↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻の瑕疵  作者: 朔來 織
~灰鏡に咲く緋華~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
118/158

第百十五話 残傷

第百十五話 残傷


世界はまだ歪んでいた。


遠くの街並みが揺れる。


——スゥッ——


色が抜ける。


白く透けまた戻る。


空には一つの月。


その輪郭は滲み。

夜の色も戻らない。


「……あ、つ……」


沙苗が腕を見る。


「…………」


真っ赤に腫れていた。

紅葉を抱きしめた両腕。


——ジリッ——


焼けるような痛みが走る。


「沙苗……大丈夫なの?」


柚が恐る恐る近付く。


「平気、平気……」


沙苗が袖を引く。

赤く腫れた腕を隠す。


「ちょっと、日焼けしただけよ」


「…………」


柚が眉を寄せる。

沙苗は笑っている。


その肩が小さく震えた。


——チカッ——


視界が緋色に染まる。


「……っ」


——カチッ——


耳の奥。

時計の音が鳴る。


——カチッ——


「…………」


道源が沙苗を見る。


その足元は崩れない。


世界が歪んでも——

そこだけは動かない。


「……理より優先される我、か」


「…………」


道源の声が落ちる。

來が黒刀から手を引く。


「……紅葉」


「…………」


「帰るぞ」


紅葉がゆっくりと振り返る。


灰色の瞳。


その奥に——

緋色が揺れていた。


「はい……」


紅葉が微笑む。


「帰りましょう」


いつもの笑顔。


穏やかで。

優しい。

——ユラッ——


指先の輪郭が揺れた。

沙苗がその手を見る。


「…………」


紅葉は戻った。


だが、世界はまだ彼女を受け入れていない。


——ザッ——


紅葉が一歩を踏み出す。

足元に影が落ちる。


「…………」


紅葉が止まる。


影だけが動いた。


——ユラッ——


別の方向へ伸びていく。


「……?」


紅葉が小首を傾げる。

自分の影を見る。


「……うん?」


影が止まる。


紅葉はしばらく見つめ——

いつものように微笑んだ。


その足元。


影だけが——

僅かに揺れていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

『輪廻の瑕疵』は、毎日18:00に更新予定です。

※本作は「カクヨム」にも重複投稿しています。


もし「沙苗と來のコンビが良いな」「先が気になる」と思ってくださったら、

評価、ブックマークで応援いただけると、執筆の大きな励みになります。


そして、もうひとつの物語——

『SOUL TR@DE』も毎日18:00更新中です。


和風怪異とはまったく異なる、

魂と市場を巡る近未来ダークファンタジー。


あわせて楽しんでいただけたら嬉しいです。


今後ともよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。