014...群れ
「お、おい!?」
慌てて駆け寄る。
少女は軽かった。
怖いくらい。
骨みたいに細い。
「死んで……ないよな」
呼吸はある。
浅いけど。
熱も少しある。
泥だらけの髪。
擦り傷だらけの足。
裸足。
その足を見た瞬間。
少しだけ、自分と似てると思った。
……森を歩いてきた足だ。
俺は少女を火の近くへ運んだ。
パチパチと炎が鳴る。
すると少女の身体が少しだけ緩む。
火。
やっぱり安心するんだ。
人間も。
俺も。
その時。
【《旧石器》適応率 33%】
【“群れへの安心感 微上昇”】
「今度は群れかよ……」
だが。
文字を見た瞬間、妙に納得してしまった。
一人、怖かった。
ずっと。
森。
夜。
魔物。
寒さ。
全部。
誰もいないのが一番きつかった。
だから。
火の前に誰かいるだけで、少し安心する。
少女が小さく目を開けた。
赤い瞳。
一瞬だけ警戒。
逃げようとする。
「待て待て待て」
俺は慌てて両手を上げた。
「襲わない」
少女は震えていた。
視線は火じゃなく、 俺の持ってる肉を見る。
腹減ってる顔だった。
俺は少し迷った。
ウサギ肉。
残り少ない。
かなり大事。
でも。
その目を見たら、なんか無理だった。
「……食う?」
差し出す。
少女は一瞬固まって。
次の瞬間、奪うように食べた。
ガツガツ。
ほとんど噛んでない。
「お、おい落ち着け」
喉詰まるぞ。
だが少女は止まらない。
その姿を見て。
俺は少しだけ理解した。
……こいつも、生き残るので必死なんだ。
食べ終わる頃には、少女の警戒は少し減っていた。
「……名前」
「え?」
「名前、ある?」
掠れた声。
「レクト」
「……ミナ」
それだけ言って、火へ近づく。
まるで小動物みたいだった。
しばらく沈黙。
パチパチ燃える火の音だけ。
その時。
ミナがぽつりと聞いた。
「……追い出されたの?」
俺は少し黙ってから笑った。
「まぁ、そんな感じ」
するとミナも小さく笑った。
「同じ」
その笑い方が。
少しだけ寂しかった。




