015...2人で眠る夜
ミナはあまり喋らなかった。
名前。
追い出されたこと。
それ以外、ほとんど何も言わない。
でも。
火を見てる時だけ、少し安心した顔をしていた。
……俺と同じだ。
夜。
森は冷える。
風が吹くたび、木々が鳴る。
怖い音だ。
俺は火へ枝を足した。
パチッ。
炎が揺れる。
すると隣で、ミナが少し近づいてきた。
「寒い?」
「……うん」
小さい声。
俺は自分のボロ布を半分渡した。
「使う?」
「いいの?」
「凍えるよりマシだろ」
ミナは少し迷ってから受け取った。
その時。
【《旧石器》適応率 36%】
【“群れでいると少し眠りやすい”を獲得】
「完全に野生動物化してない?」
思わず呟く。
「?」
「いやなんでもない」
でも。
実際ちょっと安心していた。
誰かいるだけで違う。
火だけじゃなく。
人の気配も。
怖さを減らしてくれる。
その時。
グゥゥ……
ミナの腹が鳴った。
「……」
「……」
気まずい。
食料がない。
ウサギ肉もほぼ終わり。
俺はため息を吐いた。
「明日、なんか探すか」
「獲れるの?」
「分からん」
正直だ。
石しかないし。
その時。
ミナが小さく言った。
「レクト、石投げるの上手い」
「……慰め下手か?」
「違う」
ミナは火を見ながら続ける。
「森で生きる人、みたいだった」
その言葉に、少しだけ黙る。
嬉しくない。
でも。
否定もしづらかった。
最近の俺。
裸足で森歩いて。
火見て安心して。
石握って。
獣の臭い嗅いでる。
普通に原始人寄りだ。
その時だった。
遠くで遠吠えが響いた。
ウゥォォォ……
ブラックウルフ。
近い。
ミナが震える。
俺も怖い。
でも。
火の前から動けなかった。
火がないと死ぬ気がする。
その時。
【“火を囲むと警戒心が少し減る”を獲得】
「だから精神が原始時代なんだよ……」
だが。
火を挟んで座るだけで、 本当に少しだけ安心できた。
狼は怖い。
森も怖い。
未来もない。
でも。
今だけは。
火の前に二人いた。




