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輪廻の瑕疵  作者: 朔來 織
~灰鏡に咲く緋華~

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第百五十二話 託路

「ふむ」


典膳が扇を閉じる。


「沙苗の緋色は、幾重にも支えられているわけか」


「そういうことね」


朱禰が頷く。


「だが」


典膳が沙苗を見る。


「今、必要なのは、その緋色を外へ届かせることだ」


「……はい」


「抑えられたままでは、限界がある」


「……そうですね」


「抑えを外せば、沙苗の身体が耐えられん」


道源が腕を組んだ。


「厄介だな」


「ならば」


來が口を開く。


「沙苗の中に置かなければいいんじゃないか?」


「……?」


「外へ出した緋色を、誰かが受け取ればいい」


「……なるほど」


道源が來を見る。


「受け取る、か」


「ああ」


來は煙を吐いた。


「紅葉が既にやっているんだろう?」


「……!」


沙苗が紅葉を見る。


「確かに……」


「だが、誰でも受け取れるわけではあるまい」


典膳が呟く。


「緋色は須藤の血に宿るものだからな」


朱禰が頷いた。


「ええ。無関係な者へ渡せば、どうなるか分からない」


「なら」


道源が笑う。


「須藤の血を引く者で受ければよい」


「…………」


典膳。


道源。


朱禰。


沙苗。


そして、紅葉。


「……あれ?」


沙苗が皆を見る。


「五人……?」


朱禰が目を細めた。


「五人、ね」


「何かあるのか?」


典膳が尋ねる。


「まだ分からないわ」


朱禰は沙苗の腕を見つめた。


「でも、緋色を一人で抱え込ませる必要はないのかもしれない」


「……!」


「問題は」


道源が言葉を継ぐ。


「どうやって、緋色を外へ渡すかだ」


「……そうね」


朱禰が考え込む。


「……薬」


「何?」


「田中家の薬よ」


沙苗が顔を上げた。


「また、あの苦いやつ!?」


「ふふっ」


朱禰が笑う。


「今度は飲むとは限らないわ」


「え?」


「薬は緋色を抑えるために作られている」


朱禰は典膳を見る。


「なら、その働きを逆にできれば……」


「外へ流せる、ということか」


「ええ」


「……ふむ」


道源が顎を撫でた。


「しかし、そのような薬があるのか?」


「分からない」


朱禰が首を振る。


「少なくとも、私の知る限りではね」


「……田中家」


柚が呟いた。


「……?」


皆が振り返る。


「どうしたの、柚?」


沙苗が尋ねた。


「いや……」


柚は少し考え込む。


「婆ちゃんが昔、言ってたことを思い出してね」


「何て?」


「田中の薬は、須藤の血を守るためにあるって」


「守る?」


「でも、それだけじゃない」


柚が典膳を見る。


「須藤が道を間違えた時、止めるのも田中の役目だって」


「……!」


典膳の瞳が細くなる。


「……どうした?」


來が尋ねた。


「いや」


典膳は目を閉じる。


「昔、弟が話していた」


沙苗が顔を上げる。


「道舟様が?」


「ああ」


典膳は扇を握った。


「須藤を、須藤の者だけに任せてはならぬと」


「…………」


柚が息を呑む。


「……同じことを」


「何?」


「婆ちゃんも、言ってた」


「…………」


典膳が柚を見る。


「柚」


「うん」


「田中家には、何が残っている?」


「……分からない」


柚が首を振った。


「でも」


皆の視線が集まる。


「一度、実家に戻ってみよう」


「……そうね」


「婆ちゃんが残したものを、調べたい」


典膳が頷いた。


「ああ」


——パチン——


扇を閉じる。


「行こう」


沙苗が紅葉を見る。


「紅葉」


「はい!」


二人が頷き合った。


緋色。


歴代の須藤家が守り続けてきた色。


その力を抑えるための薬。


そして、何百年も前。

一人の男が、未来へ遺したもの。


須藤道舟。


典膳の弟。


彼が繋いだ道は——

途切れていなかった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

『輪廻の瑕疵』は、毎日18:00に更新予定です。

※本作は「カクヨム」にも重複投稿しています。


もし「沙苗と來のコンビが良いな」「先が気になる」と思ってくださったら、

評価、ブックマークで応援いただけると、執筆の大きな励みになります。


そして、もうひとつの物語——

『SOUL TR@DE』も毎日18:00更新中です。


和風怪異とはまったく異なる、

魂と市場を巡る近未来ダークファンタジー。


あわせて楽しんでいただけたら嬉しいです。


今後ともよろしくお願いいたします。

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