↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
63/106

第63話 二人目の調査官

商業施設の駐車場で、冬真は病院への残因転移を口にした。月島はすぐに反論した。


「転移型なら観測ログに痕跡が残るはずです」


「だから残ってないように作られてる」


「推測です」


「そうです」


「推測で病院を止めますか」


 冬真は黙った。


 そこを突かれると弱い。


 月島は国家データベースを開く。


 同型事故、十三件。

 全件、終了後に周辺別施設の軽微トラブルが増えている。


「……増えてるじゃないですか」


「統計的有意差は出ていません」


「人が死ぬまで待つ?」


「私はそう言っていません」


 月島の声が少しだけ硬くなる。


「あなたが正しい可能性と、あなたが間違う可能性を同時に扱っているだけです」


 冬真は言い返しかけて、やめた。


 嫌いな言い方ではある。


 でも間違ってはいない。


 御厨が壁にもたれた。


「二人とも正しいなら、現場見ろ。口で終わらすな」


 冬真と月島が同時に御厨を見る。


「主任、たまに良いこと言いますね」


「たまには余計だ」



 月島の反論は、冬真が嫌いなほど筋が通っていた。国家データベースでは終了条件一致率九八・七パーセント。過去十三件で再発なし。


「数字だけなら切ります」


「では、なぜ切らない」


「見えてるものが変だから」


「その“変”を他人が判断できない」


 痛いところだった。


 冬真は一度、白い点から離れた。自分だけが見えるものを武器にしてきた。でも国家級の現場で“俺には分かる”だけを通し続ければ、結局自分一人がボトルネックになる。


 腹は立つ。けれど、月島を黙らせるより先に、月島でも否定できない証拠を拾う必要がある。


「病院行きましょう」


「理由は」


「そこまで行けば、たぶん言語化できます」


「たぶん、ですか」


「嫌なら置いていきます」


「行きます」


 病院へ向かう車内で、冬真は月島の十三事例を読み込んだ。どの案件も、報告書だけなら本当に綺麗に終わっている。再発なし。負傷者増加なし。施設復旧。


 ただし周辺二キロへ範囲を広げると、小さな事故が増える。停電、転倒、設備故障。単独では異常扱いされない程度。


「大事故を、小事故に薄めてる?」


 月島がハンドル越しに頷く。


「仮説としては」


「それなら統計で消える」


「はい」


 冬真は資料を閉じた。


 鷹取という名前をまだ知らない段階で、もう相手の考え方が見え始めていた。事故を消すのではない。誰も大事故と呼べない形へ薄める。


 それは怪異より人間らしい発想だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。