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第66話 終端設計室

「何の用です」


『あなたと話したいだけです』


「俺はあんまり」


『でも聞くでしょう』


 冬真は黙った。


 腹が立つ。


 当たっているから余計に。


『あの施設で、私たちは六百人規模の死亡リスクを七人まで落としました』


「七人死ぬ前提?」


『前提ではありません。期待値です』


 御厨の顔が険しくなる。


 鷹取の声は穏やかなままだった。


『全部救えるなら、それが一番いい。ですが現実はそうではない』


「会えば説明する?」


『はい』


「じゃあ会います」


 月島が口を挟む。


「単独では行かせません」


『月島さんもどうぞ』


 相手は彼女の存在まで知っていた。


 冬真は通話を切る。


「気持ち悪いですね」


「相手も同じこと思ってるかもな」


 御厨が言う。


「俺の何が」


「自分だけ事故の終わりが見える二十四歳」


「言い方」



 通話後、新田はすぐ「会うな」とは言わなかった。


「会って何を取りたい」


「仕組み。あと、なんで俺に電話したか」


「喧嘩売りたいだけなら?」


「買わない」


 御厨が横で鼻を鳴らす。


「お前、売られたら買うだろ」


「値段による」


「そういう話じゃねえ」


 新田は面談条件を三つだけ出した。場所をこちらで把握する。録音する。単独で行かない。


「以上」


「意外と少ない」


「大人を遠足みたいに管理したくない」


 冬真は少し嬉しかった。信用と放置は違う。新田は止めるのではなく、冬真が自分で危険を取れる形にしている。


 その夜、鷹取から届いた住所は普通のオフィス街だった。そこが余計に不気味だった。


 鷹取との面談前、新田は冬真の録音アプリまで確認した。


「電池」


「八十七パー」


「予備」


「ある」


「位置共有」


「してる」


「よし」


 冬真が笑う。


「遠足じゃん」


「事故る奴ほどそう言う」


 御厨はもっと簡単だった。


「変だと思ったら出ろ」


「それだけ?」


「お前、言っても行くだろ」


「まあ」


「だから俺も行く」


 御厨はそれで話を終え、先に車のキーを取った。


 冬真は「お願いします」と言いかけてやめる。


「助手席、俺で」


「由奈が酔うからな」


「俺基準じゃないの?」


「違う」


 それで十分だった。


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