第5章「鉄に彫れ」/一 赤鎖と星槌
カルネイアの港に船が着いたのは、聖遷祭から二十日目の朝だった。
川舟で六日。それから沿岸の乗合船で一日。王都を出るとき、アルディス・フェンマールは騎士団の詰所に「療養のための休暇」と届けを出した。受理したのは、団長の席を三年空けたままにしている騎士団の書記官で、彼は届けを一瞥すると、ほっとしたような顔で判を押した。
英雄が片腕を吊ったまま王都を歩き回るより、どこかへ消えてくれた方が、誰にとっても都合がいい。
そういう顔だった。
「アルディスさん、見てください、あれ」
甲板の手すりから身を乗り出して、リュカ・ノーレンが叫んだ。
「塔の上に、秤が載ってます! おっきい!」
「天秤楼だ」
「てんびんろう」
「星屑の相場を決める商会の塔だ。あの皿に掛かっている札が、今日の値段になる」
「へえ……」
リュカは、口を半分開けたまま、塔を見上げていた。砂色の癖毛が潮風に煽られて、そばかすの頬に張りついている。大きすぎる鎧は、王都を出るときに置いてこさせた。代わりに、アルディスの古い旅装を詰めて着せてある。それでもまだ袖が余っていた。
「連れてこなくてもよかったんだがな」
アルディスは、独り言のように言った。
「え」
「休暇だ。騎士の任務じゃない。従者がついてくる義理はない」
「ありますよ」
リュカは、振り向いて、きっぱりと言った。
「アルディスさん、右手、まだちゃんと動かないじゃないですか。荷物、誰が持つんですか」
アルディスは、答えなかった。
右腕を、外套の下でさすった。
あの朝から二十日。指は、動くようになっていた。握ろうと思えば、握れる。ただ、握ったという実感が、以前は一拍遅れて届いていたのが、いまは一拍半遅れる。そして、肘の際まで、水晶色が這い上がってきていた。手甲を少し長いものに替えた。それで隠れる。まだ、隠れる。
船が、桟橋に寄せられた。
アルディスは、外套の隠しに手を入れた。
指先に、一枚の紙が触れた。王都を出る前夜、宿舎の扉の下に差し込まれていたものだ。封筒も、署名もなかった。上質の紙に、整った、小さな字で、一行だけ。
——カルネイアの赤鎖、ドミニク・レイル。教会の元書記官です。
字に、見覚えがあった。
謁見の申請を出すたびに、許可の返書に添えられている字。護衛の交代表の、余白に小さく書き込まれる礼の言葉の字。
アルディスは、その紙を、もう一度だけ見てから、隠しに戻した。
なぜ彼女が、自分がカルネイアへ行くことを知っていたのか。なぜ、自分が何を追っているのかを知っていたのか。
訊く相手は、王都にいる。帰ったら、訊けばいい。
帰れたら、だが。
◆
傭兵ギルド「赤鎖」の本部は、港の倉庫街の外れにあった。
赤く塗った鎖が、門の上に掛かっている。それだけの目印で、中は意外なほど静かだった。事務机が並び、書記たちがペンを走らせ、壁一面の掲示板に、依頼の札が隙間なく留められている。王国の騎士団の詰所より、よほど整然としていた。
受付で名を告げると、奥の部屋に通された。
部屋の主は、窓際の机で書き物をしていた。
「ようこそ、フェンマール卿」
男は、ペンを置いて立ち上がった。
細身の長身。隙のない仕立ての外套に、撫でつけた黒髪。唇に、微笑が浮かんでいた。その微笑は、アルディスが扉を開けた瞬間から、少しも角度を変えなかった。
「斡旋人のドミニク・レイルです。銀環の英雄にお越しいただけるとは、光栄です」
「英雄はやめてくれ」
「では、フェンマール卿」
ドミニクは、椅子を勧めた。アルディスは座った。リュカは、扉の脇に立ったまま、落ち着かなげに部屋を見回していた。
「ご用件を伺いましょう。騎士団の方が赤鎖に来られるのは珍しい。王国の法では、我々は無許可の武装集団ということになっておりますので」
「人を探している」
アルディスは言った。
「十七、八の少年だ。くすんだ金髪。片方の耳たぶがない。右手の指が、何本か透けている。二十日前、王都の下街で、教会の荷車からあるものを掏った」
ドミニクの微笑は、変わらなかった。
ただ、左手が、机の上で、ほんのわずかに動いた。手袋をした左手。その指が、一度だけ、机の縁を叩いた。
「あるもの、とは」
「教会は、存在しないと言っている」
「存在しないものを、追っておられる」
「そうだ」
アルディスは、ドミニクの目を見た。
「存在しないものに触れて、少年の指が透けた。存在しないものが光って、中継所の星屑の封印が溶けた。祭りの人垣の上に、剥き出しの星屑が三十以上降った。油屋の十四の子どもの頬が透けた。——それを全部、教会は存在しないと言っている。俺は、その報告書に署名した」
左手で、とは言わなかった。
ドミニクは、しばらく黙っていた。
それから、ゆっくりと、左手の手袋を外した。
手の甲に、細い刻み傷が、びっしりと並んでいた。刃物で浅く引いた線。十本、二十本ではない。百を超えている。古いものは白く、新しいものはまだ赤かった。
「依頼の数だけ、刻んでおります」
ドミニクは、静かに言った。
「私を通して結ばれた契約の数です。私の紋は、連鎖と申しまして、契約を破った者の名を、大陸中の赤鎖の支部に浮かび上がらせる。それだけの紋です。ですが、それだけで、誰も私を裏切れない。私も、誰も裏切れない」
彼は、手袋を嵌め直した。
「ですから、申し上げます。その少年の居場所は、存じております。ですが、お売りすることはできません。少年の情報は、別の方が握っていて、その方と私のあいだには、先約があるからです」
「そうか」
アルディスは、立ち上がりかけた。
「ただ」
ドミニクが、言葉を継いだ。
「少年が、昨日の昼、どこへ行ったかなら、お教えできます。これは先約の外です。私の部下が、たまたま見かけただけのことですので」
アルディスは、座り直した。
「どこだ」
「星槌」
ドミニクは、窓の外を指さした。倉庫街の向こう、煙突が何本も立ち並ぶ一角。そのうちの一本から、黒い煙が細く上がっていた。
「詠紋鍛冶の工房です。親方は、ヨナ・スタインという男。少年は、自分の指のことで、相談に行ったのでしょう。この街で、星蝕に何か手を打てる者がいるとすれば、あの男しかおりませんので」
ドミニクは、そこで一度、言葉を切った。
そして、アルディスの右腕に、目をやった。外套の下に隠した、その右腕に。
「フェンマール卿。少年は、もうそこにはおりません。ですが、あなたは行かれた方がいい」
「なぜだ」
「あなたの腕のためです」
微笑は、最後まで、角度を変えなかった。
「代金は、結構です。私が教会の書記官だった頃、あなたの名前を、一度だけ書いたことがあります。その分のお返しです」
◆
星槌の工房は、煙突の根元にあった。
石造りの、低く長い建物。開け放たれた大戸の奥から、熱気と、鉄を叩く音が、途切れることなく吐き出されていた。軒下に、打ち上がった剣や槍が、無造作に立てかけてある。その隣には、鍬の刃や、鍋や、蹄鉄が、箱に詰めて積まれていた。
どれも、よく鍛えられていた。刃の肌が澄んでいて、反りに無駄がない。騎士団の武具庫にあっても、見劣りはしないだろう。
だが、それだけだった。
どの刃にも、何も彫られていなかった。ただの、良い鉄だった。
「アルディスさん、これ」
リュカが、軒下の短剣を覗き込んでいた。
「触るな」
「触りませんよ。でも、これ……普通の短剣ですよね。詠紋鍛冶って、聞いたのに」
アルディスも、同じことを思っていた。
大戸の奥で、鉄を叩く音が、止んだ。
「——触ってもいいぜ。そいつは、ただの短剣だ」
声がした。
工房の奥から、男がひとり、出てきた。
煤で真っ黒な前掛け。肘まで捲り上げた袖から、火傷痕だらけの太い腕が覗いている。癖の強い茶髪を布で縛り、額に汗を光らせていた。三十前だろう。
そして、左の目。
陽の光の中で、その目は、虹色に濁っていた。
義眼だった。それも、硝子ではない。星屑を削り出したものだと、アルディスには分かった。
「客か」
男は、手拭いで顔を拭いながら言った。
「剣なら、そこに並んでるやつは全部売りもんだ。ただし、持ち主に合わねえと思ったら売らねえ。合わねえ剣を持つくらいなら、素手の方がましだからな」
「詠紋鍛冶の工房だと聞いてきた」
男の手が、止まった。
「誰に聞いた」
「ドミニク・レイル」
男は、しばらく黙っていた。生身の右目と、虹色の左目が、アルディスの顔と、リュカの顔を、順に測った。
「……あの書記くずれか」
吐き捨てるように言って、男は手拭いで首の後ろを拭った。
「ここは鍛冶屋だ。鍬も打つし、鍋も打つ。剣も打つ。見ての通りだ。——で、何の用だ。剣を買いに来たって顔じゃねえな」
「剣を買いに来たのではない」
「じゃあ、何だ」
「少年を探している。昨日、ここへ来たはずだ。指の透けた——」
「ああ」
男は、手拭いを肩に掛けた。
「来たよ。指の義肢を作ってくれってな。作れねえって言った。まだ透けてる途中の指に、義肢は付けられねえ。透けきるのを待つしかねえ。そう言ったら、帰った。どこへ行ったかは知らねえ」
ヨナ・スタイン。
この男が、ドミニクの言った親方だろう。
アルディスは、少年の行方をもう少し訊こうとして、口を開きかけた。
そのとき、ヨナの目が——生身の右目と、虹色の左目が、同時に、アルディスの右腕で止まった。
外套の下に隠した、右腕に。
「……脱げ」
ヨナが言った。
「何を」
「その手甲だ。脱いで、見せろ」
アルディスは、動かなかった。
ヨナは、それ以上は何も言わず、ただアルディスの右腕を見ていた。義眼の虹色が、陽の光の中で、ゆっくりと揺れていた。まるで、外套も、手甲も、透かして見ているかのように。
リュカが、隣で息を詰めていた。
アルディスは、リュカにだけは見せたことがなかった。二年間、ずっと隠してきた。手甲の下で何が起きているのか、この少年は知らない。
知らないままでいてほしかった。
そう思っていた。
「リュカ」
「……はい」
「外で待っていろ」
「嫌です」
即答だった。
アルディスは、少年の方を向いた。
リュカは、真っ赤な顔をしていた。怒っているのではなかった。怖いのを、必死に堪えている顔だった。
「知ってます」
少年は言った。
「アルディスさんの腕のこと。祭りの日に、星屑を弾いてたとき、見えました。手甲の隙間から、光ってるのが。……ずっと、訊けなかったんです。訊いたら、アルディスさんが困ると思って」
アルディスは、しばらく、少年の顔を見ていた。
それから、外套を脱いだ。
左手で、右腕の手甲の留め金を外した。一つ。二つ。三つ。留め金は小さく、左手の指では外しにくかった。三つ目で、少し手間取った。リュカが手を伸ばしかけて、止めた。
手甲を、外した。
肘から先が、水晶色だった。
陽の光が、その腕を透かして、工房の土間に淡い影を落とした。透けた皮膚の奥に、骨の形が、ぼんやりと見えた。肘の際、生身との境目のあたりで、光が脈打っていた。環の形をした紋が、腕の内側に、淡く浮かんでいた。
リュカが、小さく息を呑む音がした。
ヨナは、近づいてきた。
触れはしなかった。ただ、顔を寄せて、生身の右目と虹色の左目で、腕の紋を、端から端まで辿っていった。
「銀環か」
「知っているのか」
「王国の騎士団の紋だろ。軌道修正の紋。外さねえ剣。噂は聞いてる。——刻んだのは、教会の刻紋師だな。腕はいい。線に迷いがねえ。だが」
ヨナは、身体を起こした。
「設計が、腐ってる」
「……設計」
「この紋は、あんたの腕を燃料にしてる。環を一つ編むたびに、あんたの肉を少しずつ石に変えて、その分の力を刃に乗せてる。そういう作りだ。刻んだ奴は、それを分かってて、こう刻んだ。教会の典範通りにな」
ヨナは、黙って踵を返した。
工房の奥へ入っていく。炉の脇の壁に、作り付けの棚があった。厚い板戸が嵌まっていて、鉄の錠が下りている。ヨナは、前掛けの内から鍵を出して、錠を外した。
板戸の奥から、布に包まれた細長いものを、一本、引き出した。
戻ってきて、アルディスの前で、布を解いた。
剣だった。軒下に並んでいるものと、形はほとんど変わらない。だが、刃の腹に、細い線が彫り込まれていた。環と、それを貫く何本もの線。
紋だ、とアルディスは気づいた。
剣の刃に、紋が刻まれている。
王国では、見たことのないものだった。紋は、人の肌に刻むものだ。騎士団で教わったのも、教会の典範に書かれているのも、そうだった。石壁や扉に紋を彫ることはある。だがそれは、封印や結界の類で、武具に宿らせて、持ち主が意志を通すようなものではない。
ヨナが柄を握ると、その線が、かすかに光った。線の奥が、脈を打つように明滅していた。
「表に並べてるのは、ただの鉄だ」
ヨナは言った。
「こっちは、紹介のある客にしか見せねえ。ドミニクの名前を出したから、見せてる。……それと、あんたの腕を見たからだ」
リュカが、棚の方と、軒下の方を、交互に見ていた。
「あんた、あと何年だ」
アルディスは、答えなかった。
代わりに、リュカが、アルディスの顔を見た。
「……三年、と言われた。肩まで届くのに」
アルディスは言った。
「それが、二年前だ」
ヨナは、剣を、アルディスの前の土間に突き立てた。
ざくり、と音がした。
「体に彫るな」
鍛冶屋は言った。
「鉄に彫れ」
工房の奥で、炉の火が、ごう、と鳴った。
「鉄は死なねえ。紋を鉄に彫って、あんたはその柄を握って、意志だけを通す。燃料は、鉄に溶かした星屑が持つ。あんたの肉じゃねえ。環は、いくら編んだって、あんたの腕は一分も石にならねえ」
「……そんなことが」
「できるんだよ」
ヨナの声が、初めて、荒くなった。
「できるんだ。ずっと前から。ドワーフの山じゃ、百年前からやってる。おれは七年かけて、それを盗んで帰ってきた。帰ってきて、この工房を開いた。——なのに、表に並べてるのは鍬と鍋と、ただの剣だ。紋を彫った剣は、錠を下ろした棚の奥で、紹介のある客にだけ、こっそり売ってる。王国じゃ、誰も、おおっぴらには使えねえ。なんでか分かるか」
アルディスは、黙っていた。
分かっていた。分かっていて、言葉にしたくなかった。
「教会が、禁じてるからだ」
ヨナは言った。
「管理外の紋は、異端だってな。紋は、教会の刻紋師が、教会の典範通りに、人の肌に刻むもんだ。それ以外は、全部、禁制。王国に持ち込めば、没収されて、持ってた奴は審問にかけられる」
鍛冶屋は、土間に突き立てた剣の柄を、拳で軽く叩いた。
「あんたの腕を石にしてるのは、星屑じゃねえよ、騎士さん。教会の典範だ」
◆
リュカが、泣いていた。
声は立てていなかった。ただ、そばかすの頬を、涙が伝っていた。拭いもせずに、土間に突き立った剣を見ていた。
アルディスは、手甲を、左手で拾い上げた。
嵌め直そうとして、やめた。
「……親方」
「ヨナでいい」
「ヨナ。俺の銀環を、鉄に彫ることはできるか」
ヨナは、虹色の義眼で、アルディスを見た。
「できる。十日くれ」
「代金は」
「あんたが払える額じゃねえ」
「では」
「だから、あんたの剣の腕で払え」
ヨナは、突き立てた剣を引き抜いて、肩に担いだ。
「おれの剣は、持ち主に合わなきゃ売らねえ。あんたに合う剣が打てたら、それを振ってるとこを、おれに見せろ。それが代金だ」
そして、踵を返して、工房の奥へ歩き出した。
「今夜は、ここに泊まってけ。裏の小屋が空いてる。明日の朝から、あんたの腕の寸法を取る。——その坊主も、鼻かんでから来い」
炉の火が、また、ごう、と鳴った。
アルディスは、手甲を手に持ったまま、しばらく工房の土間に立っていた。
右腕が、陽の光を透かしていた。
二年間、誰にも見せなかった腕。二年間、終わりを数えるのは戦いのあとにすると決めていた腕。
その腕を、いま、少年が見ていた。泣きながら、まっすぐに。
「アルディスさん」
リュカが、鼻をすすりながら言った。
「なんだ」
「……よかったですね」
アルディスは、答えなかった。
答えられなかった。
よかった、と言っていいのか、分からなかった。この技術が本物なら、自分の腕は救われるかもしれない。けれど、それはつまり、救われるはずだった腕が、この国には何百、何千とあったということだ。二年前の辺境の村で、透けていった人たちの腕も。油屋のミハエルの頬も。
教会が、禁じているから。
アルディスは、手甲を、外套の隠しに押し込んだ。
指先に、また、あの紙が触れた。
——教会の元書記官です。
彼女は、どこまで知っていて、この一行を書いたのだろう。
アルディス・フェンマールは、自分の名を、胸の中で一度だけ呟いた。
それから、左手で、少年の頭を、ぎこちなく撫でた。
リュカ・ノーレン
年齢: 16
所属: 聖王国ヴェルディナ/銀環騎士団
肩書き: 従者見習い
外見: 砂色の癖毛、そばかす。まだ声変わりが済んでいない。支給された鎧が大きすぎて、袖を折って着ている。いつも何かを抱えて走っている。
アルディス・フェンマール
年齢: 28
所属: 聖王国ヴェルディナ/銀環騎士団
肩書き: 団長代理
外見: 黒みがかった栗色の短髪、灰青の目。長身だが筋肉質というより刃物のような細さ。右腕の肘から先が薄い水晶色に変質しており、常に黒い手甲で隠している。祭礼用の白銀の外套は、式典以外では面倒がって着ない。
ドミニク・レイル
年齢: 35
所属: 自由都市同盟カルネイア/傭兵ギルド「赤鎖」
肩書き: 斡旋人
外見: 細身の長身、隙のない仕立ての外套。撫でつけた黒髪と、いつも同じ角度で保たれた微笑。左手の手袋の下に、依頼の数だけ増えていく刻み傷がある。
ヨナ・スタイン
年齢: 29
所属: 自由都市同盟カルネイア/詠紋鍛冶工房「星槌」
肩書き: 親方
外見: 煤で汚れた前掛け、火傷痕だらけの太い腕。癖の強い茶髪を布で縛っている。左目は義眼——星屑の破片が飛び込んだ事故で失った。義眼もまた星屑製で、光の下では虹色に濁る。




