保証制度
はい! 現在ウチのパーティ構成はこうなってます!
「幼女が二人! プラス赤子が一人!」
……過去これほどまでに平均年齢の低いパーティーがあっただろうか?
この若年層勇者パーティーに何が倒せんだよ……。
村どころか通常なら家すら出られんわ。
まぁそんなこんなで、流石に放っておくのも寝覚めが悪いんでね。この赤ん坊の親を探すことになりました!
つってもねぇ〜……あんだけベンチで待ってみても親が現れないところをみると、ちょっと不穏ではあるね。
おかげで幼女なのに赤ちゃんを連れ歩くことになった……。正直……不安……。
というか大分ムリがあるよね。それでも他に選択肢がないんだからやるしかない……。
現状、タンポポの綿毛のように飛んでいく風船赤子に対処できるのは『幼女ちゃん』しかいねぇだろうし……。
そんな風船赤子なんだけどね。現在は……
「だぶぅ……」
「そうかい、楽しいかい?」
「ドゥぶ」
「そうかい、良かったねぇ……でも、そろそろ降りてきて欲しいッスね」
「だぁぃ……」
浮いとります……。
淡い光を放ちながらプカプカと気持ち良さそうにうかんでますわ。
「とりあえず、天井があればそれ以上浮かないようだね……」
「むぶゥ!」
私が安心するのも分かるだろ? とりあえずソレが分かれば知らない間に飛び去るって事もないだろうしね。
今はスキマの空間の中だよ。
赤ん坊はスキマの中で天井付近で滞空している状態。
「…………あふ」
「お、幼女ちゃんオハヨウ」
「……むぃ、オハヨウ。赤子は?」
「そこ」
私が風船状態の赤ん坊を指させば、幼女ちゃんは眠そうな目で掴むと、天然コアを起動して赤ん坊を風船状態から解除する。
「前より早いね」
「……なれた」
やがて赤ん坊は、幼女ちゃんの手の中でスヤスヤと眠り始める。
「よく寝る子だね。赤ん坊ってのはそんなもんかい?」
「……しらん。そうなんじゃない。コイツ天井にはぶつかった?」
「いや、天井近くで停止したッスよ」
「……いちおうのセーフティ? それとも物体との反発……」
幼女ちゃんは手の中の赤子を見て眉間にシワを寄せる。
「さて幼女ちゃん。少しこの子について話し合おうか」
「……承知」
「知っての通り、取り敢えずはこの赤ん坊の親を探すワケだけど。策はあるかい?」
「……ない……ただ、もしかしたら探す手助けになる情報はある」
そう言って幼女ちゃんは、赤ん坊の髪を指差す。
「ちと青っぽいか……」
「……よくみると毛先が黄色いよ」
なるほど、青から黄色のグラデーションカラーな赤ん坊なワケだ。
「珍しい?」
「……おそらく組み合わせとしては珍しいかも」
「んじゃ親もその可能性があるってことかな?」
「……なんとも、親と同じ髪質で生まれるとは限らないから……可能性としてはあるってレベル」
解の巫女みたいに、白髪に限るんだったら分かりやすいんだけどね。少なくともこの世界の人間は、白髪親子みたいに、母子で髪の色が遺伝する可能性は高いんだろう。
「じゃ暫定、青と黄色のグラデーションっぽい奴を親として探そうと思います!」
「……そうだね」
もしかしたら青髪の母親と金髪の父親かもしれんし、もしくは全然関係ない髪色の可能性もあるね。でも今の所それ以外の情報がねぇしなぁ……。
あ、ちなみにこの風船赤ちゃん、男児だね。
「じゃ私少し寝るわ。幼女ちゃん、あとは頼んだ」
「……わかった」
どっちかが起きてないとマズいんじゃねって話で私達は交互に寝てんだよね。この世界のオムツが高性能で助かってるけど、赤ん坊ってのは大変だぁ……。
ちなみに寝ている間に二回泣き声で起こされた……。
――――――――――――――――――――――――
「よし、赤ん坊の親探しに行くぞ!」
「だぶぅ!」
目が覚めてスキマから出た私達は、駅の広場前で腕を振り上げる。赤ん坊もマネをしているのか、足をバタバタさせていた。
「……まった、その前にやることがある」
そこで待ったを掛ける幼女ちゃん……どした? 早いところこの赤ちゃんを手放さないと身動きが取れんぞ。
「……ミルクがきれた。買いにいく……」
おっと、使い捨ての哺乳瓶みたいなヤツね。そりゃ大変だ。大至急買いに行こう。
「……オムツもきれそうだし、このまま赤子を手で持って歩くのもたいへん」
ねぇ物尽くしだなオィ……。
「ん〜ベビーカーみたいな物が必要だね」
「……あれ、どこに売ってあんだ?」
た、確かに……店には入ったことあるけど、ベビーカーなんて売ってるところ見たことないぞ。
「と、とりあえずコレとかどーかな?」
「……なにか代わりになるものある?」
私はニュンと物置用のスキマに手を入れてゴソゴソ漁り出す。そして取り出した物に赤ん坊を搭乗させた……。
「……」
「……」
「だぁぶだぁぶ!」
赤ん坊はコロコロ車輪のついたソレの上で手を叩く。
「……」
私は無言で折りたたみハンドルを握ってソレを押すと『だぶ、だぶぶ』と赤ん坊が唸る。
…………『台車』だね。
大きな荷物を運ぶ時に乗せてコロコロ運ぶヤツ。
その真ん中にチョコンと赤子を載せている状態。
「…………絵ヅラ……」
「流石にねぇか。安定性もないし、何より悪目立ちするわ……」
私ら造船所の飛行船落としてるから目立つワケにもいかんよなぁ。指名手配されてる可能性高いんで……。
「と、とりあえずミルクとオムツだ! 今は手で運んで後で考えよう! 幼女ちゃんが買ってきた場所に行くぞ!」
私の言葉に、幼女ちゃんは視線を外してボソリと不穏なことを呟いた。
「…………おまえみたらビビるぞ……」
――――――――――――――――――――――――
「……ひくよな。使い捨て哺乳瓶6個セット200ネルスにオムツが300ネルス……」
「た! 高けぇ!?」
幼女ちゃんに告げられた値段に目ん玉が飛び出そうになったわ! え〜と、この世界の値段感覚が私の感覚でゼロを一個増やしたようなイメージだから……。
哺乳瓶6個セットが二千円にオムツが三千円……。
舐めてんのか!?
この世界! 子供どころか赤子にすら優しくない!!
「えぇ〜……幼女ちゃん。これ正規の値段なの?」
「……じつは違う」
違うってなに!? ボッタクリってことじゃねぇの?
この店ってコンビニみたいに色んな商品置いてるけど、夜中でも開いてるから値段が高いとか?
「……みてればわかるよ……」
そう言って幼女ちゃんは、哺乳瓶とオムツを持ってレジまで行く……。この店のレジは無人レジだ。
パイプ端末を使用して購入するんだけど。
幼女ちゃんが無人レジにオムツと哺乳瓶を通すと……。
『保証制度の商品です。タッチのあとアプリをかざして下さい』
レジがそう言ってくる……。
あ〜……これって……
「もしかして……こういった赤ちゃん用品って……保証制度前提だったりする?」
「…………たぶんね」
マジかよ……何割負担だ?
幼女ちゃんが渋い顔をしてパイプ払いをする……。
つまりは……だ。国か街がやってんのかは知らんけど、この保証制度を取らない限りベビー用品が高いんだ……。
そんで、その保証制度……驚きの九割負担らしい……。
「ち、ちなみにその保証制度って取れないの?」
「……申請がひつよう。簡単らしいけど子供にはムリ……騒ぎになるし。そもそもわたしら逃げてるし……」
だぁ〜! とことん子供に優しくねぇな!
「クソッ! 負け犬ニーサン呼んでこい! 子持ち申請してこい!」
「……ムリすれば払える額なのがイヤらしい」
せめて赤ちゃんを背中に背負うリュックサックみたいな物が欲しい……。
「この分だとベビーカーも高そうだよな……」
「……でも、ひつよう」
そうなんだよねぇ〜……。
「一応見てくるかぁ。何処に売ってあるんだろうね」
「……さっき子持ちの主婦に聞いてきた」
お、準備いいね。
「値段が今から怖いんだけど……」
「…………だまして保証制度だけ誰か大人に取らせることができれば……なんとかなる」
ふむ、なるほどね。
でもなぁ、ここって造船所のお膝元だから下手打つと私達も捕まるんだよね。
造船所と関係がなくて、程よく利用できる都合のいい大人はおらんかねぇ?
とりあえずベビーカー見に行きましょ……。




