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フルーツ盛り合わせ


 造船所勢力の空帝候補ねぇ……なにそれ?

 まぁ字面からすると……


「お偉いさんッスかね?」


 ピンク船長は私の呟きに目を丸くして、ソファーに寝転ぶ私を見下ろす。


「おっ? なんだこの子供」


 どうやら牢屋の中に幼女二人がいるのが不思議らしい……。なるほどね。

 

「聞いた事があるでしょう。造船所が誇る生身で空を飛ぶ飛行部隊。『空帝』」

 

 若造兄ちゃんが一歩前に出て、腰に手を回しながら冷たい目を元ダン長達に向けながら説明をしてくる。

 

 お〜、若造兄ちゃん。何か説明キャラ似合うね! キツネ顔が言ってたけど裏切ったらしいじゃん。やるぅ〜。


「ブリガンド様はその空帝の候補にまでなっている傑物です」


 空帝なんて王様みたいな雰囲気出してるけどさぁ……

 部隊ってことは、その空帝って造船所勢力の一つの部署でしょ。何人もいるワケだ。

 それの候補って実力不足で部署入り出来なかったってことだよね。

 

 結局それ補欠じゃね?


 いやまぁ分かるけどね。たぶん空帝って生身で空を飛ぶ化け物集団みたいなもんなんだろう。それの候補なんだからそりゃ強いんだろうね。


「空帝候補、なんでそんな方がダンジョンに……」


 キツネ顔が顔を蒼白にして呟く。

 そうね。話から察するにこのピンク船長がこのダンジョンを侵略して、代わりにダン長を乗っ取った人物なんだろうけど……お前、造船所勢力なんじゃないの? もしかしてクビになった?


「ブリガンド様は『造船所勢力』でありながら『人工ダンジョン勢力』に所属した初めての人物になります」


 なにそのハイブリッド勢力……そんなん有りなの?

 

 ピンク船長は若造の説明にご満悦なのか、ニッカリと太陽のように笑う。


「はっは、お宅の総ダン長にスカウトされてねぇ!」


 そう言ってピンク帽子を、クイとあげながら牢屋の中に入ってきた。入ってくんなよ……。


「でもオジサン、ダンジョンとかよく分かんねえのよ! 一からダンジョン作るのも面倒だしさあ」


 カツカツと芝居じみた所作で牢屋内を歩くと、キツネ顔に顔を近づけてニァ……と悪そうな顔をした。


「だから考えたワケよ……職員ごと全部奪っちまえばいいんだわ」

「……まさか、前の時も」


「あ〜……前回な? 参ったよなあぁ〜! 総ダン長から貰った株玉で無理やり奪ったのに、あと一歩で失敗しちまったんだからよ。やっぱオジサンには難しいこと向いてねえわ!」


 ふ〜ん、ベラベラ喋るじゃん。まぁ油断してるってよりはもう勝負ついたからネタばらしってところかな?

 現に失敗した前回は正体を現さなかったほど警戒心は強いみたいだし……。

 

 それに元ダン長の二人は気づいてるかな?

 このピンク船長さ、ちゃんと自分が奪う場所の下見に来てたんだぜ……。

 覚えてるだろ。総ダン長の視察ってさ、コイツの下見を兼ねてたんじゃねーの?

 となると総ダン長もグルだろ。


「こんな、こんなヤツにダン長は……」

「ベアリングさん! やめなさい!!」


 ユラリと立ち上がった高飛車女が叫びながら華奢な拳を握りしめてピンク船長に殴りかかる――


「まだ俺が話してんだろ」

「か……あぁ……」


 ピンク船長が腕を向けた瞬間、ジェット噴射のように高飛車女は牢屋の壁に叩きつけられてズルリと倒れる。

 

 ま、そうよね。わざわざ手を出しやすそうに牢屋に入ってきたんだ。この二人じゃどう足掻いても傷つけられないって分かってたんだろ。


 キツネ顔は気絶した高飛車女を介抱しながらピンク船長を睨みつける。その姿をピンクの帽子をクイと上げながら笑う。


「アナタの使った株玉……『大株玉』ですね。出力が違いすぎる」

「はっは、人工コアのことこっちじゃ株玉って言うんだけっけか? そうだな、オジサン難しいこと分かんねえからパワーでゴリ押ししちまった……」


 キツネ顔は悔しげに俯いて、今度は若造兄ちゃんに視線を向けた。


「クイック君……」

「強い者につくのは当たり前でしょう?」


 若造は冷たい目で見下す。


「はっは、ウィンテッド君はいい拾い物したわ。ダンジョンのことなんも分からんからよ。侵略したあと名乗り出てくれて助かったぜ。詳しい部下が居てくれて助かるわ!」

「恐縮です」


「なあマスケラ ウルペース元ダン長〜。ウィンテッド君よお。お前に不満があったんだってよ。部下に慕われるのも上司の責務だぜ?」

「……」


 なるほどね。若造兄ちゃんはダンジョンが侵略されて、速攻で裏切ってピンク船長についたんだ。

 まぁ正解だね。勝負がついたんなら新しい社長にゴマするくらいじゃねぇとな。

 新しい社長もブチブチ文句言う元社員より、若造兄ちゃんを可愛がりたいよね。


「……ところで、この子供ってなんだ?」


 ピンク船長が困ったような顔を向けてきた。

 

「どーもどーも新ダン長様。私です」


 ゴマするなら私に任せろ。そして食事のグレード上げろ。


「いや私って言われてもな……二人を入れた時、牢屋にいたっけか?」


 ピンク船長の疑問に若造が答える。

 

「前回は隠れていたんでしょう。この子たちは無断でダンジョンに侵入してきた…………ただの子供ですよ」


 酷く冷たい目でそう告げてくる。

 ふ〜ん……。


「ああ、侵入かあ! まったくこんな子供を牢屋に入れるなんてなってねえなあ」

「その子達の目的も不明でしたので、一応牢屋に……それにダン長達も自分で作った牢屋に入れられるのは屈辱でしょう?」


「はっは、自分達がわざわざ作った牢屋に入れるなんて皮肉が効いて面白い提案だったよ。…………本当は排除しちまいたかったんだけどなあ」


 おっと、ピンク船長って実は前回失敗したの恨んでる? まぁ、反逆の可能性があるやつ殺しときたいよなぁ〜。


「総ダン長にもなるべく負傷者を出さないように言われてるしよお……バレなきゃいいんだけどな」


 コイツ不穏だなぁ。腑抜けたこのダンジョンの奴らじゃ太刀打ちできねぇわこりゃ……。

 ここの奴ら……侵入者である私達を見て見ぬふりしたり、もともと温いところあるからね。


 ダンジョンの縄張り争いならともかく、単純な心持ちが違いすぎる。


「私達を……笑いに来たのですか?」

「違いますよ」


 キツネ顔がギリリと若造とピンク船長を睨むが、若造はどこ吹く風で台車を持ち出してきた。


「食事を持ってきました」

「……食……事?」


 やったーー! ダンジョン奪われたらしいけど食事は出るぞー! 幼女ちゃん脱出延期ね!


 カチャカチャと牢屋の中に食事を運び入れる若造。

 なるほどね。ピンク船長と若造が食事を持ってきたのってたぶん……他の幹部が信用されてねぇからだな。


 他の幹部だと逃がされると思ったんじゃね?

 やっぱりこのピンク船長、温くねぇわ。


「ベアリング班ダン長が起きたら食べるように言って下さい」


 そう言ってテーブルに二つのオボンを乗せる若造。

 おほ、その肉を甘く味付けしたヤツ私好きー! 今日のご飯も美味しそうね。


「はっは、粗末な食事だ! 屈辱だろ? ダン長やってたお前らがそんなモンしか与えられなくてよお!」


 いや、普通に美味しそうだけど……えっと、感覚の違いですかね? やっぱりピンク船長って元ダン長を恨んでるな。というかマミィ〜に負けたと思ってんのかな? その恨みをコイツらにぶつけてる感じ?

 ま、いいやメシ食おう。


「キミ達はこっちです……」


 幼女ちゃんとテーブルに着いて食べようとしたら、若造に引き止められる。

 あん? なんだよ……食っちゃダメなの? これ好きなんだけど……。


「……」

「……」


 とか思ってたら……なんかスゲぇ並べられんだけど……。テーブルを新しく搬入したかと思ったら、所狭しと料理を並べられる……。


「何人前?」

「……くっていいの?」


 むしろ困惑するんだけど……。


「食後のデザートも置いておきます……『フルーツの盛り合わせ』です」


 そういって若造は丸いカバーをカパリと取ると、果物が噴水みたいに盛り付けられたデザートが出てきた……。だから何人前!!


「……どうぞごゆっくり」


 そう言って若造兄ちゃんは、爆笑するピンク船長と会議室を出て行った。


「とりあえず……食べる?」

「……うん」


 呆然と高飛車女を介抱するキツネ顔を放っておいて私達は食事を始める。あっちも高飛車女が起きたらメシ食うだろ。


「しかし、食べきれねぇなこれ」

「……食いきれない分はしまっとけ」


「冷凍で保存できっかな……」


 私のスキマって時間が止まってるワケじゃねぇからな。温度調節機能で冷房ガンガンに効かせるだけだから、物によっちゃあんまり日持ちがね……。


「まぁせっかくの高級そうな料理だ……食えるうちに食っとけ」

「……あぐあぐ……うめぇ……」


 私と幼女ちゃんはひたすらに腹に詰め込む……。

 無言で詰め込む……。


「しかし……」

「……うん」


「相変わらず」

「……かだいひょうかしてる」


 口を動かしながら、チラリと二人の元ダン長を見る。

 よかったね……若造兄ちゃん、ダン長に相応しくないヤツの下に着く気はないってさ。

 んで……気づいてる? ずっと二人のことダン長って呼んでたんだよなぁ。


 アンタら……


 

 若造兄ちゃんに逃がされたな……。


 

 予想になるけど、ほとんど当たってるだろ。

 どこのタイミングかまでは分かんないけど、たぶん若造兄ちゃんは、このダンジョンが侵食された時、無理だと踏んで真っ先にピンク船長に取り入ったんだ。

 それでピンク船長の信頼を勝ち取って意見を出しやすい立場に落ち着いた。


 そしてピンク船長……たぶんコイツらを排除したかったんだろうね。もしかして最悪殺されるまであったか?

 元ダン長のコイツらの存在は、ピンク船長にとって不都合だからね。


 だから若造兄ちゃんは逃したんだ……。


 コイツらのことが気に食わなかったピンク船長に提案したんだろ。屈辱を味わわせる為にコイツらの作った牢屋に入れてやろうぜって……。


 そうやって逃した……。このダンジョンに置いて唯一ピンク船長と対抗できる……敵対してないヤツら。

 


 私達の……

『小悪魔勢力』の庇護下に避難させたんだ……。


「だから過大評価だって言ってんのよ……」

「……もっちゃもっちゃ……あ、フルーツの下から金が出てきた」

 

 

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― 新着の感想 ―
若造にとって幼女ズは状況を変えてくれる希望でもあったんやな
若造君もやりおるわい。 ってかパパのコネぢゃ無いのね?
おお!若造兄ちゃん、思ったよりガッツリ幼女sにダン長達の庇護求めて来た!しっかり報酬まで押し付けて。 てっきり、何の依頼も接触もせずに、心の中だけで幼女ちゃんの鍵あけおこぼれ期待くらいかと。 どうせ幼…
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