Realiser episode 009 透明人間
大里朋里は二十七歳、事務職。オフィスの中で誰かの声がした。隣の席の先輩はたわいもな
い話をしてくる。
昼休みよくランチに誘われる、グループLINEは常に通知が届く。
飲み会の幹事を毎回頼まれる。断ると"冷たい"と言われてしまうのが、怖い。
ちょっと一人にしてほしい、ここ2・3年で思うようになっていた。
誰かといると気を遣う、気を遣うと疲れる、疲れると何もできなくなる。
そんな循環から離れたい、と思っていた。
誰にも邪魔されたくない時間があったら・・・誰にも気づかれない場所があったら・・・っとそんな思いは頭の片隅に常に存在していた。
透明って空気だから見えないよね、漫画やドラマの世界よね、そんなこと、できるわけない・・・と、自分で自分を納得させていた。
飲み会を断った夜、職場の近辺のビル街にある、ビルに引っ張られるように、足が向かい、あれよあれよという間にエレベーターに乗った。朋里はX9XXという表示されたボタンを押した。
ふぅーとほっとしたときには、"チーン"とフロアに着いていた。
「お待ちしておりました、大里様」
朋利はソファ座り、肩の力を抜いた。そう、一人の空間だったから。
「強い意志の持ち主ですね」
「どんな願いをお持ちなのか、打ち明けてみませんか?」
「はい、あの、誰にも邪魔されない場所・時間が、欲しいです、そんなことできないんですけどね・・・・」
「それは、例えば無人島とかですか?」
「それでは生活が大変です、透明人間とか・・・」
「見えなくなるということですかね?」
「まあ、そんな感じですね、邪魔されたくなくて、気を遣いたくない、一人でいたい、それが願望です」
「なるほど、なるほど」
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
「それ、叶えましょう、代わりにいただくものがあります、それは"今"はわかりません、叶った後で、いただくことになりますが、ご了承いただけますか?」
朋利は少し沈黙した後、
「はい、邪魔されないのであれば・・・よろしくお願いします」
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一週間を過ぎた頃変わり始めていた。
オフィスに着いても声をかけられない。隣の先輩は朋利の方を見ていない、見ない。ランチの誘いもなく、LINEの通知も少なくなった。
一人で昼食を食べた、一人で仕事した。そして気を遣うことがなくなっていた。気持ち・気分は最高の絶頂だった。
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三週間後
朋利は、上司に報告書を提出した。上司は受け取った。
"部長"と言ってみたが、返事が・・・ない。ちょっと焦り、自分の手を見た。ちゃんと、見える。透明ではない。
でも、あれ誰にも認識されていない、存在を主張しても届かず、会議で発言しても、却下されてしまうのだ。
ある日、帰宅した部屋で、"邪魔"されることは、存在が認められていること、だったのだと、気づく。
もとには戻れないという、現実も、痛感する。
ホントは、邪魔ではなく、"交流"という言葉が正しいのではないか・・・?と・・・・。
朋利が差し出したものは、【必要とされる場所】だった。




