97.大量売り上げ
「リオ、鉛筆と消しゴムを500個の注文入ったけど……出せるの?」
不安そうにしていたお母さん。それもそうだ、今までそんなに大量に出したことがないのだから不安になるのも分かる。
「大丈夫。この時の為にポイント貯めに貯めて置いたから」
「そういえば、商品はリオのスキルのポイントで交換出来るんだったわね……。でも、本当に平気なの?」
「全然大丈夫! 今の私に不可能はない!」
「じゃ、じゃあ……この籠に商品を入れてくれない?」
そう言って、お母さんは大きな籠を差し出してきた。
「じゃあ、この籠にいっぱい入れるね」
「見てていいの?」
「問題ないよ。だって、言いふらさないでしょ?」
「まぁ、そりゃあそうだけど……」
お母さんには珍しく気を使っているようだ。だけど、見られて困ることはないからいい。まぁ、この力を狙っている人がいれば話は別だけどね。
さて、交換に必要なポイントは……一ダースで2ポイント。それぞれ500個分だから、84ポイントずつ消費すれば500個にたどり着く。
ウィンドウを開き、個数を指定すると、決定ボタンを押す。すると、ベッドの上に一瞬で鉛筆と消しゴムが現れた。
「わっ! ほ、本当に何もないところから出てきた!」
「どう? 凄いでしょ!」
「凄いってもんじゃないよ。私は心配だよ……。本当にこのスキルのことは誰にも言ってないんだよね?」
「信用している人しか言ったことないよ」
「それはそれで不安だわ……」
やっぱり、このスキルは異常だ。前世のものがポイント消費だけで手に入れられるんだから。だけど、このお陰で私の商売が成り立っているから助かっている。
「お母さん、とにかく売って売って売りまくろう!」
「ちょっ、あんた! これ以上、売るものがあるのかい!?」
「もちろん、ある! だから、じゃんじゃん注文受けて! そしたら、どんどん出すから!」
「ほ、本当に……平気なんだね?」
お母さんが信じられないようにそう言った。だから、私は笑顔で強く頷く。
「と、とにかく。今はこの分を受け取っておくよ」
「あっ、私も行く!」
「来てもいいけれど、スキルで商品を出したっていうことは黙っておくんだよ!」
「はーい」
お母さんが籠を持つと、一緒に部屋を出ていく。階段を下りて、店に続く扉を開く。すると、カウンターには商人らしい人がいるのが見えた。
「お待たせしました。こちらが、鉛筆と消しゴム500個ずつです」
「おぉ! 在庫があったじゃないか! よしよし、これで仕事が捗りそうだ。して、料金はいくらになる?」
「一つ1000デルになりますので、えっと……100万デルになるのですが……大丈夫ですか?」
「もちろん、金ならある。受け取ってくれ、100万デルだ」
そう言った、商人は鞄から箱を出した。そして、その中に収められた硬貨を取り出す。一枚、100万デルの価値がある小金貨だ。
「これで、大丈夫か?」
「は、はい! 問題ありません!」
「なら、商品をこの中に入れてくれ」
「か、かしこまりました!」
商人が鞄を手渡してくると、お母さんが大事そうに受け取った。そして、二人で鉛筆と消しゴムを鞄の中に入れた。
「おまたせしました、こちらで大丈夫ですか?」
「あぁ、助かった。これから、定期的に買わせていただくことになるが、在庫はあるのか?」
「えっと、在庫は……」
その時、お母さんがちらっとこちらを見た。私が言ってもいいけれど、私が答えたら疑われてしまう。なので、頷くだけにした。
「は、はい……。大丈夫です」
「そうか、なら助かる。これから、この文房具は日常を豊かにしてくれるだろうからな。じゃあ、また頼む」
「あ、ありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
丁重にお見送りすると、商品は店を去って行った。すると、お母さんがへなへなと床に座り込んだ。
「ま、まさか……こんなに売れるなんて……。商業ギルド、以来じゃない?」
「うん、あの時以来の大量売り上げだよ」
「鉛筆と消しゴムは便利だから、売れるのは分かるけれど……ここまで売れるとは思わなかったわ」
「いや、それくらい売れるポテンシャルはあるよ」
この利便性に気づけば、もっと普及するはずだ。だから、今日の売り上げはほんの始まりにしか過ぎない。
「じゃあ、これからもっと求める人が増えるってこと?」
「うん、そうだと思う。ブームが来たから、そろそろ来るんじゃないかと思ったんだけどね」
「全く、あんたはまたそうやって……」
と、その時、お店の扉が開いた。入ってきたのは、また商人風の人。
「失礼します。ここで鉛筆と消しゴムが売っているって聞いたのですが」
「え、はい! 売ってますよ」
「じゃあ、それを下さい。数は300個ずつで」
「さ、300個ずつですか!?」
「あっ、もしかして、在庫がないと?」
「い、いえ……在庫は大丈夫です」
「では、お願いします」
また、大量注文が入った。これは、本格的に売り時がやってきた。もしかしたら、強運が運んできてくれたことかもしれないが、この機を逃す手はない。
「じゃあ、お母さん、私が商品を取ってくるよ!」
「え、えぇ……」
籠を持って、お店の奥へと引っ込んだ。そして、深呼吸を一つ。
「よぉぉしっ! 来た、来た、来たっ! この時を待っていた!」
広まるまで時間がかかったが、広まってしまえばこっちのもの。ウチでしか取り扱いのない商品だから、欲しい人はウチの店に群がってくる。この機会を見逃すことはしたくない。
「売って、売って、売りまくってやるからなー! そしたら、大金持ちだ!」




