↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fランク《波魔法》を授かった俺、前世知識で世界最強へ ~最弱魔法を研究していたら、落ちこぼれ研究室まで最強になった~  作者: 秋葉 詩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/11

第7話 反射はもう知られている

数日後。


 俺たち基礎課程の下位クラスと、上位クラスの合同実習が行われることになった。


「今回の課題は対人戦だ。ただし、勝敗だけで評価はしない。これまでに学んだ魔法の運用と、相手への対応を見る」


 担当教師の説明を聞きながら、俺は訓練場を見回す。


 壁がある。


 床も石。


 条件は悪くない。


「また壁を見てる」


 隣のセリアに言われた。


「癖になったかもしれない」


「普通は対戦相手を見るものよ」


「始まったら見る」


「そうして」


 俺の名前が呼ばれた。


「レイン・アークライト。対戦相手は上位クラス、ディルク・ハーゼン」


 向かい側から、一人の少年が歩いてくる。


 俺より少し背が高い。


 同学年だが、上位クラスの徽章をつけていた。


「Cランク《衝撃弾》」


 教師が能力を読み上げる。


 ディルクは開始位置に立つと、最初から訓練場の中央へ移動した。


「そこ?」


「君の戦いは見た」


 即答だった。


「壁を使うんだろ?」


「ああ」


「なら近づかなければいい」


 なるほど。


 俺がノアに勝った方法は、もう知られているらしい。


 中央なら、どの壁からも距離がある。


 反射させればそれだけ到達まで時間がかかるし、軌道も読みやすい。


「ちゃんと対策されてるな」


「当たり前だ。Fランク相手だからって油断する気はない」


 嫌な相手だ。


 いい意味で。


「始め!」


 ディルクの前で魔力が動いた。


 俺は反射的に身をずらす。


「《衝撃弾》!」


 透明な塊が、さっきまで俺がいた場所を通過した。


 速い。


 カイルの《炎槍》ほどではないが、まともに食らいたくはない。


「やっぱり避けるか」


 ディルクは驚かなかった。


 二発目。


 今度は少し横へ撃ってくる。


 俺が避ける方向まで考えている。


「おっと」


 ぎりぎりでかわす。


 俺も波を撃つ。


 反射。


 しかしディルクは軌道を見て、一歩だけ移動した。


 簡単に外れる。


「やっぱり分かるよな」


「壁に撃つのを見ればな!」


 次の《衝撃弾》。


 避ける。


 もう一度反射。


 また避けられる。


 単純な反射だけでは無理だ。


 でも、別に困らない。


 昨日の実験記録を思い出す。


 直接撃った波と、一度反射させた波。


 同じ場所へ重ねるには、経路の長い方を先に出す。


 ここは昨日より壁まで遠い。


 反射経路も長くなる。


 なら二発目は――昨日より少し早め。


 俺は左の壁へ波を撃った。


 当然、ディルクの視線がそちらへ向く。


 反射波が長い距離を進む。


 その少し後。


 今度はディルクへ直接、弱い波を撃つ。


「正面?」


 ディルクが横へ動こうとする。


 でも、狙っているのは今いる場所じゃない。


 避ける先だ。


 一発目が壁から戻る。


 二発目が正面から届く。


 二つの波が、ディルクの右側で重なった。


 バンッ!


「なっ!?」


 空気が弾け、ディルクの体が大きく揺れる。


 直撃ではない。


 でも一発ずつより明らかに強い。


「何だ今の!?」


「二発重ねた」


「二発……?」


 ディルクの顔つきが変わった。


 今度は俺だけでなく、壁と俺の両方を見る。


 いい。


 また見る場所が増えた。


 でもさすが上位クラス。


 すぐに距離を取り直す。


「《衝撃弾》!」


 魔力が集まる。


 この魔法も、何度か見た。


 発動直前の揺れ方は少しずつ分かってきている。


 ただ、カイルの《炎槍》ほど単純じゃない。


 ディルクは狙いを直前で変えてくる。


 俺が横へ動いた瞬間、魔力の向きもわずかに変わった。


「まず――」


 完全には避けられない。


 なら。


 俺は小さな波を、飛んでくる《衝撃弾》の脇へぶつけた。


 正面から止めるんじゃない。


 そんな火力はない。


 ただ、《衝撃弾》の周囲で揺れている空気へ横から波を重ねる。


 ドンッ!


「うわっ!」


 《衝撃弾》の軌道が、ほんの少しだけずれた。


 肩のすぐ横を抜けていく。


「……今、俺の魔法に何をした?」


「分からない」


「は?」


「たぶん、周りの空気を揺らした」


「たぶん!?」


 俺自身、完全には分かっていない。


 《衝撃弾》が空気を押し固めるような魔法だから影響したのか。


 魔法そのものへ波が触れたのか。


 他の属性でも同じことができるのか。


 今の一回だけでは、何も断定できない。


「あとで試したいな」


「試合中だぞ!」


「分かってる」


 ディルクの声が少し焦っている。


 俺はまた壁へ一発。


 今度は右。


 ディルクが距離を取る。


 そこへ直接一発。


 さらに、床へ弱い一発。


「三つ!?」


「全部は重ねない」


 一つは囮。


 どれが本命か分からなくする。


 ディルクは反射波を避け、直接波もかわす。


 その動きで、三発目の到達地点へ入った。


「そこ」


 俺は最後にもう一発、直接撃つ。


 二つの波がほぼ同じ瞬間に重なった。


 ドンッ!


「ぐっ!」


 ディルクの体が後ろへ押される。


 体勢が崩れた。


 その瞬間を逃さず、俺は集束した波を正面から放つ。


 バンッ!


「っ!」


 ディルクが地面へ片膝をついた。


「そこまで!」


 教師の声が響いた。


 一瞬、静かになる。


 それから周囲がざわつき始めた。


「……勝った?」


 俺が呟くと、ディルクが顔を上げた。


「その言い方、腹立つな……」


「ごめん」


「謝るなら最初から言うな」


 ノアと似たことを言われた。


 俺は手を差し出す。


 ディルクは少し迷ってから、それを掴んだ。


「反射だけじゃなかったのか」


「最近増えた」


「最近?」


「数日前」


「数日前!?」


 なぜかさらに嫌そうな顔をされた。


 訓練場の端では、セリアが記録用紙へ何かを書き込んでいる。


「最後の重なり、どうだった?」


 俺が戻ると、セリアはすぐに答えた。


「二発目が少し早い。あとほんの少し遅ければ、もっと中心で重なったと思う」


「やっぱり?」


「それと途中で《衝撃弾》へ波を当てたでしょう」


「あれ?」


「再現できる?」


「……分からない」


「なら『要検証』」


「はい」


 いつものやり取りをしていると、知らない声が割り込んだ。


「君たち、少しいいかな」


 振り向く。


 教師たちの近くに、一人の男が立っていた。


 三十代くらいだろうか。


 教師用の制服ではなく、白い研究外套を羽織っている。


「誰ですか?」


「魔法基礎研究科の教員だよ。合同実習の記録を見に来ていた」


 男は俺ではなく、さっき波を重ねた場所を見る。


「今の攻撃。二つの魔法を別々に放って、到達する瞬間だけ重ねたね?」


「はい」


「威力が上がることは、どうやって知った?」


「水の波が重なるのを見て」


「水?」


「あと、逆に弱くなることもあります」


 男の目が変わった。


「弱くなる?」


「タイミングがずれると。まだ条件はちゃんと分かってないですけど」


「記録は?」


 俺がセリアを見る。


 セリアが無言で紙束を持ち上げた。


「あります」


「君が記録しているのか」


「放っておくと、この人は何も残さないので」


「余計なことまで言わなくていいだろ」


 研究科の男が笑う。


 それから、改めて俺を見る。


「レイン・アークライト君」


「はい」


「一度、研究棟へ来ないか?」


「研究棟?」


「君がやっていることを、もう少しきちんと調べてみたい」


 その言葉を聞いた瞬間。


 俺の頭に浮かんだのは、難しそうな研究者でも立派な設備でもなかった。


「そこ、壁いっぱいあります?」


 男が止まった。


「……壁?」


「材質違いで」


 セリアが額へ手を当てる。


「レイン」


「だって必要だろ」


 男は数秒黙ったあと、大きく笑った。


「あるよ。君が喜びそうなものが、たくさんね」


 それなら。


「行きます」


 返事に迷う理由はなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。