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Realiser episode 002 復讐ーあいつだけは許せないー

 岡橋美幸は憎しみを育てるのが上手。本人はその自覚はない。ただずっと引きずるタイプ、三年前のあの日から。


 同じ部署の同期の白川 遥は、同期入社、同じ営業チームで、最初は仲が良かった。ランチや映画、愚痴、励まし合いもお互いしあって、信頼していた。

だからこそ、"許す"というのはできずに少しずつ憎しみに変わっていったのだった。


そのきっかけは・・・

 美幸が温めていた新規顧客へのアプローチ案を白川は先に上司へ提出をしたのだ。しかも、美幸の案と承知の上で。


 "自分も似た事考えていたから、シンクロしたんだね"と笑いながら。

上司は白川を褒めた。その案は採用された。でも美幸の名前はどこにもなかった。


 『あれは、私が先に考えたものだ』と上司に事実を伝えたのだが、上司を困らせるだけだった。

 "「証拠はあるの?」・・・・・もちろんそんなのあるわけない"と心の中で自問自答を呟いていた。


白川 遥は、とんとん拍子に出世した。今では別のフロアの課長だ。廊下ですれ違うたび、さわやかに挨拶は交わされる。その笑顔が美幸には最高に憎く感じてとにかく嫌だった。


その夜も残業だった。エレベーターに乗り込んで、ボタンを押そうとして、"あれ?"こんな階あったけぇ・・・、記号か漢字か、読めない文字だ。興味本位でそれを押した。


エラーブザーはなることもなく、その階へ着いた。


 「お待ちしておりました、岡橋様」

密話勇造は前回と同じように穏やかに立っていた。


案内されるまま美幸はソファーに座った。


 「ここに引き寄せられたということは、強い思いをもっていらっしゃいますね どうぞ打ち明けてください」


 「はい、白川 遥をめちゃくちゃにしてください 私の提案を自分のものとして、提出し出世したあいつが許せないんです 仕事を全部失えばいい、信用も笑顔も全部崩壊するがいい・・・」

密話は無表情で、

 「承りました ただし条件がありまして・・・」

 [何をしたらいいのですか」

 「叶った後代わりに、あなたから、いただきます、料金ではありません」

 「分かりました、よろしくお願いします」



一カ月後、白川 遥のスキャンダルが社内に広まった。取引先への虚偽報告、経費の不正、かつての部下からの内部告発。あっという間に課長職を外され部署異動した。


社内での発言力を完全に焼却(うしな)ったのだ。

そして、あのさわやかな笑顔は消えていた。足早にすれ違うだけになり、美幸は胸がスカッとしていた。


 何か、変だな、と感じ始めたのは、密話に話してから1カ月になる頃だった。

仕事中ふと手が止まる。企画書を書こうとしても、書けない。何を書きたいのか、どういうコンセプトにするのか?企画する目的も・・・何も出てこない。

 営業先ではうまく話せなくて何かを主張しようとすると、頭の中が真っ白になり、言葉が出ない。自分でコントロールできない。


二ケ月後、美幸は上司に呼ばれた。

 「岡橋さん、最近どうしたの、提案が提出ないですけど・・・」

応えられなかった。

 「はい、すみません」

それが精一杯の返事だった。




三年間、美幸を突き動かしてきたもの"あいつより、上にいき、勝ちたい、あいつを見返してやる・・・あいつを・・・その気持ち、『闘争心』が根こそぎなくなっていた。


 白川 遥への憎しみこそが美幸の仕事への情熱のエネルギーの正体だった。


美幸が代わりに差し出したものは・・・『前へ進む理由だった』。















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