第百二十八話 帰還
紫灰の空が止まる。
「──かはっ」
來の身体が崩れた。
黒刀から手が離れる。
——ドサッ——
片膝をつく。
緋色の灯火が明滅する。
脈動が乱れ——
光が消えていく。
「來っ!!」
沙苗が駆け寄った。
倒れかけた肩を支える。
「來……!」
「…………」
來の呼吸が荒い。
道源。
朱禰。
蒐。
三人の視線が集まる。
來が顔を上げた。
「……相手は、人間じゃない」
道源の眉が動く。
「……何が見えた」
來は裂け目のあった場所を見る。
「思想だ」
——ギリッ——
朱禰が扇を握る。
「須藤家は、始まりじゃない」
來が沙苗の肩を借りて立ち上がる。
「典膳も、明里も……」
息を整える。
「あの二人が縛られ続けた宿命は、結果だ」
「結果……?」
沙苗が來を見る。
「ああ」
來の視線が虚空へ戻る。
「世界を維持するために——」
拳を握る。
「あの二人は、最初から固定されていた」
誰も言葉を返さない。
「戻ろう」
來が歩き出す。
「考え直す必要がある」
道源が來を見る。
「俺たちには——まだ何も見えていない」
道源が頷いた。
朱禰が扇を閉じる。
蒐が煙草を咥えたまま踵を返す。
沙苗も來の隣を歩く。
夜道を進む。
——ザッ——
——ザッ——
草を踏む音。
草履が地面を擦る。
來の足が止まる。
「…………」
振り返った視線の先。
紫灰の裂け目はない。
空には何も残っていない。
「……來?」
沙苗が振り返る。
「…………」
肌を刺す感覚。
——見られている。
來が前を向く。
家路への帰り道。
もう二度と——
振り返らなかった。
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『輪廻の瑕疵』は、毎日18:00に更新予定です。
※本作は「カクヨム」にも重複投稿しています。
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