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輪廻の瑕疵  作者: 朔來 織
~灰鏡に咲く緋華~

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第百一話 神算鬼謀

第百一話 神算鬼謀


沙苗の掌。


緋炎が——

首輪を包む。


——ボッ——


「……っ」


朱色が燃える。


——カッ!!——


「っ!?」


炎が——

白へ変わった。


眩い光。

首輪から溢れた白炎。


——ジュッ——


灰色が消えた。


「……え?」

白炎が——

広がっていく。


——ゴォォォォォッ!!——


灰色を焼く。


空を。

地面を。

霧を。


世界を覆っていた色が——

剥がれていく。


「沙苗!」


朱禰の声。


「これ……!」


「分からない!」


白炎の向こう。


緋色が——

溢れた。


——ボウッ!!——


焼かれた灰色へ。


緋色が——

色を戻していく。


「……っ」


沙苗が目を閉じる。


光。

白と緋色。


すべてが——

呑み込まれた。


「…………」


沙苗の耳が動く。


——サァァァ——


「……風?」


頬を撫でる。


「……」


息を吸う。


花の匂い。

土の匂い。


そして——


「……お酒?」


微かな酒の香り。


「……」


沙苗が目を開けた。


「ここ……」


灰色ではない。


崩れた壁。

裂けた畳。

折れた柱。


庭には——

戦いの跡。


「……須藤邸」


蒐が呟く。


「戻ったんか……?」


「……」


朱禰が周囲を見る。


その瞳が——

止まった。


「……嘘」


「朱禰さん?」


「沙苗」


震える声。


「あれ……」


「え?」


朱禰の視線を追う。


荒れ果てた縁側。


そこに——

一人。


「……」


男が座っていた。


朱色の羽織。


背筋を伸ばし——

月を見ている。


「……見てみろ、沙苗」


「……っ」


聞き覚えのある声。


だが——

若い。


「いい月だろう?」


男が盃を掲げる。


朱色の盃。


注がれているのは——

『鬼殺す』


「……」


——グイッ——


一息に呷る。


「ぷはっ」


——コトッ——


盃を置いた。


「遅かったな」


「……」


沙苗の瞳が——

見開かれる。


「お前ら」


男が振り返った。


「……え」


沙苗の声が——

消える。


老人ではない。

白髪でもない。

皺もない。

精悍な顔。

鋭い瞳。


そして——

不敵な笑み。


「……父……さん?」


「おう」


「……」


「なんだ」


男が笑う。


「随分と間抜けな顔になったな、沙苗」


「…………」


朱禰の扇が——


——パサッ——


手から落ちた。


「……兄……さん?」


「久しいな、朱禰」


「……」


朱禰が動かない。


「な……」


沙苗が一歩踏み出す。


「なんで……父さんが……」


「ん?」


男は首を傾げる。


「だって……」


沙苗の声が震える。


「死んだじゃない!!」


「死んだぞ」


「じゃあ何でいるのよ!!」


「いるからだ」


「答えになってない!!」


「ははははっ!」


男が笑う。


傲慢に。

楽しそうに。


何もかも——

計画通りだったかのように。


須藤家史上。


最も異端で。

最も呪いに抗った。


そして——

誰よりも先を見続けた男。


須藤道源。


その全盛期の姿が——

そこにある。


「まあ」


道源が酒を注ぐ。


——トクトクトク——


「立ち話もなんだ」


「……」


朱色の盃を掲げる。


その瞳には——

シンと同じ色が宿っていた。


「ようこそ」


口角が上がる。


「現世へ」


「……」


——コトッ——


道源が笑った。


「で?」


「……何よ」


「面白かったか?」


「…………」


沙苗のこめかみに——

青筋が浮かんだ。


「この……」


拳を握る。


「クソ親父ぃぃぃぃぃっ!!」


「あはははははっ!!」


月の下。


三十年前の姿で——


神算鬼謀の鬼才が——

腹を抱えて笑っていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

『輪廻の瑕疵』は、毎日18:00に更新予定です。

※本作は「カクヨム」にも重複投稿しています。


もし「沙苗と來のコンビが良いな」「先が気になる」と思ってくださったら、

評価、ブックマークで応援いただけると、執筆の大きな励みになります。


そして、もうひとつの物語——

『SOUL TR@DE』も毎日18:00更新中です。


和風怪異とはまったく異なる、

魂と市場を巡る近未来ダークファンタジー。


あわせて楽しんでいただけたら嬉しいです。


今後ともよろしくお願いいたします。

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