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輪廻の瑕疵  作者: 朔來 織
~思緋紡ぐ鈍色の鎖~

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第三話 飢餓

——ググゥゥゥゥゥ——


「……腹減った」


鬼の性。


血肉と魂。


鬼はそれを喰らう。


底なしの飢え。


鬼は本能に、抗わない。


「……腹……減った」


鬼は。


人に興味を持った。


人間は弱い。


人間は脆い。


だからこそ。


人間は面白い。


「……気まぐれも過ぎたものだ」


「來?」


「何だ」


「どうかした?」


「なんでもない」


怪訝な顔をする沙苗。


——ハグッ——


來は握り飯にかぶりつく。


須藤家への帰路。


絢爛豪華な楼閣が立ち並ぶ。


その一角。


「沙苗」


「……行くわよ」


死。


欲望。


「……酷い臭い」


醜悪な臭いが漂う。


「不愉快な臭いだ」


——カラカラ——


静かに楼閣へと入る。


——ヒュォォォ——


人の気配がない。


——ガタッ——


「ん?」


「これは——」


地下へと続く階段。


『——ィ』


微かに。


声が聞こえる。


人間ではない。


何かの声。


——カツン——


——カツン——


静かに階段を下りた先。


一人の男。


だったものがいた。


楼閣の主。


三佐。


——ドッ——


女の胸に小刀が刺さる。


「があっ!!」


『何だ——』


「もう……こ……」


——ドシュッ——


『もう。終わりか』


声が消える。


『……キヒィ……』


己の愉悦。


快楽。


欲のみが支配する穢れた部屋。


壁には。


血。


床には。


生きていた残骸。


——ピチャッ——


無機質に屠る屠殺場。


朱く染まった床。


——クルッ——


三佐が振り返る。


その瞳の歪んだ色。


人間の色は無い。


あるのは。


純粋な狂気。


『喰らえ……』


——ゴクッ——


『喰らえ……』


來の。


鬼の。


本能。


喉が鳴る。


『喰らえぇぇぇっ!!!』


鬼の飢餓。


強烈な衝動が叫ぶ。


——チャキッ——


「不細工な鬼だ……」


『喰らえ』


——スッ——


黒刀を抜く。


『喰らえ』


目の前にあるのは人か。


己に問う。


『喰らえ』


悪辣なヒト。


その成れの果て。


『喰らえ』


鬼の本能が。


囁く。


『喰らえ』


—スゥッ——


瞳の奥が開いていく。


黒く染まる。


『喰らえぇぇぇっ!!!』


「來」


「——っ!?」


「あんたの好きにしなさい」


沙苗の声。


眼下の血の海。


狂った三佐。


沙苗は。


見ていた。


飢えた鬼。


來を。


真っ直ぐに。


「俺は」


「…………」


「鬼だ」


——ギロッ——


來が睨み返す。


「そうね」


「…………」


「鬼の飢えなんて」


沙苗が言い放つ。


「ヒトにはわからないわ」


人に興味を持った。


その鬼は。


ヒトで在ろうとした。


飢えに抗い。


迷い。


苦しむ。


「……はあぁぁぁぁ……」


深く。


ゆっくりと。


息を吐く。


——スゥッ——


瞳の色が。


戻る。


飢えは消えない。


「好きにしろと言ったな」


來は三佐に向き直る。


——ヒュッ——


黒刀がぶれる。


「鬼にも矜持はある」


——ドシャァッ——


喰らわなかった。


「俺は」


——ジジッ——


「ヒトだ」


煙管から紫煙が立ち昇る。


「知ってる」


——グウゴォォォッ——


來の腹が鳴る。


「団子でも食べに行きましょ」


沙苗が笑う。


「……そうだな」


二人は歩く。


ヒトで在る理由。


生きる理由。


そのものと共に。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

『輪廻の瑕疵』は、毎日18:00に更新予定です。

※本作は「カクヨム」にも重複投稿しています。


もし「沙苗と來のコンビが良いな」「先が気になる」と思ってくださったら、

評価、ブックマークで応援いただけると、執筆の大きな励みになります。


そして、もうひとつの物語——

『SOUL TR@DE』も毎日18:00更新中です。


和風怪異とはまったく異なる、

魂と市場を巡る近未来ダークファンタジー。


あわせて楽しんでいただけたら嬉しいです。


今後ともよろしくお願いいたします。

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