神から目線
「そ、粗茶ですが……」
ソファーに足を組んで座っている、金髪ロン毛ヤンキーにお茶を淹れる。今更だけどヤンキーってお茶とか飲むんかね? ……あ、飲むんだ。
「わりと良いとこに住んでんじゃねぇか」
ヤンキー神が部屋を見渡して、少し感心したように呟く。相変わらずスゲェイケメンやね。
「でしょ? 噴水とかあるんスよ」
牢屋なんだぜここ……。
気に入ったならヤンキー神様もお一つどーです? お似合いだと思いますよ。……留置所とかね。
「んでぇ? 本日はいったいどーしたんですか? わざわざ直接やってくるなんて」
いつもだったらアンタ、リモート会議みたいに映像だけ飛ばしてくるじゃん。時間まで止めて生身でやってくるなんてさ。
まぁ『生身』って概念あるかどうか知らんけど。
もしくはアバターみたいなもんで、実際ヤンキーからしたらリモートと変わらなかったりしてね。
「あぁ? 別にこれと言った用があるワケじゃねぇよ。テメェの様子見だ」
「つまり部下の視察ってことですかね?」
それ上司の自己満で部下は迷惑なんですけど……。ま、別に良いんだけどさぁ。
「あ、そうだヤンキー様。お願いがあるんですけど!」
「テメェ……誰がヤンキーだと……」
ヤッベ、口に出しちゃったよ……。
誰がヤンキーってオメーだよ。鏡見てみろ、他校のヤンキーと街中で会ったみてぇなツラしてんだろ。
ま、ツラが良すぎるから、ヤンキーというには雰囲気ありすぎなんだけどね。その雰囲気がね……。
「チッ、まぁいい……お前がどうなったか報告しろ」
報告ねぇ。極たまにリモートで近況報告くらいはしてたけど、本格的に聞く感じか?
「ういうい、了解ッス。んでその前にお願いあるんすよ……」
「なんだよ? しょうもねぇこと言いやがったら消滅させんぞ」
お前にとって消滅って挨拶なの?
「なんかッスねぇ……いま、神様みてぇな存在に身柄を送られそうになってんすけど、話しつけられたりしません? こう、神様友達だったりしませんかね?」
さっきボスメイドとピンク船長との会話を盗み聞きして判明したんだけどさ。今ね、私達って亀とイタチっていう畜生神に狙われてるらしいのよ。
「オメェ分かって言ってんだろ……」
ヤンキーは眉間にシワを寄せて、ヤンキー特有の上目遣いをする。
あ、はい。勿論分かっております。言ってみただけなんでメンチ切んのやめて下さい。
「何度も言うがな……俺はお前の感覚で分かりやすく『神』と言ってるだけで神じゃねぇんだよ」
「でぇ〜すよねぇ〜」
だよね。だってこのヤンキー、自認がまさかの農家だからなぁ。
「ソイツがこの世界の神だろうが創造神だろうが俺の知ったことか。俺たちはその外側にいる存在だぞ。ソイツらただの現地生物だろぅが……」
だから分かりやすく超越者って名前付けたんだもんね。ヤンキー神ってのは私が言ってるだけだ。
それにしても仮にも神様を現地生物とかいっちゃうヤンキー神よ……。コイツにとってそんなもんなんだろうなぁ。
とにかく現状を報告しとくか……。
「なるほどな……それで今はその造船所とかいう場所に送られてんのか」
「まぁ抜け出すつもりですけどね」
「よし、頃合いかもな……超越者として次のステップに行くぞ」
超越者免許のステップアップですな。
「前回は『収穫』のことを教えてたんだったか?」
『領域畑』による『収穫』だね。超越者のお勉強のつもりだったけど、なんだかんだ役に立ってるよ。
現実に領域畑を引いて、そこに入り込んだ感情を収穫するんだよね。
これによって得られたエネルギーは、ゲームエネルギーとは別物だけど、領域畑と合わせるとかなり融通が利くエネルギーだ。
私は領域エネルギーと呼んでいる。
「俺は言ったな? 領域畑で得たエネルギーを使って場の領域畑を強化する……そうすることで『領域畑』を『自分の領域』に近づけることが出来るとな」
言った言った。
「次のステップはソレだ! 領域畑を実際に強化して場を強化、そして入り込んだ存在から効率よく感情エネルギーを入手する『機構』を作り上げてみろ!」
……んえぇ?
「ハッキリ言うが、これは少し難易度が高い。ただ漠然と領域畑を作るだけではないからな。感覚的なことが多いし、時間も掛かるだろう。だが、超越者としての基本だ!」
ババーンと課題を出してくるヤンキー神……あ、あれ? すまん真剣な顔してるけど口を挟ませて貰います。
「あ、あの〜……」
「なんだぁ! 出来ねぇとか言わせねぇぞ!」
「ひ、ひぃ!」
急にヤンキー威嚇をするんじゃねぇ! 繁殖期のカラスかテメェは!
「テメェには早く超越者として育ってもらって、テメェの壊した壁の修復を……」
「いや、違くて……それ、もうやってます」
「…………あ“?」
いや、ソレさぁ……私もうやってるわ。
つまりダンジョンだろ? 私もう領域畑をダンジョンに作り変えて、侵入者から感情エネルギーを収穫してるよね。
あれ? お前が言ったんじゃなかったっけ?
「……あ、違げぇわ」
ヤンキーが言ったのって、領域畑を作って感情エネルギーを入手、そして強化することだけで、実際にダンジョンを作ったのは私の考えだわ……。
「……」
「……」
「……説明しろ」
「ぁぃ……」
報告ではサラッと流してた私の作ったダンジョン『ドリームランド』の説明をさせていただきます。
「……なるほど」
「へぃ……こんな感じッス」
私の作ったダンジョンの報告をすると、ヤンキー神は静かに考え込む。
そうだったんだよね。確か、作った領域畑で思ったより感情エネルギーが得られなかったから考えて、実験がてらダンジョンを作ったんだ。
あれは確かにヤンキーの指示じゃねぇよ。
もしかして怒られる?
「……ふむ、いいじゃねぇか」
セーフ! セーフです!
「本来は感覚が分からなくて、ここで躓くんだけどな。どうやらお前にとって超越者とゲームってのが相性がいいらしい」
「あ〜、そりゃいきなりエネルギーを効率よく得られる『機構』って言われても困りますよねぇ……」
私はその『機構』とやらをゲームシステムになぞらえて考えたからステップ飛び越しちゃってたんだね。
「こういった感覚ってのは個体差あるからな。分からねーぇヤツには分からねぇし、説明も漠然とした物になる……じゃあもっと上のステップに移行するか……」
なんかすんませんね……才能があって。
「さて、どうするか……お前ちょっと領域畑を広げてみろ……」
「うぃッス……」
「薄ッ! 真面目にやれやァ!」
「いや、違うんすよ。ここって空の上だから領域畑が上手く作れなくてですねぇ……」
ヤンキーは壁から外を見てため息を吐く。
「チッ……本来なら関係ねぇはずだが、これもお前の特性ってヤツだな。……少し難易度が高えが、次のステップが決まったぞ」
本当は空の上ってのは関係ないのか……。私の考え方次第だったりすんのかな?
「お前はいま、他者の存在に依存した感情エネルギーだけで領域畑を賄っている」
「ん〜はい、そうですね」
マミィ〜の指輪とかのイレギュラーな収穫物を除けばね。
「次のステップでは、他者を使わずに領域畑を『強化』する『機構』を作れ!」
「すんません。言ってる意味が分からんッス!」
「個人の感覚に違いがあるから方法はお前次第になるだろう」
感覚が過ぎる……本当に意味が分かんないんですけど……。
「お前に寄せて言うと、お前の作るダンジョンとやらは領域エネルギーを使用して強度を上げている。そしてそのエネルギーは、他者がダンジョンに入ったことによって発生したエネルギーだ」
そうだね。
領域エネルギーは他者の感情だからね。
「お前はダンジョンを作って感じたはずだ。育ったダンジョンはエネルギーを強化に回さずとも領域自体の強度があっただろう。これが領域畑の強化だ」
時間を掛けて作ったダンジョンは、確かに強制力が違うね。祈りの巫女さんみたいなのには無駄だったけど。
「つまり、他者からの感情エネルギーを使わなくてもダンジョンは強化できる?」
「そうだ……」
エネルギーを使わずにダンジョンを強くするってことかな? ……むずいな。
「なんかヒントありません?」
ちょっと頑固な鍛冶師みたいな説明は困るんですけど。
「だからテメェ次第なんだよな。難しいがそういうもんだ。う〜ん、お前ならダンジョンに要素を増やすとかか?」
ほうほう、要素を増やすね?
まぁやることはコレかな?
『ダンジョンの強化を、他者からのエネルギーを使わずに行う』
「まぁ分かりました……」
今回の難易度高くね? アレか……ステップを飛び越したから難易度高えのか。
「とりあえず出来たら提出しろ……判断してやる」
「宿題かな? まぁ直ぐには取りかかれないッスね」
「あ“? なんでだよ……」
「説明しましたよね? 今捕まってて忙しいんすよね……。遊んでるヒマないんすよ」
ヤンキー神は何か面白いのか私の言葉にニヒルに笑う。
「バァ〜カ、オメーは超越者だろうが……。テメェの仕事は領域畑であって、この世界での事情なんざ全部遊びだろうがよ」
「……」
ヤンキー神ってこういう部分、農家とか言ってるクセに本当に神目線だよね。
「さっさと取り掛かれや」




