010...スキル「裸足」?
ブラックウルフが消えてからも、しばらく動けなかった。
怖い。
心臓がずっと速い。
「……死ぬかと思った」
本当に。
石なんかじゃどうにもならない。
あんな化け物。
村が怯える理由も分かった。
俺は震える足で立ち上がった。
その時。
グチャッ。
「……あ」
靴が泥にハマった。
昨日から湿った地面を歩き回っていたせいだ。
引っ張る。
抜けない。
「クソ……!」
焦る。
また狼が来たら終わりだ。
俺は仕方なく靴を脱いだ。
冷たい泥。
ぬるい感触。
気持ち悪い。
……はずだった。
「……?」
妙だった。
歩きやすい。
地面の柔らかさが分かる。
枝。
石。
濡れてる場所。
足裏で全部伝わってくる。
しかも。
音が小さい。
森を歩く感覚が、少しだけ自然になった。
「なんだこれ……」
その時。
【《旧石器》適応率 15%】
【“裸足だと少し安心する”を獲得】
「嫌すぎるだろその進化……!」
思わず叫んだ。
誰もいない森に声が響く。
だが。
実際、少し落ち着く。
靴を履いてる時より、変に安心感があった。
……いやいやいや。
「原始人じゃん……」
自分で言ってて悲しくなる。
だが。
そのまま歩いてみる。
ペタ、ペタ。
冷たい。
でも。
変に馴染む。
その時。
枝を踏みそうになって、自然に避けていた。
「……あれ?」
足裏で分かった。
硬い場所。
柔らかい場所。
危ない場所。
なんとなく。
頭じゃなく、身体が理解している感じ。
その時だった。
ガサッ。
「っ!」
反射的に木の陰へ隠れる。
数秒後。
小動物が走っていった。
……気づくの早かった。
前なら絶対反応できてない。
【感覚知覚 微上昇】
「いやもう怖いってこのスキル……」
強くなってる感じがしない。
ただ。
“森の生き物”に近づいてる感じがする。
それが少し怖かった。
夕方。
腹が限界だった。
木の実だけじゃ足りない。
寒さもキツい。
俺は焚き火の場所へ戻る。
火。
まだ少し残っていた。
それを見た瞬間。
胸の奥が、ふっと軽くなる。
「……あった」
自分でも驚くくらい安心した。
【火を見ると安心感 微上昇】
「メンタル完全に野生動物なんだよなぁ……」
でも。
火の前へ座った瞬間。
本当に少しだけ、“生き残れる気”がした。




