第105話 終点が二つある
ビルの地下制御室で、冬真は同じ白い点を二つ見た。
「……何これ」
「嫌な顔だな」
御厨が冬真の顔を見る。
「終点が二つある」
「そんなことあるのか」
「ないはず」
一つは排水設備。
もう一つは保険会社の自動事故認定サーバー。
どちらも“ここを閉じれば事故が終わる”ように見える。
冬真は近づかない。
鷹取の擬似終端で、嫌というほど見た。
偽の終点。
「逆照する」
白い点から過去へ戻る。
一方は昨夜の地下線。
もう一方は三年前のソフト更新。
別物だ。
なのに途中で一本へ合流している。
「誰かが、現実の事故とデータ上の事故をつないだ」
林が黙る。
「できます?」
「普通はできない」
「普通じゃないやつがいる」
冬真がサーバーラックを見る。
黒線が一本、こちらの視線から逃げるように動いた。
「動いた?」
御厨が問い返した。
「うん」
線が“見られたこと”に反応した。
冬真は初めて、残因に見返されたような感覚を覚えた。
由奈の声がイヤホンから入る。
『主任、二つとも切らないでくださいね』
「分かってる」
『前科あるので』
「何の」
『見えたら触る』
「子どもみたいに言うな」
御厨が即座に言う。
「合ってる」
「二対一やめて」
軽口を返しながらも、冬真はまだ消えていない二つの白点から目を離さない。
二つとも完成度が高い。
偽物なのに、雑さがない。
これまでの擬似終端は、よく見ればどこかに歪みがあった。
今回は違う。
“冬真が見る”ことを前提に作られている。
そこに気づいた瞬間、背中が冷えた。
「相手、俺の見え方知ってる」
御厨の顔から笑いが消えた。
事故を操作する人間がいるだけではない。
冬真対策をしている人間がいる。
「これ、誰かが操作してる」
次の瞬間、二つの白点が同時に消える。
「逃げた」
「怪異が?」
「違う」
冬真は走り出す。




