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終わったはずの事故を、俺だけがまだ見ている  作者: YunCang


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81/112

第81話 桐森市再訪

桐森市へ向かう電車の中で、冬真は前回の報告書を読み直した。自分の名前はもう「補助調査」ではなく「主担当」になっている。

 由奈に「慣れました?」と聞かれ、冬真は「嬉しいけど、責任も増えた」と答えた。

 市役所のエレベーターを降りると、事故ゼロのポスターが目に飛び込んできた。


桐森市は三か月連続で「異常事故ゼロ」を達成していた。


 市役所のロビーには、その数字を大きく印刷したポスターまで貼ってある。


「前来た時より自信ついてますね」


 由奈が言う。


「数字は人を元気にするからな」


「主任も給与明細で元気になりますもんね」


「悪い?」


「全然」


 冬真は笑ってから、ポスターの下にある地域別事故一覧を見た。


 中心部、ゼロ。


 商業区、ゼロ。


 観光区、ゼロ。


 旧住宅区だけ、異常関連の急死が十一件。


「ゼロじゃない」


 月島が横に立つ。


「市の定義では、旧住宅区は“重点復旧対象外”です」


「言葉変えただけじゃん」


「だから来ました」


 市長との面談は午後。午前中は現場を回る時間がある。


 冬真は予定表を閉じた。


「先に住宅区見ます」


「また勝手に」


「広域資格、こういう時に使うんでしょ」


 月島が一秒だけ黙る。


「……昼までには戻ってください」


「もう一軒くらい寄れる?」


「面談に遅れない範囲で」


「細かいな」


「仕事です」


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