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輪廻の瑕疵  作者: 朔來 織
~灰鏡に咲く緋華~

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第百四十六話 家路

——ドサッ——


「痛ったぁ!?」


蒐の声が響く。


「……みんな無事か」


「おい」


「ん?」


「來様!お前、俺の上に落ちんなや!」


「知らん」


「退けや!」


「面倒」


「面倒ちゃうわ!」


「…………」


沙苗が目を開ける。


「ここ……」


鼻先を掠める。


土の匂い。

草。


——フワッ——


藤の香り。


「……!」


顔を上げる。


見覚えのある屋敷。


壊れた門。

朽ちた柱。


「須藤家……」


朱禰が呟いた。


「戻って……きた」


「…………」


典膳は動かなかった。


ただ——

屋敷を見つめている。


「典膳様」


沙苗が隣を見る。


「…………」


典膳が歩き出した。


——ザッ——


壊れた門の前。

その足が止まる。


「…………」


ゆっくりと手を伸ばした。


——スッ——


朽ちた柱へ触れる。


「……!」


指先が震えた。


「……須藤家……」


かつて。

この門を出た。


須藤家を守るため。

帰るために。


そして——

帰れなかった。


「始祖様」


朱禰が典膳を見つめる。


「お帰りなさい」


柔らかく笑った。


「…………」


典膳が目を閉じる。


長く。

深く。


「……ああ」


小さな声。


——フワッ——


藤の華が揺れた。


「……ふっ」


信鷹が笑う。

その姿は柴犬に戻っている。


道源が目を細める。


沙苗も笑った。


須藤典膳が——

帰ってきた。


「…………」


紅葉が空を見ていた。


「紅葉?」


沙苗が振り返る。


「……消えました」


「え?」


「灰色の世界が」


紅葉は胸元へ手を添える。


「どこにも……ありません」


「……何だと」


典膳が振り返った。


「鍾鬼は?」


來が問う。


「分かりません」


紅葉は首を横へ振る。


「紫灰の器もか」


「はい」


「飲まれた、か」


道源は紅葉を見て呟いた。


「それも分かりません」


沙苗は壊れた門の向こうを見る。


帰ってきた。


典膳は確かに帰ってきた。


だが——

帰ってきていない人たちがいる。


「明里様……」


典膳の瞳が動いた。


「紫季さん」


紅葉が目を伏せる。


そして——


「道舟様」


道源の表情が変わった。


「…………」


紫灰の器。


鍾鬼。


消えた灰色の世界。


そして——

紫。


沙苗は空を見上げる。


終わっていない。


迎えに行かなければならない。


まだ。


帰れていない——

家族がいる。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

『輪廻の瑕疵』は、毎日18:00に更新予定です。

※本作は「カクヨム」にも重複投稿しています。


もし「沙苗と來のコンビが良いな」「先が気になる」と思ってくださったら、

評価、ブックマークで応援いただけると、執筆の大きな励みになります。


そして、もうひとつの物語——

『SOUL TR@DE』も毎日18:00更新中です。


和風怪異とはまったく異なる、

魂と市場を巡る近未来ダークファンタジー。


あわせて楽しんでいただけたら嬉しいです。


今後ともよろしくお願いいたします。

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