表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻の瑕疵  作者: 朔來 織
~思緋紡ぐ鈍色の鎖~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/52

第十七話 緋色の赦し

沙苗から溢れ出した緋色の炎は、來と蒐を包み込み、外界から二人を切り離した。

肺を焼く灼熱の空気を優しく溶かすような、ひどく不器用で、どこまでも温かい炎だった。


「……やれば、できるじゃないか……僕の命も……少しは、価値があったかな……」


蒐は、全身の力が抜けていくような、奇妙な浮遊感の中にいた。

これまで自分を縛り付けていた鋼の糸はすべて断ち切られ、張り詰めていた神経が、この温かさに解かれていく。


蒐の耳朶じだに、隣に腰を下ろした最凶の鬼の、低く、重い言葉が届いた。


「……業は大人が背負うもんだ……勝手に一人で抱え込むな……バカガキが……」


そのぶっきらぼうな一言が、蒐の凍りついていた時間を完全に溶かした。

蒐の頬を一筋の涙がなぞる。


泥水を啜り、誰にも理解されぬまま牙を研ぎ続けた小鬼。

最後の最後で、憧れた背中の主にその肩の荷を奪い去られたのだ。


憧れと、緋色の炎。

その二つに優しく抱かれ、蒐は深い安堵の中で意識を手放した。

今度こそ、誰の機嫌を取る必要もない、純粋な眠り。


猛き情を燃やし尽くした炎は、二人の間に横たわっていた呪いのような因果を灰に変え、静かに消えていった。


來は朱色に染まった己の手を拭い、背後に立つ沙苗へ視線を向けた。


「……沙苗。受け継いだか?……不器用なバカたちが遺したものを」


「ええ……本当に不器用なのよ。父さんも……この、大根役者も」


沙苗の声は凛と前を向いていた。

その瞳にはかつてない決意の緋色が灯っていた。


その視線の先では、まるで憑き物が落ちたような穏やかな顔で、小さな子供のように蒐が眠っている。

二人は確かに受け取った。

道源が命を賭して遺した意志と、蒐が命を削って研ぎ澄ました牙の重みを。


「來……あたしたちは、背負ったのね」


「……そうだな……重いぞ、こいつらの想いは」


隣で深く、安らかに眠る不器用なヒト――蒐の寝顔を見つめながら。

二人は、ようやく訪れた平穏な世界の色に、静かに溶け込んでいった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

『輪廻の瑕疵』は、毎日18:00に更新予定です。

※本作は「カクヨム」にも重複投稿しています。


もし「沙苗と來のコンビが良いな」「先が気になる」と思ってくださったら、

評価、ブックマークで応援いただけると、執筆の大きな励みになります。

今後ともよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ