第四十九話 緋色の咆哮
「くくっ!!」
典膳が両腕を広げた。
「壊してみろ!この退屈な永遠をっ!!」
——ザンッ——
典膳が踏み込む。
迎え撃つのは——
緋炎を纏った原初の灰牙。
「グガァァァァァッ!!!」
シンが虚空を蹴った。
——ヒュンッ!!——
鋭い爪。
典膳の喉元へ迫る。
——ズザッ——
典膳が身を捻る。
爪が首筋を掠めた。
「灰よ」
指先に灰が集まる。
——ドンッ!!——
凝縮された灰塵が放たれる。
シンの爪と衝突する。
——ズガガガッ!!——
衝撃が庭を走った。
木々が根元から折れ、吹き飛ぶ。
「生温いっ!!」
典膳が笑う。
「貴様の牙など、所詮はその程度か!!」
「——果てろ——」
「……!」
背後。
來が踏み込んでいた。
「黒雷・絶」
——ィィィイインッ!!——
緋炎を帯びた漆黒の刃の一閃。
「ぬぅっ!!その程度——」
「影爪・穿っ!!」
——ヒュヒュヒュンッ——
蒐が指を振る。
——ズアァァッ!!!——
影を伴う無数の風刃。
四方から典膳へ殺到する。
「究極の粉もん、その薄ら寒い面に叩き込んでやるわっ!!」
「……羽虫がっ!!」
典膳の眉間に皺が寄る。
灰が膨れ上がった。
——ゴォォォォッ!!——
灰塵が全方位へ爆ぜる。
來と蒐を弾き飛ばそうとした、その時。
——ジャラッ——
「行かせませんっ!!」
——ギュルルッ!!——
典膳の足首。
緋色の鎖が巻きついた。
「何っ!?」
紅葉が両手を伸ばしていた。
「私は——」
——ギリッ——
鎖が地面へ食い込む。
「沙苗様の緋色が、大好きなんですっ!!」
——ガギィンッ!!——
「……貴様ぁっ!」
「——朱炎・采っ!!」
——ゴォォォッ!!——
朱禰が扇を振り抜く。
「があぁぁっ!!?」
朱炎が典膳を包み込んだ。
「沙苗ぇっ!!」
「——ああぁぁぁっ!!」
沙苗が右拳を握る。
掌の緋炎が燃え上がった。
朱禰の朱炎と重なる。
——ゴォォォォッ!!——
緋色が膨れ上がる。
「おおおおおおおおおっ!!!」
シンが切り開いた正面。
來と蒐が塞いだ退路。
紅葉が縛りつけた足。
朱禰が包み込んだ身体。
沙苗が駆ける。
「典膳っ!!」
典膳が顔を上げた。
——ズォォォォッ——
灰が胸の前へ集まる。
「その程度で——」
——バキィィィンッ!!——
緋色の拳が、防壁を砕いた。
「——っ!?」
沙苗は止まらない。
「あんたの退屈も!!」
拳が迫る。
「渇きも!!」
——ドゴォォォッ!!!——
典膳の胸。
不死の核へ——
拳が突き刺さった。
「全部、染めてあげるわっ!!」
——ゴォォォォッ!!——
緋炎が胸の内側へ流れ込む。
灰色の身体に、緋色の亀裂が走った。
「……くっ……」
灰が崩れる。
「くくっ……」
典膳の口元が動く。
「…………」
沙苗が顔を上げる。
典膳は笑っていた。
「あぁ……」
胸に突き刺さった拳を見る。
「これだ……」
初めて感情を持った——
灰色の瞳。
「この痛みこそが……」
——ゴォォォォッ!!——
緋炎が典膳の内側から噴き上がる。
灰色の世界に亀裂が走る。
世界を縛る因果が——
焼かれようとしていた。
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