002...スキル「石をなげる」
《石を投げる》。
それが俺のスキルだった。
次の日には、村中に広まっていた。
「おい石ころ」 「原始人」 「魔物来たら石投げて守ってくれよ!」
笑い声。
別に殴られたりはしない。
でも。
視線が変わった。
“役に立たない奴”を見る目。
それが一番きつかった。
広場では、他の若者たちがスキルを試していた。
「《火球》!」
ボォッ!!
炎が飛ぶ。
「おぉぉ!!」
歓声。
別の奴は剣を振る。
「《身体強化》!」
木人形が吹き飛ぶ。
皆、未来があった。
冒険者。
騎士。
傭兵。
食っていける力。
その中で。
俺だけが石だった。
……石ってなんだよ。
夕方。
小屋へ戻る。
寒い。
狭い。
食料も少ない。
パン半分。
干し肉少し。
冬前なのに、備蓄が終わってる。
「はぁ……」
椅子へ座る。
その時。
コンコン。
扉が鳴った。
「レクト?」
アイリスだった。
籠を持っている。
「母さんがスープ作りすぎたって」
「絶対嘘だろ」
「バレた?」
笑いながら入ってくる。
湯気の立つスープ。
肉入り。
めちゃくちゃ良い匂いだった。
「……うま」
「でしょ」
火を囲んで座る。
小屋は静かだった。
外は寒いのに。
火の前だけ、少し安心する。
その時だった。
【《旧石器》適応開始】
頭の中に、青白い文字が浮かんだ。
俺は目を見開く。
【火の近くで精神安定 微上昇】
「……は?」
「どうしたの?」
「いや……なんでもない」
なんだ今の。
意味分からん。
だが。
火を見てると、妙に落ち着く。
さっきまでの嫌な気持ちが少し薄れていた。
アイリスはスープを飲みながら、小さく言った。
「王都から迎え、来るんだって」
俺の手が止まる。
「……そっか」
「来週には出発らしい」
火がパチッと鳴る。
少し沈黙。
「レクトも一緒に来れたらよかったのに」
「無茶言うな」
俺は笑った。
「石投げ係として城壁守るか?」
「もう……」
アイリスは少しだけ悲しそうな顔をした。
俺は視線を火へ落とす。
分かってる。
俺とアイリスは、もう違う。
《聖剣姫》
王都。
英雄。
俺は。
石。
その時。
外から風の音がした。
寒い。
冬が近い。
そしてこの世界では、
冬を越せない人間は普通にいる。




