Realiser episode 008 恋愛
魚住和也は恋愛が続かない。三十一歳校務員、真面目・誠実と言われている。
付き合ったことがない、わけではない。二十代で三回、交際し、どれも半年以内で終止符を迎えたのだ。
別れた理由はそれぞれ違う。なんかあれっ、この人じゃない気がする、という感覚。
もっと運命的な出会いがあるはず、という自分の中の定義、というか、掟、期待に包囲されていること感覚。
三十一歳になっても、その感覚は治まらず、合コンや、友人の集まり、サークル、交流で出会いの場を広げ、気が合う人も数人現れていた。
なんか違う、その理由のあいまいにより、今まで過ごしてきたのだ。
でも、やっぱり、"運命"と呼べる相手が欲しいと強く思うようになっていた。
夜景が見えるという、店へ行こうとした。
それはビルの最上階だった。人気の店でやっとの思いで予約をしたのだ。
その当日、最上階という、ボタンを押したつもりなのに、"チーン"と着いたのは、"架空戒"だった。
「お待ちしておりました、魚住様」
和也はソファに座り、
「最上階を押したはずなのに、ここはどこですか?あなたは誰なんですか?」
「ここは架空戒、強い思いを持っている方が引き寄せられてくる、戒でございます、そしてわたくしは"密話 勇造"と申します、あなたの願いを叶えることが可能です」
和也は黙って聞いていた。
「願いが、強く思う、願いがありますね」
「あっはい、運命の相手に出会いたいんです」
「どのような方を・・・?」
「わかりません、"この人だ"って、思える人に会いたいそれだけです」
「はい、わかりました 和也は目をゆっくり閉じた」
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数週間後
和也は彼女に出会った。
職場の隣のビルカフェ、混雑していて、相席になった。
それだけだったけど、和也は"この人だ”と感じた。
全身で強いエネルギーを感じた、説明なんかできない。
名前は木瀬 奈々と言った。連絡先を交換した。
その後もなんとなく、そのカフェで会い、三カ月後付き合うことになった。
初めてだった。"この人だ"と思った人と付き合うのは・・・。
毎日会いたくて、メッセージのやり取りも続けた。
顔を見る度、安心し、運命と確信したのだ。
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半年後
和也は街を歩きながら、すれ違う人が気になり始めていた。
全員が運命の人に思えてしまっていた。
カフェで隣に座った女性・コンビニのレジの人・電車で向かいに立っている人・・・全員に対してこの人かもしれない、あの人かもしれないという散満する感情が芽生えていた。
消そうと思っても、忘れようと思っても、その芽生えた感情は、コントロールができない。
奈々の事が、心から好き。他の誰かを見るたびに"この人かも"という感覚が止まらない。
"運命"という定義が狂い壊れていた。
『運命の相手に出会っていた』代わりに、誰に対しても運命に感じる心を置いていったのだった。
【運命】がどこにでもあるならば、それはどこにもないということだ。
和也が差し出したものは、たったひとりを特別に思える力だった。




