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明日、君が笑うなら  作者: あーちゃん


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9/10

君が笑った日

このページでは、陽菜に最後の奇跡が訪れます。


忘れていたはずの名前。


消えていたはずの思い出。


言えなかった言葉。


そのすべてが、ほんの一瞬だけ陽菜の中に戻ってきます。


これは、悠斗が一生忘れない「君が笑った日」の物語です。

夜明け前の病室は、深い海の底みたいに静かだった。


昨日まで降っていた雨は、いつの間にか止んでいた。窓ガラスにはまだ細い雫が残っていて、外の薄明かりを受けながら、ゆっくりと下へ流れていく。


悠斗は椅子に座ったまま、陽菜の手を握っていた。


眠ったのか、眠っていないのか、自分でも分からなかった。ただ、陽菜の指先の温度を確かめ続けていた。少しでも冷たくなっていないか。呼吸が乱れていないか。苦しそうな顔をしていないか。


それだけを見ていた。


陽菜は静かに眠っている。


頬は白く、唇は色を失いかけていた。それでも、閉じた瞼の奥に陽菜がいる。悠斗が好きになった陽菜がいる。笑うのが上手で、泣き虫で、誰かの明日ばかり心配する、優しすぎる陽菜がいる。


枕元には、水色のノートが置いてあった。


『消えない約束』


陽菜の字で書かれたその表紙を見るたびに、悠斗の胸は苦しくなる。


明日も、誰かにおはようと言いたい。


泣いても、最後は少しだけ笑う。


もし私が全部忘れても、私を嫌いにならないでください。


明日、君が笑うなら、私は幸せです。


悠斗はその約束を何度も読んだ。何度も心の中で繰り返した。けれど、まだ最後の約束だけはうまく飲み込めなかった。


陽菜を思い出して笑う。


明日を捨てない。


そんな未来を、どうしても想像できなかった。


陽菜がいない朝なんて、朝ではない気がした。


陽菜がいない明日なんて、明日ではない気がした。


それでも陽菜は、悠斗に笑ってほしいと言った。


泣いてもいい。


でも最後は少しだけ笑って。


その言葉は、まるで陽菜が悠斗の未来に置いていった小さな灯りのようだった。


「陽菜」


悠斗は小さく呼んだ。


返事はない。


「今日も来たよ」


昨日からずっとここにいるのに、悠斗はそう言った。


毎朝、陽菜に言い続けてきた言葉だった。


たとえ彼女が忘れていても。


たとえ「あなたは誰ですか」と尋ねられても。


悠斗は毎日、同じように始めた。


「おはよう、陽菜。俺は神崎悠斗。今日も君に会いに来たよ」


その言葉を言うことで、自分自身も今日を始めることができた。


空が少しずつ明るくなっていく。


雨上がりの空は、淡く澄んでいた。


その時だった。


陽菜の指が、ほんの少し動いた。


悠斗は息を止めた。


握っていた手が、弱く、けれど確かに握り返してきた。


「陽菜?」


陽菜のまつ毛が震えた。


ゆっくりと瞼が開く。


悠斗は身を乗り出した。


「陽菜、大丈夫? 苦しくない?」


陽菜はしばらく天井を見つめていた。


その横顔を見て、悠斗の胸が冷たくなる。


また分からない朝なのかもしれない。


また名前を伝えるところから始めるのかもしれない。


それでもいい。


そう思おうとした。


けれど次の瞬間、陽菜はゆっくり悠斗の方を向いた。


その瞳を見た瞬間、悠斗は言葉を失った。


昨日までのぼんやりした不安がなかった。


迷子のような怯えもなかった。


陽菜の目に、はっきりと光が宿っていた。


そして陽菜は、かすれた声で言った。


「……悠斗」


たった二文字だった。


けれどその二文字が、悠斗の世界を揺らした。


「陽菜……?」


「おはよう」


陽菜は微笑んだ。


それは、悠斗が何度も夢に見た笑顔だった。


高校の廊下で振り返った時の笑顔。


雨の日に傘の下で見せた笑顔。


花火の光に照らされた笑顔。


プロポーズのあと、泣きながら頷いてくれた笑顔。


悠斗の大好きな陽菜の笑顔だった。


「俺が、分かるの?」


悠斗の声は震えていた。


陽菜は小さく頷いた。


「分かるよ」


「本当に?」


「うん」


陽菜は涙を浮かべながら、ゆっくり言った。


「神崎悠斗。私の大好きな人」


悠斗の視界が一気に滲んだ。


「陽菜……!」


悠斗は陽菜の手を両手で包み込んだ。


泣くまいとした。


でも無理だった。


何度も忘れられて、それでも何度も出会い直してきた。


毎朝、自分の名前を伝え続けた。


恋人だと言いたい気持ちを抑えて、友達から始めた。


怖がらせないように笑った。


陽菜が眠ったあとで泣いた。


そのすべてが、今、たった一言で報われた気がした。


陽菜が悠斗を覚えている。


陽菜が悠斗を呼んでいる。


それだけで、世界はまだ終わっていないように思えた。


「思い出したの?」


悠斗が聞くと、陽菜は静かに頷いた。


「全部じゃないかもしれない。でも、大事なことは全部」


「大事なこと?」


「悠斗と出会った日。初めて話した日。雨の日に一緒に帰ったこと。メロンパンを半分こした嘘の話を、悠斗が何度もしてくれたこと」


陽菜は少し笑った。


「本当はパン屋じゃなかったよね」


悠斗は泣きながら笑った。


「覚えてるんだ」


「うん。学校の廊下だった。私がプリント落として、悠斗が拾ってくれた」


「そう」


「その時の悠斗、すごく無愛想だった」


「そんなことない」


「あるよ。ありがとうって言ったのに、『別に』しか言わなかった」


「緊張してたんだよ」


「知ってる」


陽菜は嬉しそうに笑った。


「あとね、雨の日。私が傘を忘れて、悠斗が何も言わずに傘に入れてくれた。でも悠斗、自分の肩だけびしょ濡れだった」


「陽菜が濡れないようにしたかったから」


「昔からそうだったね。悠斗は、自分のことは後回し」


陽菜の目から涙がこぼれた。


「私、忘れてたんだね。こんなに大切なこと」


悠斗は首を横に振った。


「今、思い出した」


「でも、悠斗はずっと覚えててくれた」


「うん」


「痛かったでしょ」


悠斗は答えられなかった。


痛くなかったと言えば嘘になる。


毎日、胸を裂かれていた。


けれど、それを陽菜に背負わせたくなかった。


陽菜はそんな悠斗の気持ちまで分かっているように、優しく笑った。


「ごめんね」


「謝らないで」


「ありがとう」


陽菜はその言葉を、ひとつひとつ大切に置くように言った。


「忘れても、会いに来てくれてありがとう」


悠斗は涙を拭った。


「俺が会いたかったんだ」


「名前を何度も教えてくれてありがとう」


「何度でも教えるって決めてた」


「私が私じゃなくなりそうな時も、陽菜だよって言ってくれてありがとう」


「陽菜は、ずっと陽菜だった」


陽菜は泣きながら笑った。


「悠斗は、やっぱり優しいね」


「優しくないよ」


「優しいよ」


「陽菜がいたからだよ」


悠斗は陽菜の手を握りしめた。


「陽菜が俺をそういう人間にしてくれた」


朝日が病室に差し込んできた。


雨上がりの光は、柔らかくて、まぶしかった。


陽菜はその光を眩しそうに見つめた。


「晴れたね」


「うん」


「最後の日が、晴れでよかった」


悠斗の胸が凍りついた。


「最後なんて言うな」


陽菜は悠斗を見た。


とても穏やかな目だった。


「悠斗」


「言うなよ」


「聞いて」


「嫌だ」


子どもみたいな声が出た。


陽菜は困ったように笑った。


「泣き虫」


「泣くよ」


「うん。泣いていいよ」


「陽菜がいなくなるなんて、嫌だ」


「うん」


「まだ結婚式もしてない」


「うん」


「約束しただろ。結婚式まで、あと六十日って」


陽菜の目が揺れた。


そして、ゆっくり微笑んだ。


「覚えてる」


悠斗は息をのんだ。


陽菜は懐かしむように天井を見上げた。


「第2ページみたいな日だったね」


「何それ」


「ふふ。なんでもない」


陽菜は少しだけおどけたように笑った。


「白いドレス、着たかったな」


悠斗は唇を噛んだ。


「着られるよ」


「悠斗」


「まだ分からないだろ」


「悠斗」


「俺、用意する。病室でもいい。ここでいい。白い布でも、花でも、指輪でも、何でも」


悠斗は必死だった。


「結婚式、しよう。今からでも。俺、陽菜と約束したんだ」


陽菜は静かに悠斗の手を握った。


「ありがとう」


「ありがとうじゃなくて」


「でもね、私、もうもらってるよ」


「何を」


「結婚式より大事なもの」


陽菜は涙を浮かべながら笑った。


「毎日、悠斗が会いに来てくれた。私が忘れても、何度も好きだって伝えてくれた。怖い朝を、一人にしないでくれた」


悠斗は何も言えなかった。


「それって、誓いの言葉よりずっとすごいことだよ」


「そんなの……」


「私はもう、悠斗のお嫁さんみたいに幸せだった」


陽菜の言葉は優しかった。


けれど、それは悠斗の胸を深く刺した。


叶えられなかった未来を、陽菜は今ある幸せに変えようとしている。


白いドレスを着られなかった悔しさも。


式場を歩けなかった悲しさも。


全部抱えたまま、それでも悠斗を安心させる言葉を選んでいる。


「陽菜はずるい」


悠斗は呟いた。


「いつもそうだ。自分が一番つらいのに、俺のことばかり考える」


陽菜は少し笑った。


「だって好きだから」


その言葉は、まっすぐだった。


陽菜はもう一度言った。


「悠斗が好き」


悠斗は声を詰まらせた。


「俺も好きだよ」


「うん」


「愛してる」


陽菜は目を細めた。


「私も、愛してる」


その時、病室の扉が静かに開いた。


彩花が入ってきた。


手には小さな紙袋を持っている。


悠斗が振り返ると、彩花は陽菜の目を見て立ち止まった。


「陽菜……?」


陽菜は母を見た。


そして、少し照れたように笑った。


「お母さん」


彩花の顔が一瞬で崩れた。


「陽菜……分かるの?」


「分かるよ」


陽菜は手を伸ばそうとした。


彩花は駆け寄り、その手を握った。


「お母さん、泣きすぎ」


「泣くわよ」


彩花は声を震わせた。


「あなたが、お母さんって呼んでくれたんだから」


陽菜は申し訳なさそうに笑った。


「いっぱい忘れて、ごめんね」


彩花は首を横に振った。


「いいの。いいのよ。あなたがここにいてくれた。それだけでいいの」


「お母さん」


「うん」


「産んでくれてありがとう」


彩花は口元を押さえた。


「陽菜……」


「私ね、幸せだったよ」


陽菜はゆっくり言葉を続けた。


「お母さんの作る卵焼き、好きだった。甘いやつ。お弁当に入ってると、朝から嬉しかった」


「また作るわよ。いくらでも」


「うん」


陽菜は頷いた。


「食べたいな」


彩花は何度も頷きながら泣いた。


「作る。すぐ作るから」


「お母さん」


「何?」


「私がいなくなっても、自分を責めないで」


彩花の手が震えた。


「そんなこと……」


「お母さんは、ずっと頑張ってくれた。私より泣きたい日も、笑ってくれた。怖かったよね」


「陽菜」


「ありがとう」


陽菜は母の手を握った。


「お母さんの娘でよかった」


彩花は陽菜の手に顔を伏せ、声を殺して泣いた。


その姿を見て、悠斗も涙を止められなかった。


少しして、美緒も病室に来た。


彩花が連絡をしてくれていたのだろう。


美緒はドアの前で、陽菜の顔を見るなり固まった。


「陽菜……?」


陽菜は弱々しく手を上げた。


「美緒」


美緒の目から大粒の涙がこぼれた。


「嘘……分かるの?」


「分かるよ。私の親友でしょ」


美緒は泣きながらベッドのそばに来た。


「ばか。心配させすぎ」


「ごめん」


「何回ごめんって言わせるのよ」


「ごめん」


「だから言わせるなって」


二人は泣きながら笑った。


陽菜は美緒を見つめた。


「美緒、ずっとそばにいてくれてありがとう」


「当たり前でしょ」


「私が悠斗のこと忘れた時も、怒らないでいてくれてありがとう」


「怒れるわけないじゃん」


「美緒は怒ると怖いから」


「今でも怒れるけど?」


「やめて。病人に優しくして」


そのやりとりが、あまりにも普通で。


あまりにも昔の陽菜で。


悠斗は胸がいっぱいになった。


陽菜が笑っている。


彩花も、美緒も、泣きながら笑っている。


病室なのに。


別れが近いのに。


そこには確かに、幸せな時間があった。


やがて陽菜は少し疲れたように目を閉じた。


彩花と美緒が心配そうに覗き込む。


「大丈夫」


陽菜は小さく言った。


「少しだけ、悠斗と二人にして」


彩花は涙を拭きながら頷いた。


「分かったわ」


美緒も陽菜の手をそっと握った。


「また来るから」


「うん」


「絶対だから」


「うん」


二人が病室を出ると、静けさが戻った。


朝の光は少し強くなり、病室全体を白く照らしていた。


陽菜は悠斗を見た。


「ノート、取って」


悠斗は水色のノートを手に取った。


陽菜はそれを受け取り、最後のページを開いた。


「書きたいことがあるの」


「無理しなくていい」


「書きたい」


陽菜の声は弱いけれど、はっきりしていた。


悠斗はペンを渡した。


陽菜の手は震えていた。


文字を書くのも苦しそうだった。


悠斗は支えようとしたが、陽菜は小さく首を振った。


「自分で書く」


そして、ゆっくりと書き始めた。


『悠斗へ。』


それだけ書くのにも、時間がかかった。


陽菜は息を整えながら、続きを書いた。


『私を何度も見つけてくれてありがとう。』


悠斗の涙が落ちた。


陽菜は続けた。


『忘れても、怖くても、悠斗がいたから私は私でいられました。』


ペン先が震え、文字が少し歪む。


それでも陽菜は書き続けた。


『明日、君が笑うなら、私は何度でも幸せになれます。』


そこで陽菜はペンを止めた。


「悠斗も書いて」


悠斗は震える手でペンを受け取った。


何を書けばいいのか分からなかった。


ありがとう。


愛してる。


忘れない。


どれも本当なのに、どれも足りなかった。


悠斗は長い時間、白い余白を見つめた。


そして、ゆっくり書いた。


『陽菜へ。君が笑った日を、俺は一生忘れない。』


陽菜はそれを読んで、嬉しそうに笑った。


「いい言葉」


「足りないよ」


「足りてる」


「もっと伝えたいことがある」


「じゃあ、言って」


悠斗は陽菜の手を握った。


「陽菜」


「うん」


「俺は、陽菜に会えてよかった」


陽菜は頷いた。


「うん」


「陽菜がいたから、俺は変われた。誰かのために泣くことも、笑うことも、明日を怖がることも、全部陽菜が教えてくれた」


悠斗の声は震えていた。


「俺、たぶんこれから先、何度も泣く。陽菜のいない朝に耐えられない日もあると思う。約束なんて守れないって思う日も、きっとある」


陽菜は静かに聞いていた。


「でも、陽菜が笑ってほしいって言ったから」


悠斗は涙を拭った。


「俺、生きるよ」


陽菜の目に涙が浮かんだ。


「うん」


「すぐには笑えないかもしれない」


「うん」


「でも、いつか。陽菜を思い出して、ちゃんと笑う」


陽菜は涙を流しながら、嬉しそうに笑った。


「それでいい」


「陽菜」


「何?」


「俺、陽菜のこと忘れない」


「うん」


「忘れたくても、忘れられない」


「忘れないで」


陽菜は初めて、少しだけわがままを言うように言った。


「私のこと、忘れないで」


「忘れない」


「でも、苦しいだけの思い出にしないで」


「うん」


「私、悠斗に笑って思い出されたい」


悠斗は何度も頷いた。


「分かった」


陽菜は安心したように息を吐いた。


その時、モニターの音が少し変わった。


悠斗の体が強張る。


陽菜は気づいているのか、いないのか、穏やかな顔をしていた。


「悠斗」


「うん」


「最後にお願いしてもいい?」


「何でも言って」


「笑って」


悠斗の胸が痛んだ。


「今?」


「今」


「無理だよ」


「無理でも」


陽菜は弱々しく笑った。


「私、悠斗の笑った顔が見たい」


悠斗は唇を噛んだ。


涙が止まらなかった。


こんな時に笑うなんて、できるはずがない。


でも、陽菜は待っていた。


悠斗の笑顔を。


最後の願いとして。


悠斗は震える息を吸った。


泣きながら、口元を上げた。


きっと不格好だった。


涙でぐしゃぐしゃで、笑顔なんて呼べない顔だった。


それでも陽菜は、目を細めた。


「うん」


陽菜は幸せそうに言った。


「やっぱり、悠斗の笑顔が好き」


悠斗は声を詰まらせた。


「陽菜」


「悠斗」


「うん」


「ありがとう」


「俺の方こそ」


「愛してる」


「俺も、愛してる」


陽菜はゆっくり目を閉じた。


けれど、まだ手は悠斗の手を握っていた。


「ねえ、悠斗」


「うん」


「今日、私、笑えてた?」


悠斗は何度も頷いた。


「笑えてた」


「そっか」


陽菜は小さく笑った。


「よかった」


その笑顔は、朝日に照らされていた。


雨上がりの光の中で、陽菜は確かに笑っていた。


悠斗はその顔を、心に焼きつけた。


この先、どれだけ時間が経っても。


何年経っても。


季節が何度巡っても。


この日の陽菜だけは、絶対に忘れないと思った。


君が笑った日。


最後の奇跡が起きた日。


陽菜がすべてを思い出し、母にありがとうを伝え、美緒と笑い、悠斗に愛してると言ってくれた日。


そして、悠斗に明日を託した日。


モニターの音が、静かな病室に響いていた。


悠斗は陽菜の手を握り続けた。


「陽菜」


陽菜は目を閉じたまま、ほんの少しだけ指を動かした。


返事の代わりみたいだった。


悠斗は泣きながら、笑った。


「今日も、会えてよかった」


窓の外で、雲の切れ間から光が広がっていく。


雨に濡れた街が、少しずつ輝き始めていた。


陽菜の笑顔が、その光の中に溶けていくように見えた。


悠斗は心の中で、何度も繰り返した。


忘れない。


絶対に忘れない。


君が笑ったこの日を。


君が俺の名前を呼んだ声を。


君が最後にくれた願いを。


明日、君が笑うなら。


俺は、涙の向こう側へ行く。


いつか必ず。


君を思い出して、笑うために。

第9ページを最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


このページでは、陽菜に最後の奇跡が訪れ、悠斗や母・彩花、美緒へ大切な言葉を残しました。


陽菜は忘れていた思い出を取り戻し、最後に悠斗の笑顔を見たいと願います。


次はいよいよ最終ページ「明日、君が笑うなら」です。


陽菜との別れ、そして数年後の悠斗の未来へ物語は進みます。

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