第91話 招待状
鷹取から封書が届いた。
メールでも電話でもない。
「古風」
由奈が言う。
「絶対面倒なやつ」
中には住所と日時だけ。
《終端設計室 中央研究棟》
月島は当然止めた。
「行くなら正式捜査で」
「招待されてる」
「招待と安全は別です」
御厨が封筒をひっくり返す。
「爆発物なし」
「そこ確認する?」
「一応」
新田はもっと現実的だった。
「出張扱いにしろ」
「そこ?」
「休日に敵の会社行くな。労災が面倒だ」
冬真は笑った。
結局、正式な合同調査として行くことになった。
研究棟へ向かう車内で、冬真は封筒を膝の上に置いたまま何度も裏返した。差出人住所も会社ロゴもない。紙だけは妙に厚い。
「捨てればよかったのに」と由奈。
「気になる」
「罠でも?」
「罠ならもっと気になる」
御厨が運転席から「そういう性格でよく二十四まで生きたな」と言う。
「一回死にかけてます」
「笑えねえ」
車内が一瞬静かになり、冬真は自分で言ってから少し後悔した。由奈が何も足さず、コンビニ袋からチョコを一つ投げてくる。
「糖分」
「雑」
「でも食べる」
食べた。こういう余計な一個で、身体が今に戻る。研究棟の門が見えた時、冬真は封筒を鞄へしまった。今日は八年前の被害者ではなく、調査員として入る。
中央研究棟は郊外の普通のオフィスだった。
入口で鷹取が待っている。
「ようこそ」
「もっと地下秘密基地かと思ってました」
「期待に添えずすみません」
鷹取は本当に少し申し訳なさそうだった。
研究棟の受付では、冬真の社員証より月島の国家身分証の方が先に確認された。少しだけ悔しい。
「何ですか、その顔」
「いつか俺の方で通るようにしたい」
「権限欲強いですね」
「ある」
隠す気はなかった。強くなるなら、能力だけでなく入れる場所も増やしたい。見られる資料も、決められる範囲も。
鷹取がエレベーター前で待っていた。
「久世さん、以前より肩書きが増えましたね」
「給料も」
「それは良いことです」
「敵に祝われると変な感じ」
「まだ敵と決めている?」
「今のところ」
鷹取は笑わず、最上階のボタンを押した。
「では、敵の資料を全部見せます」
その言葉の方が罠らしかった。




