第11話 役割分担
神力の初期調査が終わったあと、リビングには妙な沈黙が残った。
さっきまでの空気とは違う。
透子が遠くの様子を感じ取れると分かった時は、まだ驚きの方が大きかった。
詩乃が水を植物に変えた時は、全員が目を丸くした。
莉子が結界らしきものを張った時には、疲れ切った本人を見て慌てた。
そして紗良だけが、今のところ何も起こらなかった。
結果だけ見れば、この家には千咲を含めて四人の神力持ちがいる。紗良も未発動なだけで、何か条件がある可能性は高い。
つまり、この家はただの女子五人の避難場所ではない。
神力持ちが集まった拠点だ。
そして、それは強みであると同時に、危険でもあった。
「……燈真くん」
最初に口を開いたのは千咲だった。
「これ、外には絶対言わない方がいいやつ?」
「言わない方がいい」
俺は即答した。
「絶対?」
「絶対に近い」
「そこまで?」
「ああ」
千咲は小さく息を吐いた。
普段なら「うわー、こわ」と軽く流すところだろうが、今回は違った。さっきまでの興奮が少し冷め、自分たちの状況をようやく理解し始めている顔だった。
俺はノートを開いたまま、五人を見る。
「まず、神力は便利だ。これは間違いない。千咲のハサミは通信手段になる。透子は索敵に使える。詩乃は水を植物に変えられる。莉子は防御に使える可能性がある」
「私は?」
紗良が手を上げる。
「紗良は未判明」
「未判明担当かあ」
「落ち込むな。発動条件が違うだけかもしれない」
「慰め方が研究者」
「慰めてるわけじゃない。事実だ」
「なおさら研究者」
紗良は少し笑ったが、目の奥には不安が残っていた。
全員が何かを見つけていく中で、自分だけ何も起きない。
それは焦るだろう。
だが、焦って危険な実験をする方がまずい。
「話を戻す。便利なものは、欲しがられる。水、食料、火、家、情報。それと同じで、神力持ちも欲しがられる」
莉子が眉をひそめた。
「人間なのに?」
「人間でもだ」
「……最悪」
「最悪だが、今の街はもうそうなり始めている。千咲も見ただろ。神力持ちを探している連中がいる」
千咲は黙って頷いた。
「避難所で聞き回ってた人たちね。火を出せる人いませんか、水を探せる人いませんか、怪我を治せる人いませんか、って」
「最初は善意でも、そのうち変わる。協力してほしい、から、協力しろ、になるかもしれない」
詩乃の顔が青くなる。
「そんな……」
「なると決まったわけじゃない。ただ、想定はしておけ」
「はい……」
透子がぽつりと言う。
「神力持ちはレアアイテム扱い?」
「言い方は最低だが、近い」
「そっか。じゃあ隠密行動だね」
「そうだ。だからまず、この家のルールを決める」
俺はノートの新しいページを開いた。
上に「拠点ルール」と書く。
五人がそれを覗き込むように身を乗り出した。
「一つ。神力の内容は外で話さない。避難所でも配布所でも、近所でもだ」
千咲が手を上げる。
「私のハサミはもう何人か知ってる」
「どこまで知られてる?」
「ハサミを出せること。ハサミでちょっと話せるかもってこと。全員じゃないけど、何人かには見せた」
「……もう遅い部分はあるな」
「ごめん」
「謝っても仕方ない。今後は見せる相手を絞れ。できれば、ただのハサミとして使え。通信機能は伏せる」
「分かった」
「二つ。能力を使う時は、最低一人は周囲を確認する。見張りなしで実験しない」
透子が小さく手を上げる。
「それ、僕の仕事?」
「基本はそうなる。だが、透子一人に依存しない。神力を使いすぎれば疲れる。普通の見張りも必要だ」
「了解。索敵担当兼、見張り担当」
「ただし、無理に長時間使うな。目が重くなったらすぐ休め」
「ゲームのやりすぎと同じ?」
「似ているかもしれない」
「分かりやすい」
「三つ。水、食料、火は記録する。誰がどれだけ使ったかまでは細かくなくていいが、残量は把握しろ」
詩乃が緊張したように手を上げる。
「あの、水の管理は私がした方がいいのでしょうか。家のものですし」
「できるか?」
「やってみます。今まで、そういう管理はあまり……」
「なら千咲か莉子と一緒にやれ。一人で抱えるな」
「はい」
千咲が笑う。
「じゃあ私、詩乃と水係やる。外から情報も集めるし」
「お前は外に出すぎるな」
「えー」
「ハサミで通信できるお前が一番外に出る必要があるのは分かる。だが、千咲がいなくなるとこの家の連絡手段が消える。むやみに動くな」
「燈真くん、私のこと過保護?」
「違う。機能として重要だと言ってる」
「機能扱いされた」
「神力持ちは資源扱いされると言ったばかりだろ。自分でもそう見る癖をつけろ」
千咲は苦い顔をした。
「自分を資源として見るの、やだね」
「俺も嫌だ」
「でも必要?」
「必要だ」
俺はノートに書き続ける。
「四つ。莉子の結界は緊急用。試しに何度も使うな」
「分かってるわよ」
莉子はまだ少し疲れた顔をしていた。
ほんの一瞬使っただけで、あれだけ消耗した。現状では常用できる能力ではない。
「結界の範囲、強度、持続時間、対価は後で少しずつ調べる。ただし今日はもう使うな」
「……うん」
素直に頷いたのは意外だった。
よほど疲れたのだろう。
「五つ。詩乃の植物は食べる前に確認する。知らない植物は絶対に口に入れない」
「はい」
「水を消費するから、実験量も制限する。今は毎日少量だけだ」
「分かりました」
詩乃はコップの中の小さな植物を見つめていた。
水から生まれた小さな芽。
あれが何なのかはまだ分からない。
食べられるのか、毒なのか、育つのか、枯れるのか。水の量と植物の大きさに関係があるのか。詩乃の意思がどこまで反映されるのか。
調べることは多い。
「六つ。紗良は焦らない」
「私だけルールが精神論」
「発動していない能力を無理に出そうとすると危険だ。条件を探す。歌、演奏、聞き手、感情、場所。順番に試す」
「……うん。分かった」
紗良は笑った。
けれど、さっきより少しだけ安心したようだった。
「未発動は失敗じゃない。情報不足だ」
「燈真くんって、たまにいいこと言うね」
「たまにか」
「だいたい怖いこと言うから」
「それは否定しない」
紗良は小さく吹き出した。
少しだけ空気が緩む。
俺は最後にノートへ線を引いた。
「七つ。この家を拠点として維持する。だが、逃げ道も決める」
全員の表情が変わった。
千咲が問い返す。
「逃げ道?」
「ああ。ここが襲われる、火事になる、近所にバレる、食料が尽きる。そういう時にどこへ逃げるか決めておく」
「そんなことまで?」
「決めておかないと、いざという時に詰む」
莉子が腕を組む。
「でも、どこに逃げるのよ」
「まずは近場の一時避難場所。次に、数時間以内に行ける場所。最後に、長期的に移る候補地。三段階で考える」
「燈真くんの拠点は?」
千咲がさらっと聞いた。
「候補に入れない」
「即答」
「水量が足りない。そもそも場所を教えないと言った」
「ちぇ」
「ちぇ、じゃない」
千咲は肩をすくめた。
半分冗談、半分本気。
そういう顔だった。
やはり、こいつは油断できない。
悪人ではない。
だが、欲しいものは欲しいと言う。
それが千咲の強さであり、危うさでもある。
ルールを決めたあと、俺たちは家の確認に移った。
まず玄関。
鍵は生きている。
電気錠ではなく普通の鍵だったのは幸いだ。
ただし、ガラス部分があるので強く叩けば割られる可能性がある。
「ここに棚を動かすか?」
莉子が言う。
「完全に塞ぐな。出入りできなくなる」
「でも割られたら?」
「割られた時に時間を稼げればいい。棚を斜めに置いて、開けにくくする。非常時には内側から動かせる重さにする」
「面倒ね」
「防犯は面倒なものだ」
次に窓。
一階の窓は多い。
大きい窓もある。庭に面した掃き出し窓は特に危険だ。
詩乃の家は広いが、広い家は守る場所も多い。
「ここ、雨戸は?」
「あります。ただ、普段あまり閉めていなくて」
「夜は閉めろ。昼も必要に応じて閉める。ただし全部閉めると中が暗くなる。外から生活していると分かりにくくする場所と、見張り用に開ける場所を分ける」
透子が庭を見ながら言う。
「見張りポイントは二階の窓がいいかも。道路が見える」
「後で確認する」
「高所有利」
「そうだな」
ゲーム知識が妙なところで役に立つ。
次に二階。
女子たちの部屋があるので、俺は廊下までしか入らなかった。
部屋の中は本人たちに確認してもらう。
窓の位置。
隣家との距離。
屋根伝いに入れる場所があるか。
ベランダ。
見張りに使える場所。
莉子が少し意外そうに見ていた。
「本当に部屋には入らないのね」
「入る必要がない」
「……ふーん」
「不満そうにするな」
「別に不満じゃないわよ。ただ、ちょっと意外だっただけ」
「この状況で女子の部屋にずかずか入る男の方が危険だろ」
「それはそう」
莉子は少しだけ口元を緩めた。
警戒が薄くなった、というより、評価基準の一つを通過したという感じだろう。
それでいい。
信用は一気に作るものではない。
積み重ねるしかない。
二階の窓から外を見ると、住宅地の様子がよく見えた。
道を歩く人はまばらだが、昨日より確実に増えている。
ポリタンクを持つ人。
リュックを背負った若者。
自転車を押す家族。
どこかへ移動しようとしている人々。
電気が消えてから、まだ数日。
それなのに、人の動きはもう変わっている。
「透子」
「なに?」
「この窓から見張りをする時、神力は常に使うな。普段は目で見る。違和感があった時だけ使う」
「了解。パッシブじゃなくてアクティブスキル」
「たぶんそうだ」
「便利だけどMP消費あり」
「MPと言うな」
「神力ポイント?」
「略すな」
透子は相変わらずだった。
だが、能力の扱いについては理解が早い。
見張り役には向いている。
一通り家を確認したあと、俺は役割分担を書き出した。
千咲、外部連絡・交渉・ハサミ通信。
透子、見張り・索敵。
詩乃、水管理・物資管理補助・植物実験。
紗良、生活記録・雰囲気維持・音の能力調査。
莉子、防犯確認・緊急時結界。
燈真、火・調理・神力記録・拠点改善。
書き終えた瞬間、紗良が笑った。
「雰囲気維持って何?」
「昨日のギターは、少なくとも全員の気分を少し上げた。メンタル維持は重要だ」
「おお、正式採用された」
「ただし、夜に大きい音は出すな。外に聞こえる」
「そこは現実的」
「現実だからな」
詩乃が控えめに手を上げた。
「あの、私、物資管理ができるか分かりませんが」
「最初は数えるだけでいい。水が何本、米がどれだけ、缶詰が何個。毎日減った量を書く」
「書くのですね」
「そうだ。感覚で管理するとすぐなくなる」
「分かりました。やってみます」
詩乃の声には、少しだけ力があった。
足手まといだと思っていた少女に、役割ができる。
それだけで表情が変わる。
俺はそれを見て、少しだけ胸の奥が重くなった。
誰かに役割を与えること。
それは助けることに近い。
俺は他人を助けるためにここへ来たわけではない。
それなのに、結果的にそうなっている。
自分で決めたルールが、自分を縛っていくような気がした。
「燈真くん」
千咲が横から覗き込む。
「私、外部交渉ってことは、今まで通り声かけしていい?」
「条件付きだ」
「条件?」
「一人で行くな。透子の索敵で周囲を確認してから動け。相手にこの家の場所を悟られるな。神力持ちだと確信させるな」
「注文多い」
「それくらいしないと危ない」
「でも、情報集めないとでしょ?」
「ああ。だから止めはしない」
千咲の情報網は必要だ。
東京方面の情報。
神力持ちの噂。
危険なグループ。
配布場所。
水場。
若者の動き。
俺一人では集めきれない。
だが、千咲が外を動けば、それだけ危険も増す。
「今日は外に出るな」
「えー」
「今日はこの家の整理と、能力の記録が優先だ。情報収集は明日からでいい」
「分かったよ」
千咲は不満そうだったが、引いた。
意外と、必要なところでは聞く。
その日の昼は、残り物と米で簡単に済ませた。
火を使えるだけで、調理の幅はかなり広がる。
ただし、俺の神力を使い続けるのもよくない。
マッチや火打ち石も併用し、神力は最初の着火や急ぎの時だけにする。
「燈真くんがずっと火を出せばいいんじゃないの?」
紗良が何気なく言った。
「駄目だ」
俺は即答した。
「なんで?」
「神力は消費する。使いすぎれば倒れる可能性がある。俺が倒れたら、火に依存した生活ごと崩れる」
「そっか」
「だから、俺がいなくても回る方法を作る。マッチ、火打ち石、火種の保存、調理のまとめ作り。全部必要だ」
「一週間だけだもんね」
紗良の言葉に、部屋が少し静かになった。
俺は一週間で帰る。
それは最初に言ってある。
ここは俺の居場所ではない。
帰る場所は澪奈のいる山の水場だ。
そして、その先には家族の問題がある。
父と母が東京から帰ってこない理由。
京都にいる妹との連絡。
東京方面の封鎖らしき噂。
俺がここで女子五人の拠点改善をしている間にも、それらは何一つ解決していない。
忘れてはいけない。
「一週間で、俺がいなくても最低限回る形にする」
俺は言った。
「それが目標だ」
莉子が少しだけ不満そうに言う。
「一週間後、本当に帰るの?」
「帰る」
「……そう」
「最初からそういう約束だ」
「分かってるわよ」
莉子はそっぽを向いた。
千咲も黙っていた。
透子は「期間限定イベント」と呟き、紗良は苦笑し、詩乃は少し寂しそうに目を伏せた。
空気が重くなりかけたので、俺はノートを閉じた。
「午後は倉庫と台所を整理する。使える道具を全部出すぞ」
「うわ、忙しい」
千咲が言う。
「忙しくする。暇だと不安になる」
それは俺自身のことでもあった。
考え込むと、余計なものが追いついてくる。
他人を助けるべきか。
家族を優先すべきか。
自分の火をどこまで使うべきか。
東京はどうなっているのか。
俺は何をするべきなのか。
そういう問いから逃げるように、俺は作業を進めた。
倉庫には、思ったより使えるものがあった。
古い工具箱。
ロープ。
ブルーシート。
園芸用の支柱。
軍手。
未開封の炭。
着火剤。
手回し式の古いラジオ。
ただしラジオは電気がないので使えない。
手回し発電もおそらく無理だろう。
俺はそれを見て、少しだけ手を止めた。
手回し発電機。
発電。
電気。
もし俺の神力が、火や風だけでなく、エネルギーの形を変えられるものなら。
電気も再現できるのではないか。
その考えは、何度も頭をよぎっている。
だが、試すには危険すぎる。
感電。
機器の故障。
暴発。
それに、もし成功すれば。
俺はただ火を出せる人間ではなくなる。
電気を失った世界で、電気を生み出せる人間になる。
その意味を考えるだけで、背筋が冷える。
「燈真くん?」
詩乃の声で我に返った。
「どうかしましたか?」
「いや。これは今は使えない」
俺は手回しラジオを箱に戻した。
「今は?」
「……いつか使えるかもしれない」
「そうなのですか?」
「分からない」
分からない。
今はそれでいい。
電気の実験は、まだ早い。
この家でやるべきではない。
少なくとも、澪奈と相談してからだ。
午後いっぱい使って、物資の整理と防犯の準備を進めた。
透子は見張り位置を確認し、詩乃は水と食料を数え、紗良は紙に役割表を書き、莉子は窓の鍵と家具の配置を確認し、千咲は全員に指示を飛ばしたり茶化したりしながら動いた。
俺は火を使い、湯を作り、調理をし、必要な場所に道具を配置した。
気づけば、家の空気が少し変わっていた。
ただ不安に固まっていただけの女子五人の家が、少しずつ拠点らしくなっていく。
それは達成感に近かった。
同時に、嫌な感覚もあった。
俺が関われば、何かが改善する。
火を灯せば、食事ができる。
ルールを作れば、少し安全になる。
役割を決めれば、誰かの表情が変わる。
その事実が、俺に問いかけてくる。
じゃあ、もっと多くの人間にも同じことをするべきではないのか。
街には、もっと困っている人がいるのではないか。
東京には、もっと多くの人がいるのではないか。
その声を、俺は無理やり押し込めた。
俺は救世主じゃない。
俺は家族を優先する。
それでいい。
いいはずだ。
夕方、ハサミで澪奈に連絡を入れた。
『燈真?』
「ああ。二日目も問題ない」
『よかった。そっちは?』
「能力調査をした。透子は遠視か索敵。詩乃は水を植物に変える。莉子は結界。紗良は未発動」
『え、みんなすごくない?』
「すごい。だから危ない」
『そっか……』
「この家は神力持ちの拠点になりかけてる。知られたら面倒だ」
『燈真、また大変なところに首突っ込んでない?』
「突っ込んだ気はある」
『気じゃなくて、突っ込んでるよ』
「否定はしない」
澪奈が小さく息を吐く音がした。
『でも、燈真が必要だと思ったんでしょ』
「情報のためだ」
『うん』
「家族のために、東京方面の情報も必要だ」
『うん』
「だから、他人を助けるためじゃない」
少し沈黙があった。
やがて、澪奈は静かに言った。
『そういうことにしておくね』
「……どういう意味だ」
『そのままの意味』
「澪奈」
『ちゃんと帰ってきてね』
「ああ」
通信が切れた後、俺はしばらくハサミを見ていた。
澪奈は、たぶん俺より俺のことを見ている。
それが少し面倒で、少しありがたかった。
夜。
紗良が小さな音でギターを弾き、透子が二階の窓から外を見て、詩乃が水の残量表を書き、莉子が玄関の鍵を確認し、千咲がハサミを磨いていた。
俺はリビングの隅でノートを開く。
この家は少しずつ回り始めている。
だが、それは同時に、この家の価値が上がるということでもある。
価値が上がれば、狙われる。
だから、もっと備えが必要だ。
一週間で、どこまでできるか。
俺は鉛筆を握り、次のページに書いた。
目標。
一、火に依存しすぎない調理体制。
二、水と食料の記録。
三、見張りと逃走経路。
四、神力使用ルール。
五、東京方面の情報収集。
六、一週間後に帰る。
最後の行だけ、少し強めに書いた。
一週間後に帰る。
ここに残り続けるわけにはいかない。
澪奈が待っている。
家族のこともある。
俺は、他人のために自分の目的を見失うわけにはいかない。
そう思いながら、俺はノートを閉じた。
しかしリビングを見渡すと、五人はもう昨日とは違っていた。
役割を持ち、少しだけ前を向き、明日やるべきことを話している。
その変化を見てしまった以上、俺はもう完全に無関係な他人だとは思えなくなっていた。
それが、一番面倒だった。




