020...3人の役割
朝。
火はまだ残っていた。
小さな赤。
灰の奥で、静かに生きている。
それを見た瞬間。
三人とも少し安心した顔になった。
……火がある。
生きてる。
それだけで違う。
【《旧石器》適応率 63%】
【“朝に火が残っていると少し安心する”を獲得】
「もう感情が完全に焚き火依存なんよ」
俺が呟くと、ミナが首を傾げる。
「たきび?」
「火のこと」
「レクト、たまに変な言葉使う」
危ない。
未来知識っぽいの、たまに混ざる。
男が腕の傷を押さえながら立ち上がった。
「水探してくる」
「一人で大丈夫か?」
「動ける」
そう言って森へ入っていく。
ミナは枝を拾い始めた。
火を維持するためだ。
俺は少し驚いた。
普通に役割分担してる。
誰も指示してないのに。
俺は石を集める。
投げやすい石。
尖った石。
割れそうな石。
最近、なんとなく分かる。
形。
重さ。
手触り。
“使えそう”が。
【《旧石器》適応率 65%】
【“石を選ぶ感覚 微上昇”】
「だから地味なんだって全部……」
でも。
実際ちょっと違う。
前は全部同じ石に見えてた。
今は違う。
軽い石。
飛ぶ石。
割れやすい石。
ほんの少しだけ理解できる。
その時。
ミナが突然しゃがみ込んだ。
「?」
地面を見ている。
「これ」
「なんだ?」
「足跡」
また俺には分からない。
でもミナは真剣だった。
「人」
「……え?」
空気が変わる。
人。
つまり。
誰かいる。
俺たちみたいな追放者か。
盗賊か。
奴隷商か。
分からない。
その時。
森の奥から、木の折れる音がした。
バキッ。
三人同時に固まる。
男も戻ってきていた。
顔色が変わっている。
「隠れろ」
低い声。
俺たちは反射的に火へ土をかけた。
ジュゥ……
煙。
火が消える。
その瞬間。
胸の奥が急に不安になった。
怖い。
暗い。
落ち着かない。
【“火が消えると少し不安になる”を獲得】
「もう完全に犬じゃねぇか俺……!」
だが。
叫ぶ余裕はなかった。
森の奥から。
人の声が聞こえたからだ。




