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05 戸籍がこの家の娘として登録されていないのにファーストネームはこちらで何度も登録しようとして今更ながらに不審に思った

 無縁どころかずっと天下だった人は恐らく与えられすらしないという、過酷さはピンとこなさそうだが。苦渋とは何かということすら何も知らないかもしれない。

 僻むのはそこまでにして、助けてくれたことを感謝していきたい。彼はわるいことなどなく、己を案じてくれたのだから。本当にありがとうである。


「先輩、何します?」


「お前の好きなように。もうお前の世界だしな」


 嬉しい。今まではやられている側、搾取され側。なので、今後は永遠の搾取する側。


 とりあえず自分の身分を証明できるようになったので、もう愛人の子供としてい続ける必要はない。というわけで、家を襲撃することにした。父親なんて父親という名の無責任な肩書き。

 この家がなくなって困る人なんていない。

 貴族ならともかくも、ただの平民のうちだし。血の繋がっただけの人のステータスを弄ったので、いつ気づくか楽しみなんだけど。


 家にまた再び戻ると、てんやわんやになっていた。先輩のロゼロはなにかをしているのか静かだ。


「お前の家、人が入ってるな」


「はい」


 人がわらわら入っていて、怒鳴る声が聞こえる。この声は、ヒステリックな声は義母である。養母とも言う。まだ孤児院の方がいいんじゃないかと思うけどね。


「離してっ」


「なんなのよ!」


「放せ!」


 三人がそれぞれ騒いでいて、聞いていると拘束されているらしい。ティファが行くと自分も捕まるのだろうか。恐る恐る近寄ると、気付いた一人がゆっくり近づいてくる。

 捕まるのならば逃げられるので余裕で構えた。しかし、彼が口にしたのは予想外のこと。


「ティファさんですか?」


「はい。そうですが」


 認めない方がいいのか、認めた方がいいのかわからないが取り敢えず認めてみた。認めたら連座とかないよね?

 何か罪を犯したら三等親まで連座とかありえるから。


「ああ!ご無事でしたか!」


 心底安心した顔で言い始めて、なんのとこだろうかと聞いてみると。


「あなたの戸籍がこの家の娘として登録されていないのにファーストネームはこちらで何度も登録しようとして、今更ながらに不審に思ったものが調査したのです」


 とのこと。首を傾げた。横を向くとロゼロがしたり顔で頷いていたのでなにか、取り消しをしたか、過去に遡り消去したのだろう。

 つまり、この家の娘として登録されていないのに娘として扱っていろんなところで登録していたが、戸籍を調べるとこの家の娘として登録されていなかった、と。


 無戸籍だったらしい。それなのに自称父親は何度も戸籍を登録していたとか。血の証明を受けていないと言うことも悪質らしいよ。血の証明?

 思い出していると、天界ではDNA検査と呼ばれているそれ。思い出してからああ、と深く納得がいく。


 元父、今はもう監禁者として使っている男がいるであろうところを見るとやらなかったのだろうかと失望。

 恐らく確実に自分の娘だとわかっていたのかもしれないが、戸籍に入れてないとなるとより悪質性が増す。


 無戸籍の女の子を長年無報酬で働かせていたことになるのだ。そこに血のつながりの有無はない。血のつながりと戸籍入りは関係ないのだ。単に無賃で換金していたのと変わらない法律の扱いになる。


 重罪の扱いになり、聞き取りにより長年この家は無賃で動かすばかりか身内と偽りながら虐待を行っていたことを発見され、今になって罪が重なっていき労働の刑に処されるとのこと。

 長年の監禁で被害者には加害者の、というより血のながりが認められた場合は相続するお金が実女のティファの懐に入るみたいだ。すごい、不幸のステータスの恩恵が早速現れた。


「受け取られますか?」


「はい」


「それと」


 担当の人は罰を受けるのは確定しているが、罰を優しくする権利もティファはあるらしい。ははは〜、やるわけないでしょ〜。担当の人はマニュアルに沿って聞いているだけなので己は首を横に振る。

 それだけで伝わったみたいで、慣れた顔つきで頷く。この家で何が起こっているのかすでに聞いているから頷くわけがないと、わかっているのだ。


 彼らが連れて行かれる時にこの夫婦に激痛を付与した。一日ごとに、どこかの部分がキツく痛むというもの。お似合いだ。やがて喚かなくなるだろうから。

 どこに連れて行かれるのかは知らないけど。義理の姉妹にはなにをしようかな。ロゼロに問うてみたら見た目を気にしていたので、髪の毛を抜けやすくするようにするのはどうだ?と言われる。それ、採用。


 毎日大量に抜け落ちるようにしておいた。生えても生えても、生えたら一気に抜けるようにしておく。そうしたら毎日叫び倒すだろう。

 どこに生かされるのか知らないけど、人に馬鹿にされ続けるのは確実だ。笑われて、日々を生きていくといい。


「あ、ティファ!」


 連れて行かれるときにこちらを見つけた三人が、ティファを道連れにしようと声高々に言い出す。


「あんただけなにもないなんて可笑しい!」


「そうよ!そいつもうちの家の子供よ!」


「この娘は貴殿たちの家の戸籍に入れられていなかった。何度言えば理解する」


「そんなのありえないわ!ねえ、あなた!」


「……ティファ」


 元父、恐らく血筋的には繋がってはいる人が蚊の鳴くような声で名前を呼ぶ。不快感が強く、ゴミを見る目で睨む。


「犯罪者が私に話しかけないで。穢らわしい」


「……な」


「なにが犯罪者よ!」


「底辺だったくせに!奴隷が!」


「ん?奴隷?」


「「あ」」


 煽ると面白いように、いつもの口癖を皆の前で披露してくれた。奴隷扱いが今をもって証明される。その場に来ている全員が言葉を聞いていたので承認や証拠を用意するよりも早く沙汰は下される。


「どうやら黒だな。連れていけ」


「違う!今のは思ってもないことで!」


「つい、勢いで!」


「話せばわかるっ。な?ティファっ」


 話しかけるなと言ったのに。まだ言うのかと、蔑んだ目で見ると父はびくりと肩を震わせた。ずっと見ていくと光から背けるように顔を俯かせる。やはり、最低でも弱い人間。


「あ、その……」


「二度と、私に、話し、かけないで」


 釘を刺し、念を押す。殺意を込めて最後の花向けだ。


「ひっ……」


「うぐっ」


「な、な、生意気な!」


 一人行きの良い相手がいる。義母を見て、格の違う視線を向けるとどんどん顔色を失う。やがて白目をむきパタリと倒れた。今ので頭に大きなタンコブを作ったな。もう己には無関係だから、どうでもいいけど。


「なにか、言った?」


 気を失う女に向けて聞いたら残りの二人が変わって首を何度もブンブン振る。それを見て鼻で笑う。全員気絶させてもよかったのだが、意識がある方が反応があって悪くない。

 捕まる三人にもう用はないので、笑顔で見送った。二人はグズグズ泣いていて、溜飲がちょっとだけ下がった。


 のちに刑が決まり、なんの関係もなかった子どもを(今は大人に近い)無賃で働かせた罪、暴行や暴言の罪も加算されてもろもろを足した結果、悪質なもので鉱山で働くことに。裁判で決まった。


 彼らが出てくる可能性はあるにはあるが、義姉、実父、義母に追加しておいたものがいい仕事をしてくれるだろう。ずっと苦しめられると思うとなんだか、胸がすく思い。


 たまに様子を見てどれだけ辛い目に遭っているのかを見よう。それに、今までされてきた嫌がらせをやっていけば、苦痛は広がるに違いない。

 寝ている時に水を被せるとかね。鞭打ちも捨てがたい。


「一応、目標の一つは達成できたよな」


 ロゼロが声をかけてきて頷く。元家族が好き勝手できなくなったのは、大きなことだ。


「よし。おれがお前を楽しく過ごさせてやる。プランは色々考えているからな」


「え、先輩?」


「異世界ツアーだ」


 グッと手を握られて目を丸くした。


「折角色々好きにできるんだ。お前はおれを心配させた分、付き合うぎむがある」


「初耳なんですけど?」


 突然の宣言に反論するが、気持ち的には同じだったので本気で言ってない。


「いいだろ?世界を引っ掻き回すっていうのもオツだ」


 オツの使い方を激しく間違えているけれど、思わず笑ってしまった。


「そうですね。今度はうっかり落ちないですし」


 さらに下はない。あるのは上だけだから。ロゼロの眩しい顔つきを見て、再び出会えた奇跡にだけは感謝してあげてもいいかもしれないと、真上の世界に向かって大きく声を上げた。

最後まで読んでくださり感謝です⭐︎の評価をしていただければ幸いです。ヒロインはもう大喜びです

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