第四話 今昔の茶柱
「ありがとうございましたー!」
土産の団子を買う。
みたらし団子の串。
湯気の立つ茶碗。
——ハグッ——
來が団子を頬張る。
「俺は、ヒトだろうか」
遠い日の記憶。
來に居場所を与えた沙苗。
「…………」
沙苗は茶碗を見る。
新緑の中——
一本の茶柱。
「あんたは鬼」
來を見る。
「それでいて——」
ふっと——
唇を綻ばせる。
「ヒトなんじゃないの?」
「…………」
來の手が——
止まる。
——ポタッ——
甘いタレが指先に零れる。
「……それで充分なのか?」
「十分よ」
沙苗が穏やかに笑う。
「少なくとも、あたしにとってはね」
「十分……か」
——ズズッ——
沙苗は來を見る。
大きな身体。
最凶の鬼。
串団子を持ったまま——
物思いにふける。
(難しいこと考え過ぎなのよ)
「…………」
やれやれと——
肩をすくめる。
「団子が泣いてるわよ」
「…………」
「さっさと食べなさい」
「……ああ」
——ハグッ——
「なあ」
「何よ」
「今は——」
來は団子を見る。
「この団子が旨い」
「…………」
「それだけでいい」
「——あはははっ!!」
沙苗が声を上げて笑う。
「相変わらず鬼らしくないわねー」
「…………」
「でも、それでいいとあたしも思う」
——ズズーッ——
温くなった茶を飲み干す。
(……悪くない)
沙苗を見る。
(今も昔も、な)
「沙苗」
「何よ」
「団子。もう一皿だ」
「あんたねぇ……」
「…………」
茶碗の中。
柔らかな新緑の波紋。
一本の茶柱が——
静かに揺れていた。
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