最後の8分
3クォーター最後の攻撃は確かに通ったハズだ。しかし点数が入ることはなかった。
「くそ............ちょっと遅かった」
「どんまい絵馬。ナイシュ」
絵馬がボールを放つ前にタイムアップしたと審判が判断したのだった。
悔しそうに拳を握る絵馬を三春が励まし、両チームベンチへ戻ってくる。
「みんなお疲れ!最後の攻撃惜しかったよ!」
さすがに疲労が隠せなくなってきたメンバーをアリサが明るく迎え入れる。
全員の渾身のプレイで繋いだシュートがノーカウントとくれば仕方のないことかもしれないが............
「さっきの一連のプレイ............あの4番がパスコースをズラしたんだな。そんで絵馬が取るのが遅れたんだ」
「あれ?ヒゲせんせー、同じこと考えてた?」
「まーな」
俺の独り言を拾ったのは、ラストワンプレイを千夏と対面していた刹那だった。
ベンチから見ていてほんの少し違和感を感じる程度だったが、実際コートにいた刹那の言葉が答え合わせになった。
「それにしても相手のキャプテン、すげーディフェンスだったなぁ。あたしがずっとマッチアップするってなったら最後まで保たないや!」
「キャプテンと絵馬先輩ってほんとに凄いんだね............」
とはいえ、素人目線からすれば刹那も充分に良いプレイヤーと思える活躍だ。つい最近まで小学生だったと言うのに、中学三年生の強豪校キャプテンを相手にボールを奪われず役割を遂行できた(タイムオーバーしてしまったが)のだから。
「心、ゴール下は大丈夫?」
「うん、今のところは。でもあの6番、尻上がりに強くなってきてるから............油断はできない」
三春と心が話している時、アリサが俺の方へやってきた。
「先生、やっぱり4クォーター最初から出してください。私、もうやれます!」
「ダメだと言ったらダメだ。ほんとにぶっ壊れたいのか」
外から見ていてプレイしたくなる気もわからなくもないが、アリサは出た途端全力で走り回るハズだ。一度ケガした足で8分も保つわけがない。
「..................わかりました」
渋々とアリサがベンチに腰掛けると、4クォーター開始前のブザーが鳴った。
「さあ、行こうか!あと8分!」
心が自身の頬をパチンと叩いて気を引き締める。両チームの性質上、センターは影を潜めがちだが、ゴール下では苛烈なポジション争いが毎度繰り返されている。リバウンド対決は常にクライマックスだ。
絵馬や小春たちがコートへ出ていくなか、心は最後にベンチに残ってアリサへ言った。
「アリサ、待ってるから」
滝蓮の未来を決める練習試合。最後の8分が今、始まった。




