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輪廻の瑕疵  作者: 朔來 織
~灰鏡に咲く緋華~

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第百二十七話 思想

声ではなかった。


言葉でもない。


裂け目の奥から——

意味が流れ込む。


——ゾワッ——


來の背筋を悪寒が走った。


(……悪意じゃない)


典膳への憎悪。

明里への嫉妬。

須藤家への復讐。


そのどれでもない。


嫉妬や恨みなら理解できる。


だがこれは違う。


善悪すら存在しない。


あるのは——

揺るがない正しさ。


「……來……?」


沙苗が名を呼ぶ。

來は答えない。


紫灰の裂け目を見つめたまま動かない。


——ギリッ——


朱禰の扇が鳴る。


「……違う」


道源と蒐が朱禰を見る。


「來が何かを見ているのではない」


紫灰の空が蠢く。

色が沈む。


「何かが——」


道源が身構える。


「あの裂け目の奥から、來を見定めている」


蒐も裂け目へ視線を向けた。


空が歪む。


來の脳裏へ意味が刻まれた。


『二人は、交わってはならなかった』


來の眉が動く。


『あの二人の鎖が繋がれば、因果が狂う』


——ドクン——


『世界そのものが歪む』


——ドクン——


『だから切り離した』


紫灰の脈動が続く。


『最初から決まっていただけのこと』


來は裂け目を見据える。


狂っているわけではない。

嘘をついているわけでもない。


向こうにとっては——

それが秩序だった。


「……何故、二人でなければならなかった」


『必要だった』


即座に返る。


「誰のために」


『世界のために』


來の瞳が細くなる。

それで理解した。


悪党ではない。


二人を苦しめることが目的でもない。


世界を守る。


そのためなら——

二人の悲劇すら秩序になる。


幾年を経てもその理は変わらない。


緋色の灯火が脈打つ。

來は裂け目を見据えた。


「……ヒトを、何だと思っている」


二人の願い。


積み重ねられた痛み。


それらを理の都合で消費する。


「そんなもののために——」


紫灰が揺れる。


「ヒトを使うな」


——ギシッ——


空が軋んだ。


返答はない。


來は待つ。

紫灰の裂け目も動かない。


世界は——

初めて沈黙した。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

『輪廻の瑕疵』は、毎日18:00に更新予定です。

※本作は「カクヨム」にも重複投稿しています。


もし「沙苗と來のコンビが良いな」「先が気になる」と思ってくださったら、

評価、ブックマークで応援いただけると、執筆の大きな励みになります。


そして、もうひとつの物語——

『SOUL TR@DE』も毎日18:00更新中です。


和風怪異とはまったく異なる、

魂と市場を巡る近未来ダークファンタジー。


あわせて楽しんでいただけたら嬉しいです。


今後ともよろしくお願いいたします。

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