ危ない」
ミナが小さく言った。
男も頷く。
「あいつら、また来る」
俺は周囲を見た。
火を消したせいで寒い。
でも。
煙を出したら見つかる。
どうする。
その時。
ふと気づく。
今の場所、丸見えだ。
木はある。
でも。
隠れる場所がない。
その瞬間。
頭の奥で何かが引っかかった。
石。
積む。
囲う。
【《旧石器》適応率 70%】
【“石を積める”を獲得】
「今度は建築本能!?」
もう何でもありだなこのスキル。
だが。
実際ちょっと分かる。
なんとなく“ここ囲いたい”がある。
俺は石を拾い始めた。
「レクト?」
「ここ、寒い」
「それはそう」
「だから囲う」
二人とも首を傾げている。
俺も説明できない。
でも。
なんとなく必要な気がした。
石を運ぶ。
積む。
また運ぶ。
地味。
信じられないくらい地味。
だが。
風が少し防げる。
火の熱も逃げにくい。
「……あったかい」
ミナが呟く。
男も少し驚いていた。
「風除けか」
「多分」
多分で文明始めてる。
その時。
【《旧石器》適応率 73%】
【“簡易住居”を理解】
頭の奥へ感覚が流れ込む。
洞窟。
石。
風。
雨。
人類。
寒さから身を守る感覚。
その時だった。
グゥゥ……
全員の腹が鳴った。
「……」
「……」
「……」
食料問題が終わってない。
むしろ悪化してる。
三人分だ。
男が低く言う。
「狩るしかない」
俺は石を見る。
弱い。
でも。
それしかない。
その時。
ミナがぽつりと言った。
「もっと大きいの、落とせたら」
「無茶言うな」
鹿ですら逃げるのに。
でも。
その瞬間。
俺の視線は、自然と高い木へ向いていた。
枝。
石。
重さ。
落下。
……もし。
直接戦わないなら?
その考えが、頭の奥へ小さく残った。




