コツコツ積み重ねのゲーム
「よぉ〜し、それじゃあゲームを進めていこうか!」
「……むぃ」
掘立て小屋の前で拳を突き出す幼女が二人……どーも私と幼女ちゃんです!
いやね、私達としては『工場』を建てて、しばらく維持することが目標なワケなんだよ。
そうすることで工場に対応した能力が『おくるみシャボン』に追加されるからね。
「でもここがちょっと大変……」
工場の設計図はあるんだけど、その設計図に必要な素材や機械がサッパリ知らない物なんだよね。
「おそらく、この序盤では手に入りにくい素材が必要っぽいね」
「……このミケライト鉱石……これを精製するためには、リバース分離器が必要。そして、このリバース分離器を作るのにも、別の道具が必要……そしてその道具は見たことがない……」
幼女ちゃんが工場の設計図を見て頭を抱える。
たぶんこの工場の作成難易度が、追加能力の難易度って事なんだろうね。そう考えると『お風呂工場』の要求数的に風呂は大変ってことか……。
まぁアレよ……しばらくはこの『インダストリークラフト』のゲームを楽しめってことね。
「じゃあ姉さ〜〜ん! 私ら出掛けてくるんで!!」
私が大声を出して、仮設ダンス練習場にいる尻軽女に声をかけると、尻軽女は手をシッシッと払いながら答えてくる。
こ、コイツ散々私らに要求してきたくせに、用済みになったら視界から消えろみたいな態度取るんだけど!
まぁいいや、視界に入れたくないのはお互い様だし。
「んじゃ、幼女ちゃん。何から始めようかね?」
「……ぬ。取り敢えずはあたりの確認。ゲームがアップデートしてマップが機能してない」
あ、本当だ。真っ黒になってる。このインダストリークラフトなんだけど、箱庭シミュレーターのせいで元のゲームから要素が変わってる部分もあるんだよね。
どこがどう変わったかは分からないけど、マップもそのせいかな?
「真っ黒なマップに、一ヶ所だけ何か表示されてんね」
「……いってみよう」
はい、テクテクと移動……歩くとちと遠いな!
草原を歩きながら移動していると、岩場に差し掛かる。
「……ぬ、新しい素材か?」
幼女ちゃんが地面から突き出している、オレンジ色の鉱石にツルハシを振り下ろす。
「ほうほう? 『バンカー鉱石』初めての素材だね。あ、初めての素材を手に入れると簡易的な詳細が見れるようになるのか……」
「……これ、前に拾った設計図に使う素材だ」
「へぇ、何が作れるの?」
「……『フリーサイクル』だって。移動用の道具みたい」
バイクみたいな乗り物か! この広大なフィールドを移動するのに是非手に入れたいね!
でも幼女ちゃんは、そのオレンジ色のバンカー鉱石を放り投げて捨ててしまった……。
「……今はまだ、作るのに他の素材が足りない。加工する機械もない。インベントリを圧迫するから、いつでも手に入る素材は置いていく」
「あーなるほど、確かにインベントリの空きがカツカツだもんねぇ……」
たぶんインベントリを拡張するシステムもあるんだろうけど、今のところ分からんね。
そして、真っ黒マップに記された場所へとやってきた。そこには……。
「なんだこれ……石碑?」
よく分からん文字の書かれた石碑だ。ペタペタと触ってみるとポップアップされて素材を要求される。これを持ってこいって感じ?
「あ〜、ちょっと待って。ヘルプが出たわ? 『ポータルステーション』……ふぁ! 幼女ちゃん! これ集めるよ!」
これ広大なゲームには付き物のシステム!
「ファストトラベルだよ! これを起動できれば、次からココに一瞬で来れるようになる!」
「……移送核!? 必要!」
移送核って……あぁ、ワープ装置ってあの世界にもあるもんね。キモノお嬢の時に使ったやつ。
「……必要素材は?」
「え〜っとね。…………『バンカー鉱石』10個……」
「「………………」」
おい……バンカー鉱石ってさっきのオレンジ鉱石だろ……。
「…………戻るぞ!」
「拾っときゃ良かったんだよ馬鹿野郎!!」
「……結果論でしょ!」
――――――――――――――――――――――――
「「はぁはぁはぁはぁ」」
はぁ〜い、岩場に戻ってバンカー鉱石集めて来ましたぁ……。うん、見事な二度手間!
まぁゲームには有りがちよねぇ。でも現実になったらこの二度手間が大変やねん。
まぁこのポータルステーションみたいなワープ装置で解消されていくよね?
「よし起動! これで拠点から直ぐに飛んで来れるようになったね!」
「……ぬ。戻るのも出来るみたいだから帰りも楽」
よしよし、これで遠出しても直ぐに帰ることが出来るぞ。
「お、このポータルを起動したら、マップが少し解禁されたね」
「……ってことは各地にコレがあるだろうから、起動して回れば楽になるね」
「うむ! で……あれどーするよ?」
私が指さしたのは、崖の斜面にポッカリと空いた洞窟。明らかにダンジョンって感じだよね?
「……まぁ見てみよ」
洞窟に足を踏み入れると『レベル 3』と表示される。ふむ、これはダンジョンの推奨レベルって感じかなぁ。たぶん低いランクのダンジョンだろ。
頭のヘルメットに付いたライトを付けて洞窟を進むと、壁の様子が変わった。
岩場の壁から、近未来の通路みたいな鉄製の物に。
「お、ちょっとこういうのワクワクすんね。古代の滅んだ研究所みたいで」
そして奥まで行くと、サビた鉄扉が現れる。
ふむ、鍵は掛かってないか……。入ってみましょ!
「お、思ったより明るい」
「……あ、モンスター出てきた」
おっと、出てくるよねそりゃ。
モンスターは三体の四足トカゲ。
「……オバケ姉ちゃん!」
「サンキュー!」
幼女ちゃんがインベントリから、弓矢を取り出して私に渡してくる。そして自分はデカいハンマーを取り出していた。キミ、ハンマー気に入ってんの?
トカゲの攻撃と幼女ちゃんのハンマーが同時にカチ合う。
「……ぬ」
どうやらどっちもノックバック付きのようで、お互いが後ろにフワリと吹っ飛んだ。
よし、幼女ちゃんにターゲットが向いている隙に私が弓矢でチクチク戦法だ!
「セイヤ!」
「……ぬぉ〜!」
見事に幼女ちゃんの背中にブッ刺さったわ……。
「………………」
「ご、ゴメンて……」
背中に矢を生やしたハリネズミ幼女が首だけグリンと振り向く。ふ、フレンドリーファイアはないから。見開いた目が怖い……おっかしいなぁ……。ちゃんと狙ったと思ったのに。
それに弓を引いて撃つまでに時間が掛かるね。ゲームシステムが邪魔してんのか?
「シッ!」
ははぁ……なるほど。弓を引いて、少し溜めないとブレがあるのか。
まぁたぶん。弱いモンスターだったんだろうね。
なんとか三体のモンスターを倒せたわ。
「ん〜経験値入ったね。でもレベルアップはしないのか」
少しヒントを見てみるか……。
「あ〜分かった分かった。これ自分で経験値を振り込んでレベルアップさせるシステムだ」
んで上がるのは体力とスタミナだけ。
このゲーム、レベルアップで『スキルポイント』が手に入るからソレを振り分けていくことで、ガラリとプレイスタイルが変わるのね。
「……ぬ。わたしは『自動回復 レベル1』と『クイックステップ レベル1』に振った」
「ん〜私は何にしようかな? 自動回復欲しいね」
ビルドってやつだね。
しかし、死ぬほど項目が多いから全部見てらんねぇぞ。まぁでも……こういうの見てるとワクワクするよね!
「クラフト項目もあるなぁ……どしよ」
「……クラフト関係は最初はいいんじゃない? 戦闘方面にふっとけば?」
確かに! 結局は振ることになるんだろうけど、最初は戦闘に振って安定させるのが良さそう!
「いや待て! クラフトのスキルツリーに『回復薬の投擲』ってのがある!」
「……ほう」
これがあれば、幼女ちゃんに回復薬をぶん投げて回復できるっぽい。今はスキルポイントが足りないから取れないけど、私は取り敢えずコレを目指してみよう。
ダンジョンを進んで最深部には、宝箱が置いてあった。あんまり深いダンジョンじゃないのかな?
まぁレベルも低かったしね。
「よぉ〜し、お楽しみタイムだ。にひッ」
「……ぬひひ、わくわく」
いいもん入ってろよ! 宝箱の中身は〜〜…………
「『基盤データ』?」
え? データ?
いきなりデータという形の無い物が入ってたんですけど……。
「……たぶん、工業に使うものなんじゃない?」
「ん〜、今は使わない物かぁ。あ、これだけじゃないね。設計図が何個か入ってた」
新しい『弓矢』と『長剣』……そして『シチューのレシピ』の設計図か。
あとは、使うとスキルを覚える『本』ね。
「現物じゃねぇのはガッカリだけど……たぶん有用ではありそう?」
「……設計図はだいじ」
そうだね。設計図は大事っぽい。
「じゃ一旦拠点に戻って、拾った荷物置いてこようか!」
帰りはポータルステーションで一瞬だから楽だね。
――――――――――――――――――――――――
「幼女ちゃ〜ん! 畑の薬草出来てる?」
「……できてる」
拠点の前に出来た畑で、スプリンクラーの回る光景を見ていた幼女ちゃんに声をかける。
ゲーム内で数日経過しました!
「オケ! じゃあ回復薬をクラフトしたら出発しようか!」
このゲームにも大体慣れてきた感じあるよ。
武器はどうやら一つに絞って使うより、複数使える方が良いっぽいんだよね。
モンスターの弱点が大きいゲームっぽくてさ、武器種と属性でダメージがだいぶ違う……。けど武器は慣れが必要だから練習がいるね。
武器は拾うこともあるから、結局は気に入った武器を何個か練習するのが良さそう。
「……ぬ、準備できた」
幼女ちゃんが装飾華美なハンマーを担ぐ。
コイツ少し脳筋気味なんだよね……。
あと『罠』のスキルツリーを伸ばしてるみたいで、いやらしい戦法も好きみたい。
まぁ割と楽しんでるみたいでヨロシイ!
――――――――――――――――――――――――
「さて、明後日は拠点を襲撃されるみたいなんだけど、ここいらで現実に戻ろうか」
「……そだね」
現実時間で三日がそろそろ来そうなんだよね。
だから、現実に戻らなきゃ。
「イヤーー!! 私はまだ此処に居るの!!」
そして……それに駄々をこねる尻軽女……。
まだ、この世界でダンスの練習をしていたいみたい……。いやアンタ……後半は練習が一通り終わったのか『練習場の庭にプール作れ』ってワガママ言ってたろ!
「いや、だからねぇ姉さん……。限界なの! 一回で三日しか此処には居られないのよ」
「…………」
私の言葉にブスッと膨れるアバズレ女。
本当はもっと時間を引き延ばせるけど、これ以上引き伸ばすと『能力追加の工場』としてはあまり効率が良くないっぽいんだよね。
ほら、時間を延々と伸ばせるなら、ずっと籠ってればすぐに能力が追加出来ちゃうでしょ?
それが制限に引っかかってるみたい……。
「次は現実で一日たったら来れるから……」
「次も呼ぶのよ……」
私はニッコリ笑って頷く。
……すんません、断言は出来ませんわ。私らも現実でやることあるんで……。
――――――――――――――――――――――――
そして現実に戻ったあと、尻軽は時計を見てニヤニヤ笑う。
「うふ、うふふふ。やっぱり時間が経ってないわあ……練習し放題じゃない」
ご満足頂けたようで……。
「じゃあ姉さん。私ら帰りますわ」
「ちょっと待ちなさい!」
入り口を塞ぐように私らの前に立つ尻軽は、腕を組んで見下ろしてくる。なによ……。
「今日でこの部屋はチェックアウトするのよ」
「あぁ、そうなんですか?」
「造船所の別の場所でライブがあるからね」
「アイドルさんは大変ですねぇ。じゃあそのうち伺いますわ!」
幼女ちゃんがアンタの居場所が分かるからね。
アンタには造船所脱出の手伝いをしてもらわんといかんし……。そのうち向かうよ。
しかし、尻軽は不敵な笑みを浮かべて私の頭を鷲掴みにする……。あで、あででで! 力強いよ!
「何言ってんのよ……アンタらも来んのよ!」
ええ〜……コイツと四六時中いるのはヤなんだけど……。
「ふ、ふふ。コイツらが居れば夜遊びの時間が作れるわあ……」
コイツ……あの世界に味を占めやがった!
「アハハハハ!! いくら不気味なクソガキだろうが、こんな便利な物逃すワケないでしょ!」
物って言うのやめない?




