04 浮気、不倫して子供まで作った父親って普通心も体も距離を取ると思うんだけど、あの姉は良く分からない
ティファにもチケットを渡す。読んでみると超有名な観光スポットだった。金持ち御用達ってやつだ。
いや、上位世界に金持ちって概念は薄い。なんたって全員ズボラだし。
「きゃあああ」
向こう側から叫び声が聞こえた。半分姉の声だ。どうやら転ぶと不安、早速仕事をしたのだろうな。
「先輩、検証、実験、良さげですね」
「ああ。証明されつつあるな」
わざわざ誰かのステータスに手を加えるなんて、やったことはなかったがうまくいきるんるんだ。
「この調子で他の人間にもやって行きましょうね。目標は愛し子の要素剥奪ですね。どうみてもその状況は世界のバグですし」
大体、妖精は一人一匹がこの世界の普通。それが、アップデートなしになってシステム的に不具合が発生して少人数に妖精が押し寄せていると考えている。
なぜ、引き離すのかというとなんとなくだ。このティファ様が、仕事でもないのにこの世界のために働くわけがない。ズボラな一人なのだから。
姉が無事すっ転んだことを確認し終えた。どうやら、水瓶の中に頭を突っ込んだらしい。あと少し水かさが高かったら水没してたと体をガタガタさせて怯えていた。
どうせ家ごと水没させる予定なので、たいして差はない。ニコッと笑って両親に話す彼らを見遣る。半分父親は慰めていた。
浮気、不倫して子供まで作った父親って普通心も体も距離を取ると思うんだけど、あの姉は良く分からない。思春期ともなれば余計に触られたくないと思うんだけどなぁ。
ティファはロゼロと会話をしつつ、次は義理の母親と父親であるとステータスを表示させる。ステータスを軒並み引き下げた。
ろくになにも持てないだろう。特に器用さを下げた。体力も半分以下にしておいた。その他実験用に色々差をつける。少しずつ下げて行くのは姉だ。
ほんの少し変えて行くだけ。目立つのはやはり若い姉なので、流行病と思われても構わないのだが、そこは楽しみが減っちゃうし。
やはり、一番長く楽しみたいのがこの家の人達。いやぁ、やっぱり力は万能感を与えてくれるよね。
「長く楽しめるのが今から期待です」
「絶対死なないように調節は怠るな」
「はい。自動化導入しないと」
「ティファ、次はどこに行く」
「そうですねぇ。一応大人になるために今回の儀式をしたので、ギルド登録しに行きます」
「ギルド制度があるんだな。その項目はまだ読んでなかった」
ロゼロは攻略本っぽいものを出して、読み込み始める。邪魔しないように、静かにする。ギルドで登録しても大して、恩恵もない。
果たして働くことは出来るのか疑問。歩き出すと、ロゼロも付いてくる。浮遊しているので、勝手に追随できるようにしているらしい。そういう設定をティファも見たことがある。
「MOD入れるのも面白そうですね」
「ゲームでしかやったことはないが、なかなかいい企画してんじゃねぇか」
先輩は悪どい顔をして、笑う。悪役顔が似合う。似合うというか、悪人の顔をしてる。決して、穏和な顔とは言えないのだ。
MODとはティファからすると、ゲームの内外を変更できるようになるもの、というふわっとしたイメージだ。
仕事内容では扱ったことはないが、上位世界のゲームで遊んだことがあり、それを適用してみるのもいいなあ、と思った。全てお菓子になるとか、さぞや愉快な世界になることだろう。
世界は混沌に陥るが気にすることはない。なんせ、体は人間でも心は人外。気にしようがないではないか。わくドキッな体験が己を待っている。
早速彼と共に向かったのは、話に出ていたギルド。とくになにか絡まれることもなく、すんなり登録される。カードを手にこんなものかと、簡易な出来事に少し夢が壊された気がする。
「さらっとしてますね」
ティファはカードをくるくる回す。
「この世界のシステムが停滞してるからだろ」
ロゼロは仕方ないことだと付け加える。システムがよかったままならば、たくさんの機能が使えたに違いない。上機嫌のティファは楽しげにカードを懐に入れた。
「先輩!私はこの世の征服しますからね!止めないでくださいね!」
「しねぇよ。めんどくせーし。助ける義理もないからなこの世界の奴らなんて」
吐き捨てた。嫌悪も見える顔で。それでいいそれがいい。先輩が先輩たるところ。かっこいい、好き。一番身近な存在の中で好きな人。彼がいたから、職場に行く気になれた。
「次はなにしようかなぁ」
いなくなって、悲しんでくれたと聞いた時はとても嬉しかった。
(元家族を崩壊させるのは時間がかかる……私を馬鹿にした人達に、仕返しをする時間にしようかなっ)
申し訳ないけど、嬉しかった。先輩に「こうこうしようかと思うんです」と話しかける。
「好きにしろ。今やこの世界は、お前のやりたいようになっている」
「ですよね〜。好きにできるって感動します」
これから、ガンガン好きにしようと思う。命だって思いのまま。くふふ、と笑う。
「何かあるのか」
元上司、現パートナーが話しかけてくる。すごくペカペカの笑顔で頷く。
「楽しいじゃないですか」
「今か?今は何もしてないだろ?」
当然、なにもしてないのに、なにかしたと思っている。しかし、上向きな全てが楽しくて仕方ないのだ。運が向いていると言ってもいいくらい。
「なんでも、なにをしても許されるってことなら私の番なんですよ」
「最初からお前の番だろ」
はは、と笑う先輩。ちっ、ちっ、ちっ、そうじゃないんだよねと説明する。人権なんてどこにもなかったのだ。上司には無縁だろうけど。




