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輪廻の瑕疵  作者: 朔來 織
~灰鏡に咲く緋華~

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第百三十話 集結

盤は、組み替えられていた。


だが——

最後の駒が、揃っていない。


全員の意識は、來が見た手へ向いていた。

因果を狂わせた、あの手。


次に何を確かめるべきか。

それぞれが考えを巡らせていた。


——タッタッ——


廊下から足音が聞こえた。

朱禰が顔を上げる。


全員の視線が障子へ集まった。


——スッ——


障子が開く。


「……紅葉」


沙苗が名前を呼んだ。


眠っていたはずの紅葉が、そこに立っていた。

紅葉は居間を見渡す。


冷めかけた茶。

道源の表情。

蒐の眼差し。


そして——

片膝をついた來。


疲弊した身体を支えながら、こちらを見ている。


「……間に合わなかったんですね」


紅葉が呟いた。


「紅葉、お前……身体は大丈夫なのか?」


道源が声をかける。

紅葉の視線は、來へ向けられていた。


「何があったのか、聞かせてください」


「……ああ」


裂け目の奥で見たもの。

人間でも鬼でもない存在。

典膳と明里の悲劇。


世界を維持するための生贄として固定されていたこと。

來は順を追って話した。


「……そして」


「そこまでは、分かっています」


紅葉が手を挙げた。

來の言葉が止まる。


「その先を、お聞かせください」


「……何?」


道源が紅葉を見る。

蒐も眉を動かした。

來は紅葉を見据える。


「……先、だと?」


「はい」


紅葉は頷いた。


「あれは敵じゃない」


來の声が低くなる。


「悪意でもない」


因果の帳尻。

世界の執行。


「——理だ」


「…………」


紅葉の表情が止まった。


「……理……?」


唇が、僅かに動く。


「そこまで……見えたのですか」


紅葉は來を見つめたまま、動かない。

その顔から、先ほどまでの落ち着きが消えていた。


「……ああ」


來が頷く。


「ああ、そうや。けどな——」


蒐が身を乗り出す。


——トントン——


指先で畳を叩いた。


「あの理が悲劇を固定した原因やとしても、その前がある」


紅葉が蒐を見る。


「因果を狂わせた、最初の傷や」


蒐は來へ視線を向けた。


「來様は、それを作った手を見た言うとる」


「……手」


紅葉が呟く。


紅葉は五人の顔を見渡す。


そして、古い文机の前へ座った。

これまで交わることのなかった六人が、同じ盤を囲む。


「なら——」


紅葉が口を開く。


「私も、お話しします」


空気が重くなる。


「一つだけ、皆さんは勘違いをしています」


來が顔を上げる。


「……勘違い?」


「はい」


紅葉は來を見つめた。


「理は、最初の存在ではありません」


「…………」


紅葉が続ける。


「その手を——」


僅かに、微笑んだ。


「私は知っています」


須藤邸の居間。


六人が囲む盤の上に——

始まりを知る者が、加わった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

『輪廻の瑕疵』は、毎日18:00に更新予定です。

※本作は「カクヨム」にも重複投稿しています。


もし「沙苗と來のコンビが良いな」「先が気になる」と思ってくださったら、

評価、ブックマークで応援いただけると、執筆の大きな励みになります。


そして、もうひとつの物語——

『SOUL TR@DE』も毎日18:00更新中です。


和風怪異とはまったく異なる、

魂と市場を巡る近未来ダークファンタジー。


あわせて楽しんでいただけたら嬉しいです。


今後ともよろしくお願いいたします。

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