98.大金持ち
「鉛筆と消しゴムを100個ずつ下さい」
「こっちには200個ずつ」
「ウチは300個ずつだ!」
「は、はい! かしこまりました! 今、用意しますので少々お待ち下さい!」
あれから商人のお客さんが山ほど来た。次々と大量注文をして、買い漁っていく。
ようやく広まったと思ったら、この大盛況。やっぱり、鉛筆と消しゴムにはそれだけのポテンシャルがあったっていうことだ。
「お母さん、持ってきたよ!」
「ありがとう! じゃあ、数を数えるの手伝って!」
「うん、分かった!」
商人が用意した籠に希望の数だけ詰めていく。それだけで、かなりの時間がかかってしまう。
数を間違えないように丁寧にだけど素早く終わらせていく。
「お待たせしました!」
「いくらになる?」
「えーっと、あなた様が20万デル、そちら様が40万デル、こちら様が60万デルです」
こうして聞いてみると、かなりの金額だ。今で売り上げ120万デルだよ? かなりの大金だ。それなのに、商人は何でもない顔をして一枚10万デルする大銀貨を出してくる。
今日一日で滅多に見ない小金貨と大銀貨を見るなんて……。いや、ここで意識を飛ばしているわけにはいかない。
「はい、確かに!」
「それで、商品はこれからも入ってくるか?」
「だ、大丈夫です。まだ、安定して供給出来る量はあります」
「ふむ……。だが、これからはこの商品は良く売れることになるだろう。事前に予約することは可能か?」
「予約は現時点で考えておりません」
「それは、残念だ。なら、商品が途切れないように仕入れてくれ」
「はい、かしこまりました!」
商人たちはそういうと商品を持って店を出て行ってしまった。ようやく落ち着いた店内、隣にいる母さんは大きく息を吐いた。
「この盛況は予想していなかったわ……。あんた、とんでもないことになったよ。平気かい?」
「私は予想していたから、全然平気!」
「全く、あんたって子は……」
自信満々に胸を張って見せると、母さんは呆れた様子だった。
「とにかく、出来るだけ在庫を置いておかないといけないわね。リオ、いくつくらい出せる?」
「万以上出せるよ!」
「さ、流石にそんなに出したら、保管場所に困るよ」
「でも、私がいない時に大量注文が来たらどうするの?」
「あー、そうだねぇ……。ちょっと、倉庫に空を作った方が良さそうだね」
そう考えていると、また扉が開いた。
「ここに鉛筆と消しゴムが売っていると聞いたんだが」
◇
「ふー……今日はもうおしまいだね」
「疲れたねー」
お店の扉に鍵を閉めると、母さんと一緒に大きくため息をついた。今日はひっきりなしに商人が訪れて鉛筆と消しゴムを買い漁った。
父さんと兄さんは今頃、鉛筆と消しゴムの大量の在庫を置くために倉庫整理をしている。そろそろ、終わったころだろう。
そう思うと、二人が疲れたように現れた。
「倉庫の整理が終わったぞ。これで、五千くらいは在庫を置けるようになった」
「あー、疲れたー! 倉庫整理は地獄だったぜ」
「二人とも、ありがとう! これで、私がいなくなっても大丈夫そうだね」
これで頻繁にスキルを使わなくても大丈夫になった。
「それにしても、凄い売れ行きだったな。どれくらい売れたんだ?」
「あー、気になるねぇ。母さん、どれくらいに行った?」
「ちょっと、確かめてくるね」
二人の言葉を受けて、母さんが売り上げを確認する。そう言えば、店番していた時に通知音が何度か鳴っていたけど……。
そこでようやく、ウィンドウを開く。すると実績の所が赤く点滅しているのが見えた。その項目をタップすると――。
『実績解除! 商品を1000点売る! 報酬:3000ポイント』
『実績解除! 商品を10000点売る! 報酬:アイテムボックス』
おっ! 実績君じゃないか! 3000ポイントは美味しいけど、アイテムボックスキターーッ!
これ、めちゃくちゃ便利じゃない? これがあれば、大量の物を保管したり、私自身が物流のキモになる可能性もある。
ふっふっふっ、やれることが増える。いやー、このスキルで何をしようかな!
「た、大変!」
その時、慌てたような母さんの声が響いた。
「ど、どうしたんだい、母さん」
「う、売り上げが……」
「何々、どうしたんだ?」
父さんと兄さんが興味深げに聞くと、母さんが口を開く。
「売り上げが1000万デル超えているんだよ!」
「「「えぇーーーっ!?」」」
マジか! そんなに売れたんか!
「こんなに売れたのは、店をやり始めて初めてのことだよ!」
「す、凄いじゃないか! そんなに売れるなんて!」
「信じらんねぇけど、その硬貨を見たら信じなくちゃいけない……」
実績で10000点売るがクリアしているんだから、それくらいの金額になるよね。それにしても、1000万デル……。一気に大金持ちだ!
「やったな、リオ! 今までじっくりと広めたかいがあったな!」
すると、兄さんが私の頭を乱暴に撫でてきた。
「ふっふっふっ、言ったでしょ? 絶対に売れるって!」
「いやはや……リオは商人に向いているんじゃないか?」
「きっと、これからも売れると思うよ。あんた、将来は商人になるつもりかい?」
「それは、分かんない!」
「全く、リオったら……」
これはこれで楽しいから継続するけれど、将来何になるかはまだ決めきれない。
「じゃあ、今日はお祝いに外に食べに行こうよ!」
「そうね。こんなに売り上げたんだもの、お祝いに行かないと」
「これが毎日だったら、毎日行かないといけないね!」
「もう! 調子の良いことばっかり言って!」
家族に祝われるのは嬉しい。だけど、今日はその始まりにしかすぎない。王都中に売れれば、こんなものじゃ済まないはず。
そして、王都に行き渡った後は、王都の外に広めていく。ふっふっふっ、これで売って売って売りまくって、大金持ちだ!




