011...雨
夜中。
雨の音で目が覚めた。
「……最悪だ」
ポツポツじゃない。
本降り。
冷たい雨が森を叩いている。
そして。
火が消えかけていた。
「っ!」
慌てて枝を寄せる。
だが湿ってる。
燃えない。
煙だけ。
「頼む、つけ……!」
カチッ。
火花。
消える。
カチッ。
煙。
消える。
焦る。
寒い。
手が震える。
雨音が怖い。
暗闇が近づいてくる。
その時だった。
【《旧石器》適応率 18%】
【“雨の匂いで少し落ち着く”を獲得】
「いや今その進化いる!?」
思わず叫ぶ。
だが。
次の瞬間。
不思議と、少しだけ呼吸が落ち着いた。
雨の匂い。
湿った土。
濡れた木。
鼻に入ってくる。
嫌なのに。
どこか知ってる感じがした。
その時。
ふと気づく。
木の下。
雨が弱い場所がある。
「……あそこか」
俺は火種を抱えて移動した。
大木の根元。
雨をかなり防げる。
葉の乾いてる部分もある。
少しずつ集める。
細い枝。
乾いた葉。
息を吹く。
パチッ。
小さな火。
生き返る。
「はぁ……っ」
座り込む。
全身が冷たい。
でも。
火の前だけ暖かい。
「メンタルって大事なんだな」
ここに気づかなかったかもしれない。
その時。
腹が鳴った。
限界だった。
木の実も終わり。
干し肉もあと少し。
「……食わないと死ぬ」
その時だった。
鼻に匂いが入る。
近い。
獣。
小さい。
土の臭い。
「……?」
雨音の中。
耳を澄ます。
ガサ、ガサ。
茂み。
何かいる。
反射的に石を掴んでいた。
怖い。
でも。
腹も減ってる。
数秒後。
茂みから、小さな影が出てきた。
ウサギだった。
「……!」
白い。
小さい。
震えている。
雨宿りだ。
俺は息を呑んだ。
腹が鳴る。
頭の中に浮かぶ。
……食える。
その瞬間。
【《旧石器》適応率 20%】
【“空腹時、獲物を見ると少し集中する”を獲得】
「怖い怖い怖い!!」
でも。
視線が外せなかった。
ウサギは弱い。
俺でも石が当たれば。
でも。
震える。
俺がじゃない。
ウサギが。
火の近くで、小さく丸まっていた。




