021...奪う側
「……足跡ここで消えてるぞ」
男の声。
低い。
荒い。
複数いる。
俺たちは木の陰へ身を潜めていた。
ミナは震えている。
俺も怖い。
火が消えたせいか、 妙に落ち着かない。
胸の奥がザワザワする。
その時。
ガサッ。
茂みの向こうから男たちが現れた。
三人。
剣。
革鎧。
顔つきが悪い。
冒険者……じゃない。
もっと嫌な感じだ。
「逃げた奴隷、ガキもいたよな」
「森で死んでりゃ楽なんだがな」
ミナの肩がビクッと震える。
……奴隷商。
こいつらか。
俺は石を握った。
でも。
分かってる。
石なんかじゃ勝てない。
正面から行ったら終わり。
その時。
隣の男が、小さく囁いた。
「動くな」
息を止める。
奴隷商たちは近い。
かなり近い。
その時だった。
一人が突然こちらを向く。
「……ん?」
目が合いそうになる。
やばい。
見つかる。
心臓が跳ねた瞬間。
【《旧石器》適応率 68%】
【“危険時、存在が薄くなる”を獲得】
呼吸が止まる。
いや。
自然に浅くなった。
身体が勝手に隠れようとする。
その数秒後。
奴隷商は視線を逸らした。
「気のせいか」
「早く探せ」
足音が遠ざかる。
しばらく誰も動かなかった。
やがて。
完全に気配が消えてから。
「はぁ……っ」
全員同時に息を吐く。
ミナは座り込んでいた。
顔が真っ青。
「大丈夫か」
「……怖い」
小さい声。
俺も怖かった。
剣持ってる人間。
あれは狼より怖い。
火も通じない。
石も通じない。
その時。
頭の中で声が響いた。
「群れを作れ」
「……え?」
静かな声だった。
そして。
「三人なら、生き残れるか、、」
俺は静かにつぶやいた。
群れ。
火。
役割。
昨日からずっと、 《旧石器》が同じことを言ってる気がする。
人類は。
一人じゃ生き残れなかった。
その時。
ミナがぽつりと呟いた。
「……お腹空いた」
空気が少しだけ緩む。
俺は思わず笑った。
「今そのタイミングかよ」
俺たちは弱い。
でも。
生きてるって感じがした。




