6話「アルベルト国王」
その日、男が店に来たのは、いつもより遅い時間だった。
「こんばんは」
「こんばんは。今日は遅かったですね」
「ああ。少し用事があった」
男はそう言って、いつもの椅子に座った。
けれど、いつもと少し違った。
落ち着かない様子だった。
「何かありました?」
「……君に、話しておかなければならないことがある」
「何ですか?」
男はしばらく黙っていた。
そして、ゆっくり口を開いた。
「私は、君に嘘をついていた」
「はい?」
「最初にここへ来たとき、自分を商人だと言っただろう」
「そうですね」
「商人ではない」
私は首を傾げた。
「では、何をしている人なんです?」
男は答えなかった。
代わりに、懐から一枚の紙を取り出した。
そこには、見慣れない紋章が描かれていた。
私はその紋章を見たことがあった。
王都のあちこちにある。
役所にも、兵士の装備にも、貨幣にも刻まれている。
「……これ」
「知っているか?」
「王家の紋章ですよね」
「ああ」
男は紙を畳んだ。
「私は、アルベルトだ」
「……」
「アルベルト・レオンハルト」
私は固まった。
「この国の国王だ」
「…………」
頭が追いつかなかった。
国王。
目の前の男が。
「えっと……」
「驚いたか?」
「驚くどころじゃないです」
「そうか」
「じゃあ、今までの話は……」
「すべて私自身のことだ」
私は頭を抱えた。
「妻の話も?」
「ああ」
「息子さんの話も?」
「ああ」
「国を守る話も?」
「ああ」
「王の命令の話も?」
「……ああ」
私は椅子の背にもたれた。
「最初から全部、仮の話じゃなかったんですね」
「そういうことになる」
「それなら、最初から言ってくださいよ」
「言えると思うか?」
「思いませんけど」
私はため息をついた。
「でも、国王だと知っていたら、たぶん今までみたいには話せません」
「だから言わなかった」
「なるほど」
妙に納得してしまった。
男――いや、国王は少しだけ笑った。
「君に相談したかったのは、国王としてではない」
「……」
「アルとしてだった」
私は黙っていた。
「王だと分かれ




