↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
65/106

第65話 誰が作った

偶然にしては出来すぎていた。


 事故報告の文言。

 保険条項。

 避難誘導線。

 営業再開の判定時刻。


 全部が一つの終了点を強くするように揃っている。


「設計されてる」


 由奈が言った。


「誰かが怪異の終わり方を作った?」


「たぶん」


 冬真は資料をめくる。


 署名欄に知らない会社名があった。


 《終端リスク設計合同会社》


「名前そのままじゃん」


「隠す気ないのかも」


 新田が横から資料を取る。


「むしろ隠す必要がない。業務内容は災害復旧コンサル。違法なことは書いてない」


 御厨が鼻で笑う。


「書いてあったら楽なんだけどな」


 その時、冬真の携帯が鳴った。


 非通知。


 出る。


『久世冬真さんですね』


 男の声。


「誰です」


『鷹取慧です』


 資料の代表者名と同じだった。


『切らなかったそうですね』


 少し笑う気配。


『正解です』



 冬真は通話のマイクをミュートにした。相手は切らずに待っている。由奈は設計会社の登記、契約履歴、過去案件を一気に並べた。画面には見慣れない会社名が十数社。どれも災害復旧、保険助言、BCP支援。表向きは怪しくない。


「怪しくない会社って調べにくいですね」


「普通の会社は大体怪しくないからな」


「名言っぽく言わないで」


 終端リスク設計合同会社だけ、過去の十三件すべてに何らかの形で関わっていた。直接契約ではなく、再委託や監修で薄く入る。


「隠してるというより、埋めてる」


 冬真が言う。


 鷹取は自分の名前を隠さなかった。むしろ、冬真がここまで辿り着くのを待っていたようだった。


 相手がこちらを研究している。


 初めて、怪異ではなく人間に“見られている”感覚がした。


 終端リスク設計合同会社のサイトには、爽やかな青空と《社会を止めない災害設計》という言葉が並んでいた。採用ページまで普通だ。


「初任給、うちより高い」


 冬真が言う。


 由奈が即座に画面を覗く。


「ほんとだ。転職します?」


「敵の会社に?」


「給料次第」


「お前もか」


 新田が後ろから二人の椅子を軽く蹴った。


「給与比較する前に仕事しろ」


 笑っていた空気が、代表者の経歴を開いたところで止まる。


 鷹取慧。三十二歳。元国立研究センター。災害リスク設計の論文多数。


 履歴まで優秀だった。


 冬真は少しだけ身を乗り出した。嫌な方法で頭を使う相手ほど気になる。画面を閉じ、通話のミュートを解除した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。