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輪廻の瑕疵  作者: 朔來 織
~思緋紡ぐ鈍色の鎖~

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第四十八話 因果断絶

「……典膳」


シンが口を開く。


「お前の渇きは、ずっと前から知っていた」


——ゴォッ——


白朱が膨れ上がる。

柴犬の輪郭が揺らいでいく。


黄金の瞳が、典膳を捉える。


「俺はお前と共にいた」


「…………」


「お前の魂が壊れていくのを——」


——ギリッ——


シンが牙を噛み締める。


「隣で見ていることしかできなかった」


「……同情か」


典膳が笑う。


「原初の灰牙ともあろう者が、随分と人間に毒されたものだ」


——サラッ——


典膳の指先から、灰が零れた。


「同情じゃない」


シンが答える。


「いつか、お前にも人としての終わりが訪れる」


「…………」


「その時が来れば、お前は死ねる」


——ゴアァァッ——


白朱の炎がシンの身体を包む。


「そう信じて、俺は牙を収めていた」


「たかが獣風情が——」


「だが——」


シンが顔を上げた。


「違った」


「…………」


「お前は、最初から終わっていた」


典膳の笑みが消えた。


「……そうだ」


灰色の瞳が深くなる。

典膳がシンを見据えた。


「私は最初から壊れている」


「……典膳」


「この世界の終わりのように、完璧にな」


典膳が両腕を広げる。


「終わりのない世界に、理などない」


「ならば——」


——グルルルル——


シンの牙が覗く。


「その因果——」


白朱の炎が爆ぜた。


「俺の牙で、断ち切るっ!!!」


——ドォォォンッ!!——


柴犬の姿が光に呑まれた。


巨大な影が立ち上がる。


——ウオオォォォン!!——


大気が震える。


原初の灰牙。


——バキィッ!!——


開かれた顎が、虚空を噛み砕いた。

緋色と灰色が溢れ出す。


典膳を取り巻く灰へ食い込む。

緋色が灰の世界を押し返していく。


「——沙苗っ!!」


シンの声が響いた。


「緋色を燃やせ!!」


「……!」


沙苗が顔を上げる。


「今、この瞬間——」


黄金の瞳が、沙苗を捉えた。


「お前が俺の牙だ!!」


「……ええ!」


沙苗が右手を掲げた。

掌の緋炎が燃え上がる。


——ボォォォッ!!——


緋炎が渦を巻く。


灰に覆われた夜を照らした。


「分かってる!!」


沙苗は典膳を睨む。


「私が——」


——ゴアアァァァッ!!——


緋炎が膨れ上がる。


「あんたの不条理を終わらせる!!」


「……ほう」


典膳が沙苗を見る。


「その色が、私を救えるか?」


「救えるかどうかなんて——」


——ザッ——


沙苗が一歩踏み出す。


「やってみなきゃ分かんないでしょ!!」


緋炎が典膳へ向かって渦を巻く。


「あんたの退屈も!」


——ゴォォォッ!!——


「乾ききった心も!!」


沙苗が叫ぶ。


「残らず私の緋色で染め上げてやるわ!!」


緋炎が奔る。


「須藤典膳っ!!!」


——ドォォォンッ!!——


緋色の炎が——

典膳へ襲い掛かった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

『輪廻の瑕疵』は、毎日18:00に更新予定です。

※本作は「カクヨム」にも重複投稿しています。


もし「沙苗と來のコンビが良いな」「先が気になる」と思ってくださったら、

評価、ブックマークで応援いただけると、執筆の大きな励みになります。


そして、もうひとつの物語——

『SOUL TR@DE』も毎日18:00更新中です。


和風怪異とはまったく異なる、

魂と市場を巡る近未来ダークファンタジー。


あわせて楽しんでいただけたら嬉しいです。


今後ともよろしくお願いいたします。

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