019...スキル「大焚き火」
遠吠えは、どんどん近づいていた。
ウゥォォォ……
森が鳴いてるみたいだった。
ミナが火の近くへ寄る。
男も立ち上がった。
怪我してるくせに、周囲を警戒している。
「何匹だ……」
「分からん」
でも。
複数いる。
それだけは分かった。
俺は石を握った。
……意味あるか?
オオカミ相手に石。
終わってる。
だが。
他に何もない。
その時。
男が火を見ながら言った。
「枝集めろ」
「え?」
「火を大きくする」
俺とミナは慌てて枝を集めた。
枯れ枝。
葉。
太い木。
火へ投げ込む。
パチパチッ!!
炎が大きくなる。
赤い光が周囲を照らした。
その瞬間。
茂みの奥に目が見えた。
赤い。
一つじゃない。
二つ。
三つ。
「っ……!」
オオカミだ。
こっちを見てる。
腹減ってる目だ。
怖い。
身体が震える。
でも。
狼たちも近づいてこない。
火を警戒してる。
男が低く言った。
「囲め」
「え?」
「火を囲んで」
意味は分からなかった。
でも。
俺たちは自然に従った。
三人で火を囲む。
その瞬間。
妙な安心感が広がった。
火。
光。
人。
それだけで、“群れ”になった気がした。
【《旧石器》適応率 55%】
【“大焚き火”を獲得】
火を囲むと少し恐怖感が、マシになった。
「精神完全に原始人化してる……」
でも。
本当に少し怖さが減った。
オオカミはまだいる。
でも。
男が石を拾った。
投げる。
ビュッ。
狼の近くへ落ちる。
当然、効かない。
でも。
狼が少し下がった。
「……あれ?」
男が言う。
「狼はな」
「?」
「群れを見る」
火。
三人。
石。
叫び。
全部まとめて、 “面倒な群れ”に見せる。
それが大事らしい。
真正面から勝たない。
追い払う。
近づかせない。
生き残る。
その時。
頭の奥へ感覚が流れ込んだ。
人類。
火。
群れ。
夜。
獣。
そして。
円になってる人間たち。
【《旧石器》適応率 60%】
【“群れで夜を越す”を理解】
オオカミは、しばらくこちらを睨んでいた。
やがて。
ゆっくり森の奥へ消えていく。
「はぁ……っ」
全員同時に息を吐く。
助かった。
ただ。
石が強かったわけじゃない。
火と。
群れ。
それだけだった。




