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輪廻の瑕疵  作者: 朔來 織
~思緋紡ぐ鈍色の鎖~

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第三十三話 三十年前の共犯者

「まず端折る」


道源が胡座をかいたまま一行を指差す。


「一回しか言わん」


「…………」


「理解するな」


沙苗の眉が動く。


「——感じろ」


「父さん」


即座に返す。


「説明する気ある?」


「ある」


「今ので?」


「ああ」


「最悪ね」


道源は楽しそうに笑った。


「俺がここにいる理由は単純だ」


白い空間へ視線を向ける。


「こうなると分かってたからだ」


沙苗の表情が変わる。


「この世界を灰色の理が塗り潰す」


——スッ——


道源が宙へ指を滑らせる。


「だったら」


何もない白へ一本の線を引く。


——ピシッ——


灰色の亀裂が走った。


「設計図そのものに——」


「…………」


「穴を開けときゃいい」


蒐が來を見る。


「來様」


「何だ」


「この親子、似てますわ」


「聞こえてるわよっ!!」


道源が声を上げて笑う。


「ただまあ——」


「何?」


「この仕掛けは俺一人じゃ面倒でな」


「面倒?」


「ああ」


道源は頬杖をつく。


「三十年くらい前に、ちょいと手伝ってもらった」


「誰によ」


沙苗が訝しげに見る。


「父さんの無茶に付き合うなんて、相当な物好きでしょ」


「ん?」


道源は首を傾げた。


「朱禰だ」


「…………」


三人が顔を見合わせる。


「誰?」


「朱禰」


「だから誰よ」


「知らんのか?」


道源が本気で驚いた顔をする。


「聞いたことないわよ」


「おかしいな」


頭を掻く。


「俺、言ってなかったか?」


「何を」


「妹」


「…………」


沙苗の目が細くなる。


「——妹?」


「ああ」


道源は軽く答える。


「須藤朱禰」


「…………」


そして。


「まあ、お前らには——」


口角を上げる。


「田中の婆って言った方が早いか」


「「「…………」」」


白い世界が静まり返る。

沙苗が口を開く。


「田中の」


「婆」


蒐が続ける。

來が静かに目を見開く。


「……朱禰」


次の瞬間。


「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」」」


絶叫が白い世界を揺らした。


「ちょっと待ってぇぇぇっ!!」


沙苗が道源へ詰め寄る。


「田中の婆ちゃんが!?」


「ああ」


「父さんの妹!?」


「ああ」


「須藤!?」


「そうだ」


「うちの親族ぅぅぅぅっ!?」


「そう言ってるだろ」


「初耳よぉぉぉぉっ!!」


その横。

來が何かを思い出したように目を細める。


「……そういえば」


「何よ!?」


「昔」


記憶を探る。


「道源が……妹は怖いと言ってたな」


「何でそこだけ覚えてんのよっ!!」


「道源が本気だったからだ」


「來様に怖がられる婆さんって何者やねん……」


蒐の顔が引き攣る。


「あいつは俺なんかより——」


道源は愉快そうに笑う。


「ずっと理に近い」


空気が僅かに変わる。


「あの姿で町に残り」


目を細める。


「俺が遺したものを守ってた」


「…………」


沙苗の脳裏。


『シン!帰るわよ!』


柴犬を連れて帰る老婆。


『晩御飯は鯵の開きなんだから』


「…………」


沙苗は頭を抱えた。


「情報と姿が一致しない……」


「俺もや……」


蒐の身体が震える。


「田中の婆が……道源の妹……」


——ガクッ——


膝から崩れ落ちる。


「嘘や……」


「何でお前が一番衝撃受けてんのよ」


「俺……」


床に手をつく。


「あの人からシンの散歩の愚痴——」


蒐の目が果てしなく遠くを見る。


「死ぬほど聞かされてんねん……」


「ぶはっ!!」


道源が腹を抱えた。


「はははははっ!!」


「笑い事ちゃうわっ!!」


「傑作だな!お前!」


「何がやっ!!」


道源の笑い声が白い世界へ響く。

その姿を沙苗は見つめていた。


父——

須藤道源。


その妹——

須藤朱禰。


三十年という時間を跨ぎ。

二人が仕掛けたもの。


世界の理への反逆。

須藤兄妹の悪趣味な悪戯。


道源が笑みを残したまま顔を上げる。


「さて」


空気が変わる。


「朱禰の話が出たところで——」


その瞳に——

緋色が宿る。


「ここからが本題だ」

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

『輪廻の瑕疵』は、毎日18:00に更新予定です。

※本作は「カクヨム」にも重複投稿しています。


もし「沙苗と來のコンビが良いな」「先が気になる」と思ってくださったら、

評価、ブックマークで応援いただけると、執筆の大きな励みになります。


そして、もうひとつの物語——

『SOUL TR@DE』も毎日18:00更新中です。


和風怪異とはまったく異なる、

魂と市場を巡る近未来ダークファンタジー。


あわせて楽しんでいただけたら嬉しいです。


今後ともよろしくお願いいたします。

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