コメットデリバリー
どーも私です。
そろそろ赤ちゃんの為の能力開発に勤しみたいと思います。
「ん〜……でも何のゲームにすべきかなぁ?」
前にもちょっと言ったけど、今回は必要な能力が不透明っていうパターンなんだよねぇ。
明確にどんな能力か必要かってのがイマイチよく分かってないのよ。
いつもだったら、目的の能力を得る為のゲーム選びが難しいって状態が多かったんだけど……今回はどんな能力にすればいいのかが分からない。
「とりあえず調べてみっか……え〜『ゲーム』『赤ちゃん』……と」
カタカタ検索してみると……おほ、結構出てくるじゃん。なになに『ベビートイボックス』って名前のゲームね。
キャラクターや物にタッチすると、それに応じた音が鳴るゲーム……あれ? これって……。
「赤ちゃん用の知育ゲームやん……」
あちゃぁ〜そう来たか。
赤ちゃんを題材にしたゲームじゃなくて、赤ちゃんを対象としたゲームね。
「対象0〜3歳向けだってさ……」
ごめん今回は対象外ですわ。赤ちゃんの為ではあるけど、赤ちゃんがプレイするゲームを探してるワケではないからね。
「ん? いやそうでもねぇのか? ん〜とりあえず今は別のゲームをさがすか……」
検索に『お世話』とか入れてみる?
「お、コレとかどーだろ? いいんじゃね?」
『ドタバタ! ベビーライフ!』
ひょんなことから赤ちゃんを預かる事になった主人公の、忙しくもほのぼのとした日常を体験する『赤ちゃん育成シミュレーションゲーム』らしい。
メインは『赤ちゃんのお世話』というタスクをこなしていくお仕事ゲーって感じっぽいね。
その合間に、ちょっとしたストーリーが挟まるって流れらしい。
「たぶん……私が望んでたゲームってのはこういうのなんだろうけど……まぁいいや、やってみるか……」
――――――――――――――――――――――――
一時間ほどプレイして私は……
「ダメだ……」
このゲームのコントローラーを机にコトリと置いた。
「ちょっと予想してたけど……このゲームじゃダメだ」
いや、面白くてやりがいのあるゲームだったよ。
赤ちゃんの予想外な動きに対応したり、不意に泣き出した赤ちゃんをあやしたり、ミルクを与えるときのミニゲームなんかもあった……。
最初から私が引っ掛かってた部分だね。
そもそも、赤ちゃんの子育て能力とは何だ? 具体的に能力に何をして欲しいんだ?
その能力を使ったら何が起きるのか……だ。
ミルクを与える技術が増すのか? 私のオムツ替えの能力が向上するのか? ワンタッチで取り替えられる便利なオムツが売ってあるのに?
「じゃあ赤ちゃんのステータスか?」
ゲーム中にあった腹減りゲージが見えるようになるのか?
サマリーに『泣いています』とか出てきて、泣いてる理由リストを潰していくのか?
「……違うだろ」
現実の赤ちゃんは『不満リスト』のタスクをこなしても泣き止まない。泣く理由がなくても泣くんだよ。
そんな不確かなモン能力にしたところでしょうもない。
現実の生物に複雑な感情数値を測って当てはめる能力なんて、不可能に近い。出来たとしても、私にそれを受け取ることが出来ないだろうね。
「赤ちゃんはゲームじゃねぇんだよ……」
単純にタスクをこなしたら良いってワケじゃないからね。
私は手を組んで目を瞑る。
オッケー分かった。子育てって考えるからダメなんだ。
「一番大事なことはなんだ?」
今あの赤ちゃんにとって、一番必要なことはなんだ?
……
…………
………………
「………………『安全性』」
これだ。
大前提として安全性が必要だ。
ハッキリ言ってね。あの赤ちゃんにとって、私らに拾われたことは『幸運』であり『不幸』でもある。
『幸運』は風船みたいに飛んでいっちゃう風船赤ちゃんを拾ったのが幼女ちゃんだったこと。たぶん幼女ちゃん以外だったら対処不可能だったからね。
『不幸』は分かりやすいね。危険なんだよ。
なんせ私ら現在進行形で追われてる身だからね。逃げてんの……。
そんな中、いざという時に赤子を背負ったまま走り回ったり転げ回ったり出来ないでしょ?
でも、私らと居るってのはそういうこと。
そもそも私と幼女ちゃんは、お互いがそれぞれで安全を確保している感じがある。自分のことは自分で身を守ってるんだ。
それを赤ん坊にまで強要はできない……。
だから大前提としてあの子の『安全性』が必要。
「んふふ……見えてきたね。じゃあやるゲームはコレだ……」
さっき赤ちゃんゲームで探してて見つけたゲームだよ。
【コメット デリバリー】
コメット……もしかして聞き覚えあるかな?
このゲームはね。私愛用の『ジェットブーツの能力』の元となったゲーム『コメット⭐︎キングダムコンペ』と同じシリーズなんだよ。
コメットという気だるげな猫を主人公とした大人気シリーズのゲームですな。シリーズもたくさん出ている大人気のゲームだよ。
「これは正確にはコメットシリーズの外伝だね」
まぁコメット⭐︎キングダムコンペも外伝のレースゲームなワケだけど……。
さっき見つけてチラ見したんだけど、赤ちゃんを安全に運ぶには適した能力が作れそうなんだよねぇ。
まず概要から説明していこうか!
このコメットデリバリーなんだけど、実は主人公はコメットじゃない。
「外伝だから、こういうこともあるわな」
コメットシリーズで登場するお馴染みのキャラクターに『シャボンクマ』という熊の仲間がいる。通常シャボ熊。
綺麗好きで風呂に入るのが大好きなシャボ熊君は、時に頼れる仲間として……そして時に乗り物としてコメットを助ける。
そんなシャボ熊が主人公として抜擢されたゲームだよ。
ジャンルはフィールドアクションアドベンチャーらしい。3Dのフィールドをシャボ熊が縦横無尽に走り回るステージクリア型のゲームだ。
特徴的なのは、そのシャボ熊の背中にシャボン玉に包まれた『赤ちゃん猫』を背負っていることだろう。ひょんなことからコメットに似た赤ちゃん猫を拾ったシャボ熊が、親元に届けるストーリーらしい。
面白いのは、シャボ熊にHPの概念がないことだろう。シャボ熊が敵の攻撃をくらうと、背中の赤ちゃん猫が分離してシャボン玉に包まれたまま無防備に浮遊してしまうんだ。
すぐに回収できれば問題ないが、敵がすぐに赤ちゃんのシャボンに寄ってきてシャボン玉を破壊してしまう。
そしてシャボン玉が破裂すると赤ちゃん猫は誘拐されてゲームオーバーだね。
「どや? 赤ちゃんの安全を守れそうなゲームやろ?」
さて、このゲームに決まりだね!
「じゃあさっそくプレイを…………って今までなら言うんだけどね。ちょっとストップ!」
今回はこれだけじゃない……。
これはあくまで『赤ちゃんの安全を守るため』のゲームだ。基本と言ってもいい。
でも違うんだよ。今回は赤ちゃんの安全を守るだけではダメだ。幅広く『子育て』に必要な能力が欲しいんだよ。大丈夫、忘れてない。
ではどーするか?
「このゲームを基本に……能力に『拡張性』を持たせる……」
初めての試みだろ?
元々私のゲーム能力ってのは、プレイしたゲームのリソース内でゲームに則した能力を作っていた。
「それを今回は破壊する!」
一応能力の拡張として今までに裏ワザ的な制限をつけてきたことはあったよね? 例えば、スキマの能力の範囲を広げるのにお金を使って拡張するとかね。
でも、あれは今ある能力の出力を上げるのには向いているけど、新しく能力の拡張をするという部分においては向いていない。
今回は全く別の拡張性を目指す。
ズバリ……
「ゲーム能力の……合成」
二つのゲーム能力を混ぜちまう。
ないし、一つの能力に補助として別のゲームを混ぜ込む。
そんなことは可能なのか?
「出来る……」
正確には最近出来るようになったと言ってもいい。
アレだよ……『箱庭シミュレーター』。
ここに来る前に乗ってた飛行船で、ヤンキー神に言われて出来上がった超越者としての能力。
あの時はボスメイドを閉じ込める為、領域畑に干渉して作った箱庭シミュレーター。
この箱庭シミュレーターね……よくよく能力を探ってみてわかったんだけど、私が思っているよりヤバい能力だわ……。
これは超越者としての根幹の力に近い。
今は小さなことしか出来ないけど『私の領域』に近しい現象を外にまで影響させる力がある。
つまり万能性の高いエネルギーを生み出すことが出来る。
あの時は、領域エネルギーに振ったワケだが、今回はコレを使ってゲーム能力のリソースに使おうと思っている。
「と言うことで……今回はもう一つゲームを選んだ!」
ん〜でもね。
もう一つは箱庭シミュレーターを使用してのプレイになるからさ。大変なんだよねぇ。
コメットデリバリーもプレイしないといけないし……。
「だからヤツを……そう! 幼女ちゃんを巻き込もう!」
つーことで、さっそく交渉しに行きましょうか!
幼女ちゃんや……覚悟しな! キミには労働をしてもらう!
――――――――――――――――――――――――
「幼女ちゃぁ〜ん…………あ、そ、ぼぉ〜?」
「……いやな予感がする……」
スキマの中で、赤ちゃんと一緒に大の字で横になる幼女ちゃんが、視線だけ寄越して顔を歪める。
嫌な予感? 勘がいいじゃないか。
私は幼女ちゃんの横でスヤスヤと眠る赤ちゃんに視線を向ける。よく寝てるね。
「ようやく寝たんだ?」
「……うん」
お疲れさん。
「じゃ遊ぼうぜ!」
「…………」
幼女ちゃんは軽くため息をはいて、勢いよく起き上がる。そして私をジッと見てきた。
「……必要なんでしょ?」
「話が早くて助かるね。そうだよ、この赤ちゃんの子育てをサポートする為だ……協力してくれるね?」
「……わかった」
「ようやく寝かしつけたところ悪いね。疲れてるでしょ」
「……問題ない。よゆー。保証制度のおかげで赤ちゃん用品も安く手に入れられるようになった」
タフだねキミ……。
まぁいいや……さっそく箱庭シミュレーターにご招待!
幼女ちゃんの手を引いて、あらかじめ用意した箱庭シミュレーターに引き込む。
次の瞬間……私達は草原の真っ只中に立っていた。
「………………あ?」
照りつける日差しと、どこまでも続く大自然に幼女ちゃんが間抜けな声を漏らす。
「…………どこ……ここ?」
「工場建設地で御座います」
「……いみわからん」
正確には箱庭シミュレーターの中だよ。今回は時短で育ててないフィールドを用意した。
「今からキミには……ここでゲームをしてもらう!」
「……デスゲームの進行役みたいなセリフやめろ。赤子置いてきてんぞ。どーするの?」
「大丈夫! ここは特殊な場所でね! ここで長時間過ごしても、現実ではほとんど時間が流れないようにしてる」
「……おまえ大概にしとけよ……」
「だから今は赤ちゃんのことは気にしなくても大丈夫だよ! 安心して!」
「……今この瞬間にオバケ姉ちゃんという存在が安心できなくなったよ……なんだこのバケモノ」
幼女ちゃんは子育てより疲れたような顔をしてその場に座り込むと、目で続きを促してくる。
「んじゃ説明しましょうかね! 今から幼女ちゃんには労働をしてもらうんだけど、とりあえずコレを被って!」
幼女ちゃんの頭に黄色いヘルメットを被せる。そのヘルメットにはライトが付いていた。
そして私もカッポリと同じヘルメットを被る。
「とりあえず拠点はココ!」
目の前に妙な機械がドンと現れる。
「マップを開くって思ってみて!」
「……うわなんかでた。きもちわるい」
「でたね? 今は最初だから真っ暗だし一つしか表示されてないと思うけど、紫色の点がマップに記載されてるでしょ?」
「……うん、まぁ」
「そこに向かうよ!」
草原を紫色の点に向かって二人でペタペタ歩くと、そこには紫色の結晶みたいな物が地面から生えていた。
「じゃはい、ツルハシを渡すね。それを結晶に振り下ろすとぉ〜?」
五回ほど紫結晶にツルハシをカンカンやると、結晶はいきなり弾け飛んで紫のキューブが地面に転がる。
「はい、これがジオキューブと呼ばれる最初期の工業エネルギーだよ」
「……え? まさか本当に労働させられんの?」
そだよ? 言ったじゃん。
「んでコレを持って拠点の機械のところに戻るよ」
そして拠点の機械にジオキューブを入れると、機械の数値が増えた。
「流れは分かった?」
「……まぁ……なんとなく?」
「いちおう、この機械に貯めたジオエネルギーで物品をクラフトできるんだけど……素材が足んねぇな」
「……素材をその辺で回収してくればいいの?」
「キミはゲーム勘がいいね。その通り! どんどん素材を回収して出来ることを増やし、その結果効率が上がっていくゲーム」
箱庭シミュレーターにゲームを乗っけたんだ。その中で幼女ちゃんにはこのゲームをプレイしてもらう。
工業化サンドボックスサバイバル
【インダストリークラフト】
「あ、私は別でやることあるから、それが終わったら合流するね! 素材集めがんばって!」
私はほら……コメットデリバリーもプレイしないといけないから。




